劇団KAZUMAお芝居「四十両の行方」

2013.10.4 夜の部@篠原演芸場

タペストリーに見下ろされる中、座布団をポンと敷いて。
ホクホクのたらこおにぎり片手に、見上げる舞台。
私の心が最もくつろぐ場所・篠原演芸場に、劇団KAZUMAがいてくれる。
重ね重ね、幸せ。
昨日素敵な拍手コメントに励まされて、さらに幸せ。
ありがとうございます!

「四十両の行方」は昨年11月に、出張の合間に行った尼崎天満座で観た。
二組の兄妹が登場するので、兄弟姉妹の愛が大好物の私には堪えられない。
一組は、兄の吉松(藤美一馬座長)と妹のお浜(霞ゆうかさん)。
この2人の健気な名場面についても、別の古い記事で言及しています。

そしてもう一組が、兄の青山家主君(華原涼さん)と、妹の妙(林愛次郎さん)。
この兄妹は、ストーリー上は敵役に当たるんだけど、私は大好きなのだ。
というわけで今回は、あえて敵役の兄妹の視点から書いてみる。

写真・華原涼さん(当日舞踊ショーより)


写真・林愛次郎さん(当日舞踊ショーより)


涼さん演じる兄の名前は、呼ばれてないのか単に私が聞き逃してるのか、残念ながらわからないので。
私はこのキャラクターを“青山殿”と呼んでいる。
武家である青山家の当主なだけあって、風格たっぷり。
妹の妙に、「使用人のお浜が屋敷にあった四十両を盗んだんです!」と聞かされても、眉一つ動かさない。
「出来心は誰にも起こるもの、お金が戻れば今回は見逃してやろう」
威厳に満ちた声で、諭すように言う。

お浜の兄・吉松に、「あの四十両はね、川に落っことしちゃったんです」なんてとんでもないことを言われても、
「落としたのなら仕方あるまい。して、いつまでに四十両作れる」
あらまあ、冷静。

吉松はうろたえながら、
「三年…」
青山殿は極めてクールに、
「長い」
(この場面の涼さんと一馬座長のやり取りは必見だと思う)
「じゃ、一年」
「まだ長い」
「二百日」
「長い」
「じゃあ~…百日!」
「百日か、百日ならばそう長くもあるまい。百日後、待っているぞ、吉松」

重低音の声、品をまとう立ち居振る舞い、堂々を絵に描いたような態度。
まさにザ・涼さんだと思う。

後に、この四十両消失事件の真相は、妹の妙の狂言だったことが発覚する。
私が青山殿の一番良いところだと思うのは、身内である妹に対しても、厳しさを一貫して貫くところだ。
「妙、このたわけ者が!」
と妹を怒鳴りつけ、「お兄様」と取り縋られようものなら、
「誰がお兄様だ」
「そなたは今後は心を磨け、さすれば顔も美しくなるであろう」
うわあ、手厳しい…。
が、正しい厳しさだ。
竹をパッキリ割ったように、まっすぐな正しさだ。

――ちょっと夢を見ると、青山殿みたいな上司に「たわけ者!」って叱られたいですね。

それから愛次郎さん演じる妹の妙。
何の罪もないお浜を陥れる悪役だけど。
その身勝手さは、寺子屋の先生(柚姫将さん)への恋に端を発しているので、どうにも憎めない。

「浜、吉松、お前たちは盗人の兄妹だったんですね」
「浜、お前はもうクビよ。とっとと出てお行き」
キツイ物言いの中に、恋敵にトゲを向ける乙女心が揺れている。
「吉松あなた、いい加減にしなさいよ。もう、腹立つわね!」
愛さんが振袖をぶんぶん振り回して、吉松に喧嘩を仕掛ける姿が可愛いのもポイント。

KAZUMAの「四十両の行方」は、吉松・お浜の健気な兄妹に対し、この個性の強い敵役の兄妹がいてこそ抜群に面白い。

ところでこの日は金曜、普通の平日の夜。
私はKAZUMAに限らず、各劇団の普通の日のお芝居を観るのが好きです。
有名なゲストさんが来る日とか、記念公演とか、それはそれでイベントの熱気があってとても楽しいんだけれど。しっかりエンジョイしちゃうけど。
大衆演劇は、日替わりで別のお芝居を乗せて、日替わりで別の感動を紡ぎ出してくれる。
普通の日に、いつも良質なお芝居で魅せてくれる劇団KAZUMAだからこそ、夢中で通うのです。

仕事帰り、十条行きの電車に揺られて、夕闇の商店街を通り抜けて。
「いらっしゃいませー」
黒い引き戸の奥に待っていてくれる、普通の日の極上の楽しみ。

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