【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十九] 三人語り!澤村千夜×澤村丞弥×澤村悠介 劇団天華ロングインタビュー

劇団ファンの方はもちろん、ファンでない方にも。
その劇団の楽しさを伝えるにはどうしたらいいんだろう。

各役者さんの人となり・キャラクター?
それともガッツリした芸談?
――そのどちらも。
役者さん同士で語るという“対談形式”なら叶いうるんじゃないかな…?

という一抹の浅い考えから実現に至ることができたのは、千夜座長・丞弥副座長・悠介花形はもちろん、当日の堺駅前羅い舞座のスタッフさんのご協力のおかげm(_ _"m)
ありがとうございました!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十九] 三人語り!澤村千夜×澤村丞弥×澤村悠介 劇団天華ロングインタビュー 


ラストショー『Mr.simple』の衣装のままお願いしました。

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(本文より)
座長 澤村千夜(さわむら・せんや) 
2008年の劇団旗揚げから10年。喜怒哀楽の振り幅が大きい芝居で、客席の涙や笑いを引き出している。座長が客席に与えたいという「感動」の真意とは?

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副座長 澤村丞弥(さわむら・じょうや) 
2017年11月、花形から副座長に昇進。王子様のような美貌の持ち主。丁寧に紡ぐ芝居も心を打つ。求めている「今までの自分にないもの」とは?

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花形 澤村悠介(さわむら・ゆうすけ) 
2017年11月、生徒会長から花形に昇進。26歳の若さながら、親分から三枚目まで「役らしさ」のある的確な演技が光る。しかし、花形になってからの悩みとは?


⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

いつもはんなり見える丞弥さんが「汚い感じのもの、ドロドロした感じが欲しい」とおっしゃったのには驚いた。
悠介さんの技巧がある人ならではの、誠実な葛藤にも打たれた。
そして千夜座長が副座長・花形の実力を冷静に、かつ愛情を持って評したことも(個人的にすごく面白かったのは、役を成立させるために体の「形」が必要という話)。

天華さんに限らず、役者さんが芸について語られるのを聞くと。例外なく、「この人はこんなに毎日芝居のことを考えているのか」ということに驚かされる。それも深く、細かく――。
日替わりで芝居をする生活に入ると、人間の頭の中はどんな風になっていくんだろう。

最後に、やや手ブレしてしまったので💦SPICE記事には掲載しなかったけど、良いなぁ…と感じたインタビューカット。

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花形の話に耳を傾ける座長・副座長。
良い意味で「ベンチャー企業のような」風通しの良さが、いつまでもそこにあってほしいなと思います。

【劇団天華 今後の公演先】
1月 やまと座(奈良県)
2月 御所羅い舞座(奈良県)
3月 七福座(和歌山県)
4月 堺東羅い舞座(大阪府)
5月 琵琶湖座(滋賀県)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川県)

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2017年 忘れがたい7本の芝居 ―恋しい他者―

大晦日に滑り込みセーフ(;・∀・) 2017年も東京や川崎、大阪や岡山、色んな劇場でいっっっぱい芝居を観ました!
中でも忘れがたく、書き残しておきたい芝居が七本。長い記事になりますが、よろしければお付き合いください😊

★一本目
『三人出世』
劇団新 2017.3.9夜@大島劇場



龍新座長 友吉役

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龍錦若座長 定吉役

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小龍優花形 島吉役

「なあ島やん、もしかしたらお前も、そんな風になってたかもしれんやんか――」
龍新座長演じる友やんのセリフが胸にずっと響いていて、何度でも反芻したい。
運命を違えた幼なじみ3人を演じるのは、目鼻立ちのそっくりな三兄妹。3人の生き様が影絵のようにダブる。だからお前を決して見捨てたりしないよ、とばかりに友やんは微笑んで、定やんの肩を抱く。
お前は運の悪かった私――という浮かび上がるメッセージは、『三人出世』という芝居の主題なのかもしれない…と思った。

