劇団KAZUMAお芝居「北海の虎」

2013.9.16 昼の部@浅草木馬館

「台風18号が直撃している中で来て下さって、本当に、本当に、ありがとうございます」
「あれだけテレビで外出しないでくださいと言ってるにも関わらず、わざわざ外出をして木馬館に来てくれた」
「今日はもう、私の気持ちとしては大入り満員です!」

ミニショー終わっての一馬座長の挨拶に、座長―!と胸中で歓声。
台風と重なった9/16(月)の観劇は、大衆演劇にハマって一年二カ月の中でもかなり思い出深い日だった。
朝、窓の外の強風と雨を見て、これはそもそも公演やらないんじゃないだろうか…と不安に思ったけど。
木馬館に電話してスタッフの方に聞いてみると、
「はい、公演しますよ」
「普通に昼の部も夜の部もあるんですか?」
「はい。今日は10時から中に入れますから」
「……じゃ、行きます」
宣言しまして、浅草へ。
東京メトロはこの日も頑張ってくれた。
かつてないほど人通りのない仲見世を、強風に傘を持って行かれそうになりながら進んで。
ようやく木馬館の姿が目に入ったときの、安心感といったら。
辿り着くだけでちょっとした冒険でした。

当然客席を埋めるのは、台風の中わざわざ来た猛者の方々ばかりなわけで…
そのせいなのか、この日の舞台には、なんとなく濃い空気が漂っていたような。

加えて「北海の虎」は、ちょっと独特のお芝居だった。
私が特に珍しいと感じた点が3つある。

1.主人公・虎(藤美一馬座長)のキャラクター

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)


まず、こんなにハッキリと、主人公が“ダメな奴”であるお芝居を初めて観た(笑)
自分の弱さにずるずる負けている、けっこうどうしようもない感じの…

博打打ちの虎は、昔から世話になっている近所の老人(美影愛さん)の家に無心に来る。
虎が金の包みを無理やり取り上げると、老人は躍起になって抵抗する。
「その金は、息子が命がけで作って来てくれた金なんだ。頼む、その金だけは持って行かないでくれ」
老人の息子・新吉(柚姫将さん)は、病の父の薬代のため、蝦夷へ人足として働きに行った。
虎が取り上げようとしているのは、人足の前払い金だったのだ。
「泥棒―!」
老人の叫び声に慌てた虎は、老人の口を手でふさぐ。
気がつくと、病で弱っていた老体は、既に命はなかった。
「そんなつもりじゃなかった」と慌てふためく虎だが、もう時遅し。
老人の娘・お美代(霞ゆうかさん)に気づかれそうになり、あろうことか、お美代の顔面に熱い灰を投げつけて逃げ出す。

書いてて改めて感じるクズっぷり…
虎はいっぺん本気で反省しろ!と、一馬座長の演技に思わせられながら、最後まで観ていました。


2.煙草とお握りと「綾鷹」
中盤以降、舞台は蝦夷へ。
過酷なタコ部屋で働いている新吉の状況が描かれる。
偶然にも、虎も同じタコ部屋で人足として働く羽目になっていた。

虎と新吉が重労働に苦しんでいるところに、新吉の妹のお美代が訪ねて来る。
お美代は、虎に投げつけられた灰のために目が見えなくなっていた。
お美代が兄のために一生懸命運んできた煙草とお握りを、虎はあっさり自分のものにしてしまう。
「俺がこれ食ってる間、お前妹と話してていいぞ」
…なんという…
虎はいっぺん本気で(以下略)

父が何者かに殺されたことを聞き、嘆き悲しむ新吉。
殺人犯が、すぐ横にいる虎だとは思いもせずに。
虎はさすがに良心が疼き、煙草とお握りを新吉に分けてやる(元々新吉のだけどね)。

ここで、客席から思わぬ追加アイテム。
お握りにぴったりな「綾鷹」が、サッとお客さんから舞台に差し入れられたのだ!
一馬座長は実に楽しげに、
「蝦夷っていうのはやっぱり珍しいものが生えるもんだな…お茶が生えてきたよ…」

虎と新吉が、お握りを頬張り、煙草を吹かし、そして「綾鷹」で喉を潤す(笑)。
ここまで、殺人の場面に始まり、寒々しい蝦夷でのタコ部屋労働が描かれてきた。
殺伐としたお芝居だからこそ、この半ばの平和な舞台模様がやたら心に残っている。
しかし、この差し入れした方、素晴らしいなぁ。


3.蝦夷という舞台
「その道をずっとまっすぐ行くと、アイヌという人たちの暮らしている村がある…」
「言葉は通じねえが、親切な方達らしい」
アイヌ!
大衆演劇では聞き慣れない単語に反応した。
終盤、虎が新吉にタコ部屋から逃げる道を教えてやる場面でのセリフだ。

そういえば、蝦夷――北海道が舞台のお芝居って初めて。
「アイヌ」の単語ひとつで、蝦夷の本土とかけ離れた寒さ、異文化のイメージが、一息に頭の中に広がった。
近くで観ていたご婦人の話によると、昨年このお芝居が木馬館で上演されたときは、「アイヌ」という単語はなかったそうな。

色んな意味で、レアなアイテムが詰まったお芝居に、台風が吹き荒れる中、楽しませていただいた。

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