劇団KAZUMAお芝居「馬の足玉三郎」

2013.9.16 夜の部@浅草木馬館

下から上を、見上げて笑う。
力弱き者が、力に満ちた者に投げかける笑いは、堅固な権力構造をぐにゃっと崩す。
喜劇の力って、そこにあるのではないだろうか。

土日の4回連続鑑賞も、あっという間のラスト、大好きな「馬の足玉三郎」!
このお芝居をKAZUMAで観るのは2回目(劇団花吹雪でも昨年12月に鑑賞)。
玉三郎(藤美一馬座長)と海老蔵(柚姫将さん)の兄弟にまた出会えて嬉しいな!

写真・藤美一馬座長(左)・柚姫将さん(右) 当日ラストショー「曽根崎心中」より


この喜劇は、なんでこんなに面白いかなぁ?
将さんの笑い混じりの口上曰く、「うちの中でもめちゃくちゃなお芝居です」。
ああそうだ、理由の一つは、お芝居の中での自由度が相当高そうだからかな。

劇団の馬の足を務める兄弟、玉三郎と海老蔵は、ある日万屋のお嬢さん(霞ゆうかさん)がやくざに絡まれているのを助ける。
玉三郎はお嬢さんに一目惚れ。
でも、お嬢さんは海老蔵のほうに一目惚れ。
お嬢さんが海老蔵の名前を玉三郎と勘違いしたことで、一度は玉三郎にお嬢さんとの縁談が来る。
ぬか喜びもつかの間、すぐに誤解が解けて、お嬢さんは「海老蔵様と一緒になれないなら死ぬ」とまで言う有り様。
この後は、どちらがお嬢さんと一緒になるだならないだ、兄弟の縁を切るだ切らないだ、ひたすら兄弟間で揉める…ていうのが大枠。
この枠の中で繰り広げられる会話は、実に奔放で楽しそうだ。

たとえば、ふて寝する玉三郎に、海老蔵が羽織をかけながら、故事を引用して「辛抱」の大事さを繰り返し説く場面。
「なあ、兄さん!今は辛いだろう悔しいだろう、だがこんな話がある…」
「だから兄さんも今は辛抱してくれよ!」
何度も何度も「なあ兄さん!」をループし続ける海老蔵のしつこさが、笑いどころの名場面だ。
厳密な回数は決まっていなくて、そのとき将さんの故事のレパートリーが出て来るだけやるらしい。
今日は何回やるかな?確か去年観たときは6、7回だったし、それくらいかな?
と、数えていたら。
…11回。
さすがにびっくりだよ!
というか、そんなにポンポンと故事が出て来るのが凄すぎるよ!

さらに、終盤の玉三郎が旅に出ようとする場面。
「恋に破れて恋に泣く~」
「俺もなりたや 兄弟星に~」
海老蔵との別れを終えて出発しようとすると、おおよそ兄弟の別れには相応しくないおちゃらけたBGMが流れて来て、やり直しになるという演出。
驚いたのは、このBGMで何を流すか、事前に決まっていないらしい。
そのとき舞台裏で決めているようで、一馬座長はイントロを聴いて何の曲か判断していた。
去年観たときは、4~5回だったこの場面も、この日は怒濤の8回!(ちなみに劇団花吹雪バージョンでは3回だった)
いつ終わるのかわからないおちゃらけBGMに、一馬座長の息が次第に上がっていく。
「疲れた、今日はホントに疲れてきた…」
とのこと。
だろうなぁ(笑)

ゆるい枠の中で、その日その場での決め事が、水のようにしなやかにお芝居を紡ぐ。
同じものが観れるのは、その日一夜限りと思うと、余計に笑える気がする。

そして「馬の足玉三郎」のストーリーそのものについて、勝手な想像。
この話は、そびえる権力構造にぷっと矢を吹き放つ、小さなパロディの姿をしている気がする。
「玉三郎」と「海老蔵」と言えば、歌舞伎の頂点にある名前。
それを、舞台に立つ者の中で一番光の当たらない馬の足の兄弟に持ってきちゃう、このセンス。
兄弟がアホな喧嘩をすればするほど、「玉三郎」と「海老蔵」という名前の重々しさが、あっけらかんと崩れ去っていくのを見る。

また、ストーリーのほとんどが繰り広げられる劇場の楽屋では、兄弟の他にも笑わせるキャラクターが動き回っている。
珍妙なトーンで「玉ちゃま」と喋る女形(龍美佑馬さん)や、どぎついメイクの座長(華原涼さん)。
彼らの言動や風貌にどっと観客席が沸く。
女形やら座長やら、「伝統的」な舞台演芸は、時に抑圧的なまでに厳めしい、
「玉ちゃま」に沸き立つ笑いは、その厳めしさを剥がし取っていくような。

海老蔵のセリフでこんなのがあった。
「今は馬の足でも、いつか日の当たる舞台で立派な役者になるんだと決めたじゃねえか!」

この喜劇は、日の当たらない者の側にあるのだ。
観客と一緒に、下から上を見上げて笑ってくれるのだ。
人々の喝采が遠かろうとも。
そこに栄華は咲いていなくとも。

大衆演劇から大脱線するけど、権力のパロディ化といえば、私の中ではイギリス詩人チョーサーの「カンタベリー物語」。
高校生のときにとっても感動した、愛読書の一つです。
冒頭で語られる「騎士の話」は、高潔な西洋騎士道の教訓話。
どっこい、2番目に語られる「粉屋の話」は、「騎士の話」の卑俗なパロディになっている。
騎士道なんてどこにもない、庶民の下世話な滑稽話に。
木馬館の舞台で生き生きと演じられる「馬の足玉三郎」に、「粉屋の話」を読んだときと同じ爽快感が込み上げた。

雲の上の名誉を、思い切り卑近に手繰り寄せて、けらけら笑える対象に変身させる。
ザッツ・パロディ、喜劇の力。

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