ラストシーンには斬新な演出も! 新進気鋭、今波に乗っている若い力を感じた。来年2月には再び川崎・大島劇場での公演が決まっているそうだ。

★二本目
『中山峠 どさ帰り』
里見要次郎会長誕生日公演 2017.8.6夜 @後楽座


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里見要次郎会長 長次役
※当日、会長の舞台写真は禁止だったので男前なポスターから。

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当日ゲスト・澤村千夜座長(劇団天華) お美代役

15年の、地獄の流刑!
一目見初めた恋のために、大工の長次(要次郎会長)はそんな目に遭った。長次はそれでもなお、かつての一目ぼれの相手・お美代(千夜座長)に執着し続ける。
「俺は15年前のお前の姿を、忘れやしねぇぞ…」
いや、そんな目に遭ったからこそ、過去の美しい一点を見つめ続ける。

里見劇団の若手さんのツイッターによれば、芝居の題が『中山峠 恋のまほろば』となることもあるらしい。“まほろば”って言葉はぴったりだ。決して手に入らない、遠い憧憬。
「俺の一生はその女で始まり、その女で終わるような気がします…」
「あたしにとってはこの15年、この世のすべてが地獄だった!」

描かれていたのは、逃れられない執着としての恋だった。楔のように絡んで、汚泥の中に人間を留まらせる。
要次郎さんと千夜さん、大人の演者2人っていいなぁ…(しみじみ)

★三本目
『河内十人切り』
劇団花吹雪 2017.9.26夜@浅草木馬館


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桜春之丞座長 熊太郎役

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三代目 桜京之介座長 弥五郎役

熊太郎と弥五郎は大衆演劇界のゴールデン・ペアだと思う(浪曲界でも多分そうかな?)。花吹雪版が突き抜けていたのは、「二人で一つ」という密着性だ。
警察に追い詰められた山中、熊太郎(春之丞座長)は弥五郎(京之介座長)を刺す。そして瀕死の体を腕に抱く。「ごめんなぁ…」とうめく熊太郎に、弥五郎は「ええねん、ええねん」と笑って返す。
「不思議やなぁ、兄貴にこんな酷いことされとるのに、お前を恨む気にならんねん。うん、何をされても、わしはお前は恨まん!」
べとべと赤い血にまみれ、二人の体は一つになっていくようだ。

春之丞さんも京之介さんも、相手の体に触れるときに全然遠慮がない。まるで自分の体みたいに、相手の肩や腕に触れながらセリフを言う。二人が従兄弟で、ずっと一緒に育ったという家族関係が芝居にも生きているんだろうなと思った。だからあの熊太郎・弥五郎は、家族を核にした旅芝居にしか存在しえない表現なのかもしれない。

★四本目
『君の名は。』
劇団天華 澤村千夜座長誕生日公演 2017.10.21夜@紀の国ぶらくり劇場


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澤村千夜座長 瀧太郎役

「今までやったすべてのお芝居の中でも一番難しかったかもしれません」(千夜座長口上より)
何でも屋を営む瀧太郎の身体に、見知らぬ娘・おみつ(死者)の魂が入り、二人で一つの体を分け合って暮らすというSF設定。漫画が元ネタなんだそう。
千夜さんの男⇔女の転換が面白い。胡座をかいて男の声で喋ったと思ったら、慌てて恥じらって脚を揃え、女の細い声で言い返す。

ラストシーン、死んだおみつの正体が明かされた後、瀧太郎は初めてその顔を見る。最初で最後の対面。
背景に流れる青空と白い雲の中を、死者が遠ざかっていく。生きている人々を置いて。青空を仰ぐ瀧太郎の滂沱の涙から、“人を恋しがる” 気持ちがドッと流れ込んでくる。

今年は長年副座長を務めた神龍さんの独立など、変化の大きかった天華さん。その中で残ったメンバーや新メンバーが見せてくれた舞台は、なおエネルギッシュだった。来年はどんなシーンに出会えるかな?

