たつみ演劇BOXお芝居「風雪親子旅」

2013.8.17 昼の部@篠原演芸場

「あの子は俺の子だ、俺の新吉だ、俺のものだぁ!誰にも渡しゃしねえぞ!」

ダイヤ座長のたぎる情熱の溜まりの中に、一粒、別の色が浮かぶ。
呼び表すのが難しい色だ。
泣きの風合いとでも言えばいいのか。
総じて情と言えばいいのか。
「ねぇ女将さん、こんな男でも、俺じゃなきゃ嫌だと慕ってくれるんですよ」
子役のわかこさんを、しっかと抱きしめる、あの腕のあたりにまつわっているのだ。
力強さの中に、一粒、涙が浮かぶ。

写真・小泉ダイヤ座長(当日ミニショーより)


今回で、たつみ演劇BOX鑑賞は10回目。
鑑賞を重ねるうち、私の中で最も印象が変わったのがダイヤ座長だ。
先月、浅草木馬館で観ていたときは、単純に、なんて強烈な煌めきを持った人だろ!と驚いた。
お芝居も踊りも気合十分、眼光も声も力強い。
B’zの曲がよく似合う、パワフルな若き弟王!

…っていう印象だったんだけど。
そのパワーが、ふと緩む一瞬があるような気がする。
お芝居でセリフに入る前のちょっとした微苦笑。
あるいは、個人舞踊で「ダイヤ!」とハンチョウがかかって細められる目元。
そこでは、強い光がゆるやかに崩れて、代わりに柔らかい何かが浮かび上がる。
甘さと言うか、哀愁というか、情のようなものが。
(上に上げたお写真は、そんな面差しに見えてちょっとお気に入りの一枚)

お芝居「風雪親子旅」では、ダイヤ座長のパワーと情のバランスが、主人公・新八を通して、涙線にぶつかってきた。

明治五年、まだ江戸の香りが色濃い時代。
往来の人々が聴き入っているのは、流しの三味線弾き・新八(小泉ダイヤ座長)の三味線だ。
(この場面ではダイヤ座長の三味線をたっぷり聴かせてくれた)
演奏が終わると、子どもの新吉(わかこさん)が人々からお祝儀を集める。

「ちゃん、こんなにもらったよ!」
たんまり溜まったご祝儀に、しばらく野宿しなくていいかと思いきや。
「駄目だ、今日も外で寝るぞ」
と新八は言い聞かせる。
「今はまだ暖かいから外でも寝られるが、冬になったら、通りで寝たりしたら凍え死んじまう。だから、冬に旅籠に泊まれるように、今はお金を溜めておくんだ」
流しの生活は、ずいぶん厳しいようだ。

仲良さげな新八と新吉は、実は血の繋がった親子ではない。
七年前、たまたま新八が通りすがった夜道で、源次(小泉たつみ座長)という男が死にかかっていた。
源次は、かつての親分(宝良典さん)に裏切られて斬られたのだ。
偶然出会った三味線弾きに、藁にもすがるように語る源次。
「奴ら、女房のお雪まで、手にかけやがった…」(お雪は辰巳小龍さん)
「残る子どもは、父親も母親も亡くしちまうんです。どうか俺に代わって、子どもを育ててやっていただけませんか」

そんないきさつで、新八は縁もゆかりもない新吉を連れ、旅をしてきたのだった。

若い娘(辰巳満月さん) をやくざ連中から助けたのがきっかけで、親子は娘の実家である旅籠に逗留する。
旅籠の女将(葉山京香さん)とも仲良くなり、親子はしばらくの休息を得る。

だがある日、女将は新吉が見覚えのあるお守りを持っているのに気づく。
「このお守りは、私が上の娘のお雪に送ったもの」
「お雪は、九年前にやくざ者の男と駆け落ちしたまま、いっこうに行方がわからない。噂では、一人男の子を産んだとか…」

つまり新吉は、女将の孫だったのだ。
女将と新八は二人きりで話をする。
「勝手は重々承知です。私どもに、新吉を返してやっていただけませんか」
嘆願する女将に、新八はかぶりを振る。
「女将さん…七年間、血の繋がらねえ子どもを育てるのは、楽なことばかりじゃありませんでした」

ここからの語りは、その内容もダイヤ座長の声も、凄絶なものだった。

「子どもはだんだん育つ、するとお金がかかる。ただでさえ厳しい暮らしだ、飢えるときもありました。こいつがいるせいで、俺はうまいものが食えねえんだと、憎く思ったことも…」
「なんで俺が実の子でもないこいつを育てなきゃいけねえんだと、一度、こいつの手を引いて売り飛ばしちまおうとしました。でも、何も知らない新吉が、お客からご祝儀でもらったちっちゃな握り飯を、半分に割って俺に渡すんです。ちゃん、お食べって」
「自分のしようとしていたことが恥ずかしくて、泣けて泣けて仕方ありませんでした。そのときから、俺と新吉は、本当の親子になったんだ…」

――あの子は俺の子だ、俺の新吉だ、俺のものだ――

最後の方はほとんど叫ぶような調子で。
ダイヤ座長の表情は、怒りを混じえ、泣きを混じえ、目元が細かく震える。

それでも、女将は諦めない。
「聞けば、子どもには、ずいぶん厳しい暮らしではないですか。私どもの下でなら、きれいな着物も着せてやれる、美味しいものも食べさせてやれる」
この言葉に、とうとう新八は折れる。
新吉は泣いて嫌がるが、ついに親子は別れることになるのだ。

「私、普段お芝居で泣いたりしないんだけど、今日はついうるうるしちゃった。やっぱり親子ものって、涙線に来るねえ」
終演後、一緒に観に来ていた知人は、まだ夢見るような目元でそう語った。

ダイヤ座長の熱演以外にも、見どころは多かった。
旅籠の娘役の満月さんとわかこさんがあやとりをして遊んでいる場面は、若い娘さんと幼子という取り合わせが、とっても和らげな舞台景色だったり。
それから、急きょアドリブで、新吉に喧嘩を売るやくざの役で再登場したたつみ座長だったり(笑)。

ぜいたくな欲を言えば、せっかくの三味線劇、ダイヤさんの三味線がもっと聴きたかったなぁ。
たとえば、後半の親子が別れるくだりで、新八の哀切な気持ちを表す三味線の音色があったなら…
想像だけでぶるりとします。

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