劇団KAZUMAお芝居「幻峠」&浅草千秋楽模様

2013. 9月千秋楽 夜の部 @浅草木馬館

「幻峠」は、昨年9月の長野・松代ロイヤルホテル以来、2度目の鑑賞。
とても好きなお芝居なんだけど、まともな感想が書きづらい…。

だってセリフや筋を思い起こそうとしても、ネグリジェ姿で華麗に踊る冴刃竜也さんのインパクトに全部持っていかれるんだもの!(笑)

冴刃竜也さん(当日個人舞踊「感謝状 ~母へのメッセージ~」より)


こんなに綺麗なお顔なのに。
「幻峠」では淀橋一家の若い衆・「たけ」の役で、がっつり三枚目メイク。
そんで、ひらひらのネグリジェで、山本リンダの「狙い撃ち」を大変軽やかに踊られる。

この場面になった瞬間、「待ってました!」と掛け声がかかり、一馬座長も「すげえな…これを待ってたんだぜ…」と苦笑気味だったけど。
はい、私も待ってました!

少しだけ真面目にお芝居の内容の話をすると、幻峠で起きた侍の死を巡る、罪と赦しが描かれる。
一つ、とても好きなセリフがある。
「恩を仇で返すはあれど、仇を情で返すのは、この身をおいて他にはあるまい」
クライマックスで、 華原涼さん演じる木村新之助が、藤美一馬座長演じるやくざの新三にかける言葉だ。
仇とは、新三が新之助の弟・新吾(柚姫将さん)を、過ちで殺めてしまったこと。
情とは、新三の年老いた父(龍美佑馬さん)を慮り、その罪を赦すこと。

仇を情で返す――自分が受けた痛みより、相手の痛みを慮る。
高潔な慈悲が、涼さんの発する短い一言に凜とにじむ。

その一方で、心のどこかでは、大事な兄弟を殺されてそんな綺麗事で流せるものだろうか、という気持ちがあったりする。
そこに登場するのが、新之助と新吾の妹・早苗(彩子さん)だ。
「新吾の兄上の仇!」
と短刀で新三に襲いかかるも、新之助に制止される。

この早苗というキャラクターを配しているところが、ものすごく上手い構造だと思う。
新之助の赦しの心と、早苗の恨みの心。
肉親を奪われるという痛みを食らった人の心が、バランス良くどちらも表されているからだ。

思い返せば、昨年9月に松代で観たときも、同じポイントで感動した。
このときは、今回の早苗に当たる新吾と新之助の「姉上」が林愛次郎さん、新之助役が柚姫将さん。
例のセリフは「恩を仇で返すはあれど、仇を情で返すのは我が身のみなり」だった覚えがある。
一緒に観ていた友人と、なんていい言葉なんだ!これを座右の銘にしよう!と盛り上がったのも懐かしい(実践できているかはともかく)。

木馬館千秋楽に話を戻そう。
三部の舞踊ショーでは、今日で最後とあって、お一人お一人がいつも以上に気持ちの入った個人舞踊を見せてくれた。
中でも涙を振り絞ったのは、やっぱりこの方。

彩子さん(当日個人舞踊「糸」より)


彩子さんが深い歌詞がお好きだと話していた、中島みゆきの「糸」。
私自身も敬愛している、かの名歌手の声が流れ出した途端に、もう視界が潤む潤む。

――なぜ めぐり逢うのかを私たちは なにも知らない――
――縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布は いつか誰かを暖めうるかもしれない――


彩子さんに会えてよかった。
たくさんの役者さんがいる中で、他でもないこの方が劇団KAZUMAに来てくれて、本当によかった。

そして「糸」で客席を感涙させてからの、曲の転換。

――ポーニョ  ポーニョ ポニョ さかなの子 青い海からやってきた――

「崖の上のポニョ」のめちゃめちゃ明るいメロディに、彩子さんの生命の発露のような笑顔。
でも、私は手拍子しながら、「糸」以上にボロボロ泣いてしまった。
だってこの歌詞、まさに彩子さんのことなんだもの。

――あの子とはねると 心もおどるよ――
うん、彩子さんの舞台を観てるだけで、心が踊った。
――あの子が大好き まっかっかの――
うん、大好きでした。

――ポーニョ ポーニョ ポニョ 女の子 まんまるおなかの元気な子――
ここでポン!と自分のお腹を叩いたりして。
彩子さんの魅力、全開。

いかん、書いてたら、また懐かしくて寂しくてならなくなってしまった。
彩子さんが「劇団秀」での活動を再開されたら、また必ず会いに行こう。

さて、楽日を終え、私の浅草通いの一ヶ月にも幕(今篠原に通ってるけど)。
東京メトロの浅草駅で降りて、雷門で友人と待ち合わせ。
仲見世の横を早足で通り抜けて、木馬館が見えてくると、「藤美一馬」の幟が立っているだけでにんまりしてしまう。
そんな幸福な幸福な一ヶ月だった。

客席でも、忘れられない出会いがある。
千秋楽近くのある日、木馬館で隣合わせたおばあちゃんに仲良くしていただいた。
私が「男の人生」が良かった、「曽根崎心中」もまた観たい、と喋っていると、もう八十を越しているというおばあちゃんはニコニコして答えた。

「あたしはね、もう年だから、どんなお芝居だったかな~どんなショーだったかな~なんて、観終わったらすぐ、忘れちゃうの」
「好きな座長さんの名前も、もう何だったかなぁ。好きだったのになぁ」
「でもね、ここの劇団良かったな~ってことだけ、なんとなく覚えてるの。面白かったな~ってことだけ、なんとなく残ってるの」
「だからここへね、また来るのよ」

私がいくらたくさん書き綴ろうと、詳しく書き残そうと。
このおばあちゃんが胸に抱えている、素朴な感動のありさまの前には、かしましい言葉遊びのようなものだと思う。
隣席から受け取った、吐息のようなささやかな心こそ、きっと大衆演劇を支えてきた。
客席から舞台に注がれてきた、無数の慈しみの一つなのだ。

書くしか能のない素人だけど、こんな隣人にそっと教えをいただきながら。
私はまだ暫く、夢舞台の下に座っていよう。

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