★五本目
『影絵の鶯』
若丸一門劇団時遊 烏丸遊也座長誕生日公演 2017.11.12夜@大島劇場


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烏丸遊也座長 蜉蝣(かげろう)の時三郎役

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雲母坂美遊さん お佑役

初めて観る劇団さんってやっぱりワクワクする!川崎に来てくれた劇団時遊さんは、遊也座長、座長のお母様の十川流(つなし・せんりゅう)さん、都川純後見、友情出演の優木劇団・優木誠座長に優木直弥花形……と、芸達者な面々が揃っていた。

『影絵の鶯』は遊也座長の書き下ろし芝居。いかさま師の蜉蝣の時三郎(遊也座長)と、足抜け女郎のお佑(美遊さん)。親を知らない二人が惹かれ合い、夫婦の暮らしをし、やがてお佑は赤ん坊を身ごもる。
この一回こっきりで再演は決してないとおっしゃっていたので書くと……時三郎とお佑は、実は血を分けた兄妹(!)だったのだ。けれど。
「俺たちはたとえどんな形であれ、家族なんだ!」
と、世間の目よりも個人の愛情を貫こうとする。

何もかもを飛び越して、時三郎とお佑の二人が強烈に結び付いていた。終盤にお佑が時三郎の顔に触れながら、つぶやく。
「ずっと、時さんと、兄ちゃんと、ううん、お前さんといたかった…」
みなしご同士、絶対的な“ワンペア”の前で、夫婦とか兄妹とか関係性の名前は取るに足らないもの。演じる遊也さん・美遊さんがどちらもあどけない顔つきなのも、役と重なっていた。

★六本目
『花の生涯 浅野内匠頭切腹』
春陽座 2017.12.3 昼@新開地劇場


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澤村心二代目座長 浅野長矩役

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澤村かずま三代目座長 片岡源五右衛門役

12月は忠臣蔵シーズン⛄ 大阪の友人が春陽座に通いまくっていたので、新開地公演に一緒に連れて行ってもらい、忠臣蔵の芝居に当たった。切腹直前の浅野(心座長)と片岡(かずま座長)の対面を描く静かな芝居。

一番胸に迫って来たのは、片岡が浅野に、民から預かってきた御守りを渡す場面だった。
「我ら家臣ばかりでなく、領民、百姓、女、子ども、年寄り。みな、殿のご無事を願って…」
物語には登場しない無名の民の祈り――それらももう、無駄になってしまった。嗚咽する片岡と、しんとどこか遠くを見ている浅野の白い顔が対照的だ。
ついに切腹の時がやって来て、浅野はおもむろに立ち去る。舞台上手に消えていく姿に、片岡が涙に濡れた声をかける。
「と、殿……殿…」

講談ファンで、色々話芸について教えてくれる友人がいる。彼女の好きな講談師の説によれば、「忠臣蔵はさまざまな別れを描いた物語」なんだそうだ。
片岡は、浅野が立ち去った欄干にしがみついて「殿」と呼び続ける。花の生涯――民に愛され、家臣に愛された人と永遠にお別れ。生きている者がどんなに泣いても縋りついても死者はいなくなってしまう。
春陽座が大切にしているという忠臣蔵のお芝居、来年も観られるといいな。

★七本目
『雪の長持唄』
下町かぶき組 三峰組&岬一家合同公演 2017.12.10 昼@オーエス劇場


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三峰達(みつみね・とおる)座長 佐吉役

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舞鼓美さん おこう役

涙を振り絞った。2017年、「泣いた量」でいったらこの芝居が一番だと思う。
ツイッターで『雪の長持唄』のことをつぶやいたら、観たことがある方々から一様に「素晴らしいお芝居ですよね」とリプをいただいた。

主人公・佐吉(達座長)は人生を一度諦めた男だ。医者の道を捨て、やけっぱちで盗人稼業に手を染めていた。盗みに入る家の情報を聞き出すために女中のおこう(鼓美さん)をさらい、利用した後は殺すつもりだった。だが、おこうも同じ奥州の出身だと知って殺せなくなってしまった。
「俺と居たって良いことなんか何もねえぞ」と、おこうを追い払おうとする佐吉。これに対する、おこうの言葉がビリッと響く。
「そんなことねぇ!おめぇはおらを助けてくれた。故郷(くに)の長持唄も歌ってくれた。もうおらには良いことがあった!」

陰を背負った佐吉を包み込むように、おこうは温かい。自分を殺そうとしている男が同郷だと知ると、「おめぇも奥州か?!」と笑顔を弾けさせる。演じている舞鼓美さんの持ち味だろうか。開けっぴろげで声が大きい。『雪の長持唄』に心を引っ張りこまれたのは、おこうのキャラクターによるところが大きいと思う。

「娑婆に戻って何とかやり直そうとした。それでも何もかもうまくいかなくて、心ばかりが擦り切れて――」(佐吉)
下町かぶき組の星誠流座長の脚本だそうだ。心情がセリフの中にくっきりと描写される。
芝居が続いている時間ずっと、佐吉とおこう、この二人になんとしても幸せになってほしいと思っていた。


場面場面を思い起こすと…七本の芝居にすべて共通することがある。皆、誰かを切なく恋しがっていること。
『三人出世』は幼なじみを、『中山峠…』は初恋の面影を、『河内十人切り』は兄弟分を、『君の名は。』は死者の魂を、『影絵の鶯』は片割れを、『花の生涯…』は主君を、『雪の長持唄』は奇妙な縁で知り合った男女がお互いを。
どんなに近い関係性でも、他者はずっと遠いから。埋めがたい距離をなんとか埋めようとする気持ちに、物語が成立するのかもしれない。

ところで木馬館の初日が12/30だったから、2018年の観劇ももう始まってます! 来たる年も、ここに書ききれないくらいたくさんのお芝居に出会えますように!ヾ(*・∀・)/

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【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十八] レポ・カンゲキツアーにようこそ!大衆演劇初心者と劇団飛翔が“一体になった”日

タイトル、『大衆演劇の入り口から』。
エンタメ情報サイト【SPICE】の連載は毎回てんやわんやしながら、周囲の人のおかげで2年半続けさせていただいている。
しかし、“入り口から”とタイトルに銘打つのであれば。大衆演劇って全然知らないけど面白いなら見てみたい!という人のほうを向いた記事がもっとないと、不親切だし、看板に偽りありかも…。

そんなことを考えていた矢先、京都のまち歩き企画『まいまい京都』の大衆演劇ツアーが再び開催されるという情報が飛び込んできた。しかも今回は、旅芝居専門誌『カンゲキ』主催のカンゲキツアーとコラボ! アテンド先は劇団飛翔@浪速クラブだってー?! 行きたーい!

というわけで『まいまい京都』ガイドの加藤さんにお願いすると、心優しく快諾して下さった。大衆演劇は完全に初めて、という参加者の皆さんの後ろにぺったりひっついて行ったレポがこちら!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十八] レポ・カンゲキツアーにようこそ!大衆演劇初心者と劇団飛翔が“一体になった”日


劇団飛翔・恋瀬川翔炎座長

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カンゲキツアー総参加者は89名に上った。

(本文より)
翔炎座長は、カンゲキツアー89名が座っている真ん中へまっすぐに降りて来た。流れている曲【命の華】に合わせ、「しょーえん!」という合いの手と、“華”を表す両手を上げたポーズをうながす。前方席の常連ファンがすぐに座長に乗った。最初はやや恥ずかしがっていたツアー参加者たちも、続々とつられて手を上げていく。

「しょーえん!」「しょーえん!」

あっという間に一番後方の席まで、大合唱と“華”ポーズに埋め尽くされた。す、すごい…と筆者も驚嘆した。初心者も常連も関係なく、舞台と客席が一つになった瞬間だった。

⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

恋瀬川翔炎座長は、本当にすごい。何度か拝見して、その“巻き込み力”を認識しているつもりだったけど、全然わかっていなかった。
「しょーえん!」
さっきまでちょっと照れくさそうだったツアー参加者が、もう常連ファンのように手を広げ、舞台に声を掛けていた。あの一体感はどこから来るのだろう。来るもの一切を抱き留めて、その日のお客さんをみんな仲間にしてしまう。

「舞台と客席が一体になったのが楽しかった」
参加者の方の感想でそういう声が多かったのは、やっぱり初めての大衆演劇が翔炎さんだったからなのだろう。そしてそれは、大衆演劇の本質の一面かもしれないな、と思う。
誰もが理解できる、笑って泣ける、排除のない空間。そのままのあなたを客席が抱き留める――

まいまい京都&カンゲキツアーのスタッフの皆様、参加者の皆様、本当にありがとうございました!
カンゲキツアーのほうは次回開催が2/10(土)劇団美山@池田呉服座に決定したとのこと。
※申し込みページは後日、カンゲキ公式サイトにてオープン。参加希望の方はページ開設までしばらくお待ちください。

このブログを読んで下さっている方でも、もしまだ大衆演劇未体験の方がいましたら。“入り口”を貴方に差し出す、ツアーはいかがですか?

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大衆演劇 ’18 ―変わり続ける旅芝居のこと―

「ずいぶん大きい買い物したねえ~どこか旅行行くの?」
気さくなタクシーの運転手さんは、私が先ほど量販店で買ったばかりの新品キャリーを見て言った。
「はい、明後日から和歌山です。大衆演劇の遠征で…」
「大衆演劇?チャンバラとかするやつ?へえ、あれは、おばあちゃんおじいちゃんの娯楽なんだと思ってたなあ」
これぞテンプレ!っていうくらい聞き慣れた言葉(^-^;
「いや~最近はそんなこともないですよ、お客さんの中には学生さんも会社員もいますし…」
返答しながら、物事の認識が変わるのにはつくづく時間がかかるのだなぁと思った。大衆演劇を愛する人々の手で、新たなイメージが世に送られ続けているにも関わらず、だ。

数年前の女性週刊誌には、劇団花吹雪や大川良太郎さんをクローズアップする記事が載っていた。関西のバラエティ番組では、ポップスで踊る若い座長が紹介されていた。ネット上には、大衆演劇ファンの “広い世代に知ってほしい”という思いのこもったブログ・SNSがあふれている。
「大衆演劇はお年寄りだけの娯楽じゃない」ということは絶え間なく発信されている――けれど、一度根付いたイメージってなかなか上書きされないんだなぁ。

…でも、一ファンである我が身を振り返ると。
大衆演劇の新境地。ポップスとダンス。電飾や奇抜な舞台装置。若い座長さんたちを中心に作られている、アニメや漫画を元ネタにした芝居。
そういう新しさについて、私自身、狭量になってやしないだろうか。
古いお芝居や、これぞ旅芝居というささやかな人情劇が好きで。新しいものを観るとき、いつからか心のどこかで、失われていく古い懐かしい香りばかりを探すようになっていた。

かつてはこんなに頭が固くなかったのに。 
大衆演劇を観始めた5年前の夏。耳馴染みのあるポップスがかかると気になったし、『演劇グラフ』で漫画を原作にしたショーや芝居の写真を見ると、観てみたいな~と思っていた。むしろ当時は、古典もののスッと肌に入ってきにくい独特の言い回しに戸惑っていたこともあった。

でも2、3か月観た頃から、物語が眼前数メートルから飛び掛かって来る魔力に憑かれて。
曽我兄弟や梅川忠兵衛って誰?あの演目は歌舞伎にもあるの?
仕事帰りに夜遅くまで開いている図書館にダッシュしてはく、本の幸福な重みを腕に帰路についた。
大衆演劇という沼にハマればハマるほど。演者が水面に差し出してくれる“新しさ”も魅力的だけれど、それより沼本来の深みに沈み込みたくなった。

そして5年の間に、色んな役者さんのつぶやきを耳にしたり、お客さんの話を聞いたりした。
「お客さんの芝居離れ」
「正統派に芝居をやっても受ける時代やないやろ」
「昔の役者はねー、うまかったねぇ、泣かせてくれたねえ」
聞きかじりの言葉を心に留めるうち、直接体験したわけでもない“古き良き昔”の喪失ばっかりを勝手に恐れて、視野がずいぶん狭くなってしまっていたかもしれない。

そのことを痛感したのは、先月10/21(土)に二つの誕生日公演を観てから(←今さら本題)。


辰己小龍さん(たつみ演劇BOX)

この日の昼の部は京橋羅い舞座で小龍さんの誕生日公演を観た。新作書き下ろしのお芝居、今年も新派や歌舞伎から題材を採られるのかなと思っていたら、違った。『大暴れ!若衆小町』は、昔の日本映画みたいな立ち回り満載の痛快娯楽劇だった。
瞠目したのは、劇中の歌! 【関東春雨傘】とか【愛燦燦】とか、歌謡曲を小龍さんが芝居の内容に沿って歌い上げる。たとえば【愛燦燦】の“人生って嬉しいものですね”という歌詞を変えて、
「姉弟(きょうだい)って~ぇええ…うれしい~ものですね~♪」
男姿の小龍さんが、姉役の三河家諒さん(当日ゲスト)とデュエットする。観客に微笑みかけ、手を差し伸べて。

劇中で歌う――そうか、そんな表現もあるんだ。ミュージカルとかオペレッタとか。
『大暴れ!若衆小町』に散りばめられていたのは、大衆演劇ではお馴染みの歌ばかり。明るい調子の歌を聴いているうちに、楽しく芝居の世界に入れる仕掛けだ。

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ラストショー【聖域】では洋舞を披露。着物の代わりに、白いドレスの裾がくるくるとダイナミックに翻った。

辰己小龍という女優さんは、決して直接はおっしゃらないけれど。今の時代にどんなものが求められているのか。昔の役者が遺したものを、現代の旅芝居が再現するにはどうしたらいいのか。そういうことを全部、お腹の中で、わかってらっしゃるのだろう。

そして夜の部。台風22号の大雨の中、南海特急サザンに乗って和歌山へ移動した。

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澤村千夜座長(劇団天華)

紀の国ぶらくり劇場で行われた、千夜さんの誕生日公演。オリジナル芝居『君の名は。』……題を見ただけで、時代へのアンテナの鋭さがさすが😲
例の大ヒットアニメ映画もオマージュとして薄く引用しつつ、お話自体は全く別のものだった。漫画を原作にされたそうだ。
何でも屋を営む瀧太郎(千夜さん)は、死神の依頼で一か月だけ死んだ娘の魂を預かることになる。そして瀧太郎の体に娘・おみつの魂が入り、一つの体を二人の男女で分け合うことに…というSFっぽいお話。

千夜さんが一人芝居のごとく、男⇔女の転換をいきいきと演じる。たとえば、足を無造作に開いて苛立った男の声で「お前、出てくるなって言っただろ!」と言うと、次の瞬間には膝を合わせて肩をしゅっと落とし、「ごめんなさい…」と女の声で上目遣い。
肉体が性別間をジャンプして、本当に一つの体に二人が同居しているような現象の面白さに見入った。

でもお芝居の着地点は、懐かしい心の在り方だった。
再演に備えてネタバレは伏せるけれど、ラストシーン、“他者を恋しがる”という感情の原液が流れ込んでくる。涙する瀧太郎=千夜さんに気持ちが同化して、青空と雲の背景がぼやけた。
ストーリーは新しいし、肉体の使い方は斬新だけど、根底にはまっとうな人間の心が流れている。こんな方法もあるんだ…。

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こちらは舞踊ショー。最近Twitterでもよく披露されていた『刀剣乱舞』の鶴丸国永! 

ザクザクと足音を立てて、切り開いていく。
板の上の人たちは、懐かしい人情を根底に置きつつ、新しい表現を開拓していく。

「あのな、君には今の役者を観てほしい」
4年ほど前、ライターの大先輩に言われたことが頭をよぎる。往年の名優たちの話を聞きたがる私に、博多淡海さんや四代目三河家桃太郎さんなどの豊富な思い出の一端を語ってくれた後で、おっしゃった。
「今の時代に、頑張ってる役者たちを…」

時代に合わせてアップデートを続けるからこそ、旅芝居の世界は無限に楽しい。
もう、自分で世界を狭くしてしまうのはやめよう。
舞台の上は思っているよりずっと広い。

私はハロー!プロジェクトの女性アイドルがけっこう好きなのだけど、看板グループのモーニング娘。が、数年前からグループ名にこう付け加えるようになった。
モーニング娘。’17。
過去の黄金期を素地に残しつつ、今日の第一線を生きようとする名前。

旅芝居もきっとそう。大衆演劇’17であるために、彼らは変化しながら生きている。
もうすぐ2018年。来年は世間にはどんな風が吹いて、大衆演劇はその中からどんな色を取り入れるだろう。
あのタクシーの運転手さんにも、いつか大衆演劇を観てほしい。同じ時代の舞台を。

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橘小竜丸劇団【シャンパンダ】 鈴丸座長の8頭身にスーツが映える。

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大川良太郎座長(劇団九州男)【Hello Kitty】 クール・ジャパン風に。

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橘劇団 2.5次元舞台ファンにもヒットしそうな刀×長髪×美男子。


今を生きる、私たちの、大衆演劇’18!

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花ひらく、筑紫桃太郎一座 ―初めまして三兄弟!―

はー楽しかった! 
10/30(月)、九十九里太陽の里の千秋楽公演が終わって、興奮冷めやらぬ帰りの外房線の中でこの文を書きました。

太陽の里の最寄り駅は「茂原」駅。地下鉄にJR、外房線を乗り継いで無料送迎バスまで、我が家からは3時間…ほど…(;・∀・)
でもでも遠さなんてなんのその。九十九里に行ける週末が楽しみだった10月。大阪の友人から評判を聞いていた、初めての筑紫桃太郎一座は、心にパッと大輪を咲かせてくれた。


10/29 ラストショー

観れたのは芝居4本、ショー7本(九十九里は夜の部はショーのみなので)。わずかな回数の中で垣間見た程度ではあるけれど、三兄弟それぞれの持つカラーを味わうことができた。なので初見の新鮮な印象を焼き残しておくために。一人一人について感じたことを書いていこうと思います。


座長 筑紫桃之助さん
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10/7 訴えるような目に惹きつけられます

三兄弟の長男・桃之助座長。前からお顔は知っていて、美青年だなぁ~と思っていた。目鼻立ちも輪郭も丸みを帯びていて、女形は少女のよう。
でも声色が豊か! 『三下仁義』の悪党・七之助を演じていたときは、がらっぱちな声と強面メイクに、一瞬誰だかわからなかった。一方『大工の留』ではさえずるような高い声で三枚目をしていたし、声の選択肢の多さが役幅に繋がっているのかもしれない。

九十九里公演を一緒に観に行った千葉在住の相方は、桃之助さんびいき。「いつも全力で一生懸命なのが素敵」とのこと。全身を投じるような張り切りぶりと、明るい笑顔が印象的だった。

「大入りをいただきました!ありがとうございます!」
三兄弟の先頭で深々と一礼する姿。
一人、客席に飛び込んで笑顔を振りまく姿。
この場を背負ってらっしゃるんだ、座長さんなんだなぁ…とその明るさを噛みしめた。

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10/7 群舞の中でもスマイルが映えます

無題
10/29 特別出演・嵐山錦之助さんと

「お兄ちゃんがさ…」「お兄ちゃん、良いわよね」
客席の会話に耳を澄ますと、長男なので“お兄ちゃん”呼びの方が多いようだった。
優しく座をまとめる笑みは、まさにTHE・お兄ちゃん!


弟座長 博多家桃太郎さん
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10/7 【黒田の武士】

三兄弟の次男・博多家桃太郎弟座長。
博多家―っ!
この型の見事さを見ると、つい反射的に舞台に声を掛けたくなってしまう…!
私はハンチョウすることはまずないのだけど、博多家座長には良いタイミングで「博多家っ!」と決められるファンの方が毎回複数いらしたので、そこにコッソリ乗じさせていただいて、時々声を掛けたりしていた。

大阪の友人の大のご贔屓である博多家座長。彼女から、抜群の身体能力や、芝居の感情の細やかさについては聞いていた。
190cm近くあるだろう大きな体躯が、回る。跳ねる。膝が深く沈む。肉体がダイナミックに旋回する爽快感に、舞踊ショーの開幕が楽しみだった。

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10/29 【田原坂】 軸がスッと。

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10/8 【テネシーワルツ】 膝が深い!

そして恐らく、この肉体のバネの良さが芝居にも活きているのではないかなぁ…と思う。セリフに動作がごく自然にくっついている。
たとえば卑劣な悪役・忠吉を演じる『男血飛島』では、「金をちょいちょい持ち出してたのがバレて、(自分の首をポンと叩き)クビになっちまった」「お前の懐に(ヒュウッと口笛を吹き相手の懐に手を入れる)千両入るってことだ」
また『大阪喜八』では、源太(博多家座長)は喜八(桃之助座長)の話に相槌を打ちつつ、刀をしまったり、足の汚れを拭いたり、刀に顎を乗せて頬杖みたいにしたり…。終始、肉体が芝居の中にあるように見えた。
『博多家版 喧嘩屋五郎兵衛』という演目があるそうなので、いつかその芝居に当たりたい。


花形 玄海花道さん
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10/30 【最後の雨】“ただ抱き寄せ”って歌詞のところ。エア彼女を抱いてらっしゃいます。

三兄弟の三男・玄海花道花形。
お名前の通り華やかな役者さん。整った容姿、ピリッとした線に仕草の一つ一つが映える。
特に刀の扱いが見事なのを何度か目にした。『男血飛島』での博多家座長との立ち回りや、『三下仁義』の大団円の場面で一人クルクルと刀を収めているのが美しかった。

容姿だけでなく芸風も華やか! 人形振り、お面、芝居調の当て振り…個人舞踊で披露してくれる色々な技を、7公演の中でいくつか観ることができた。

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10/29 【大きな古時計】

人形振りと面でおじいさんの死を表現したり。

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10/29 【深川】

深川芸者の饗宴のイメージなのか、優雅に寝転ぶお大臣を演じたり。

こういう仕掛けのある舞踊は楽しい。ひょうひょうとした花道さんからポッと出される外連味が面白かった。(面白いといえば花道さんの自由な感じのトークも好きです。お芝居の三枚目はされないのかな?)


千穐楽の日、舞台横のタペストリーがふと目に入った。大きく白文字で抜かれた“花の三兄弟”。花の…という形容が舞台の三人に重なった。それぞれに伸びて、色をつけて気ままに咲く。

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10/8 桃之助座長&博多家座長の組合せはお互いの色がパキッと引き立つ。

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10/29 桃之助座長&花道花形のお喋りタイム。ピンをたくさん付けて出てらした花道さんに、「そんなんよう付けたな(笑)」と優しく突っ込む桃之助座長。

東京在住なので、関西回りの劇団さんではまだまだ知らないところ、初めましてのところがたくさんある。大阪に住んでいればなぁ…と残念に思うこともあるけれど、関西の友人たちから情報を得て、レアな関東公演を心待ちにすることにしている。
筑紫桃太郎一座の皆様、関東に来て下さってありがとうございました!

お待ちしていた三兄弟は、たしかに花だった。

【筑紫桃太郎一座 花の三兄弟 今後の予定】
11・12月 笹井ホテル(北海道)
1月 大江戸温泉ながやま(石川県)
2月 新開地劇場(兵庫県)

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