たつみ演劇BOXお芝居「石松裸喧嘩」

2013.8.10 夜の部@篠原演芸場

「ダイヤ座長って、森の石松似合いそう!」
先月、私は観劇仲間にそんな想像をうきうきと話した記憶がある。
まっすぐで、熱くて、勢いが迸っていて、根の良い男で、愛嬌があって。
みんな大好き、森の石松。
私の中では、知ったばかりのたつみ演劇BOXの弟座長さんの印象と、重なるものがあった。

だから、篠原演芸場にずらりと貼り出されたお外題の中に、「ダイヤ熱演 石松裸喧嘩」を見つけたときには、自分の幸運に思わずガッツポーズ。
実際に観れたダイヤ座長の石松は、予想をまったく裏切らず。
まっすぐで、熱くて、勢いが迸っていて、根の良い男で、愛嬌があって。
――加えて、大層可愛かったのだ。

写真・小泉ダイヤ座長(当日舞踊ショーより)


「俺はもう、腹が減って腹が減って、立つのも大変なんだ…」
このお芝居の石松は、冒頭から腹を空かせている。
清水次郎長親分(宝良典さん)・お蝶(辰巳満月さん)と一緒に、凶状の旅の道中だが、路銀は底をついてしまった。
次郎長に「どうした、顔色が悪いぞ」と言われて、石松は拗ねたように答える。
「おまえさんね、もう何日も飯食ってなかったら、そりゃ顔色も悪くなりますよ」
わ、次郎長親分に対しても、随分気安い感じの話し方。
親分のためならどこまでも!みたいな型通りの忠義じゃないところが、親しみやすくって良い。

金欠と空腹、おまけにお蝶は病身で、一刻も早く薬が必要だ。
路上で途方にくれていた次郎長一行の前に、乞食のような身なりの男が現れる。
かつて次郎長が世話した、小川の勝五郎(嵐山瞳太郎さん)だった。
勝五郎は恩人の窮状を知り、
「貧乏暮らしで何もできやしませんが、どうかうちで世話をさせていただけませんか」
と申し出る。
そこで石松、身を乗り出して、

「勝、お前の家に着いたら、まず飯だ。挨拶とか堅苦しいことは要らない、まず飯だ。着いたら、すぐ飯!敷居をまたぐ前に、飯!」

こんなに「飯」を繰り返すセリフ、初めて聞いた(笑)
かつて同じ釜の飯を食っていた仲とはいえ、この遠慮のなさ、正直さ。
全然乱暴に聞こえないのは、ダイヤ座長の持つ品の良さのためかな。
健康優良児のような石松は、なんだかすっかり可愛く見えてきた。

けれど、勝五郎は予想以上のド貧乏だった。
なんとか屋根を提供できるくらいで、飯どころか、お蝶の薬代さえ捻出できそうにない。
仕方なしに勝五郎と石松は、一枚きりの着物を脱いで、質に入れる。
ここから最後まで、勝五郎と石松は下着の格好のままで寒げ(ようやくお外題「裸喧嘩」の意味がわかった)。
それでも、敬愛する次郎長親分に「その格好はどうしたんだ?」と問われれば、決して質に入れたなんて言わない。
「俺の着物、今、洗濯してるんですよ」
と、そろえた答えを返す二人の忠義心が温かい。

次郎長は、その土地の久六親分(小泉たつみ座長)に経済援助を頼ることにする。
久六親分もまた、かつて次郎長に並々ならぬお世話を受けた一人。
当然、恩義に報いて助けてくれるだろうと思っていた。

ところが、勝五郎が使いに来て次郎長一行の窮状を訴えても、久六親分はあっさり、
「気の毒なことだな」。
へ、それだけ?
「このままでは次郎長親分のところへ帰れません」と粘る勝五郎。
だが久六親分は、勝五郎を締め出し、あろうことかその額まで割ってしまう。

勝五郎は他にすべがなく、自分の髪を売って、二両の金を作って帰って来る。
「勝、本当にありがとうよ…」
深々と頭を下げる次郎長。

石松はその横で、じっと何かを考え込んでいる。
額を割られ、髪まで失った友人を見て。
鬼気迫る目つきで、じいっと。

「おい、石さん、奥で飯の支度ができてるぜ。腹が減ってるんだろう」
勝五郎に呼びかけられても、石松の眼光は鋭いまま。
散々食事を待たされて、空腹のピークなはずなのに。
「石さん、まさか、何か早まったことをするんじゃないだろうな」
「いや、すぐに行くよ」
「そうかい、じゃ、奥で待ってるぜ」
勝五郎が心配そうな表情で奥にひっこむが早いか。
石松は、猛然と喧嘩に向かう身支度を始める。

次郎長や勝五郎にばれないうちに、大急ぎで、具足を身に付ける。
口元は悔しさに噛みしめられ、目つきは純粋な怒りに燃える。
熱い、石松の素直な心のありさまが、ぐいぐいと舞台に焼きつけられる。
ダイヤ座長の本質的な熱さとあいまって、この場面から滲み出る“まっすぐさ”の気持ち良かったこと!

鮮烈な立ち回りの後、石松は久六親分を切り伏せ、晴れやかな幕切れ。
からりと、すかっと、爽快極まりない後味を残してくれた舞台を、頭の中で繰り返しながら。
足取り軽く、十条駅までの夜道を歩いた。

前日の「お祭提灯」と合わせて、二日続けてダイヤ座長の魅力をじっくり味わえた。
きらっきらの若き王様の輝きは、それぞれのお芝居の箱の中で乱反射して、異なる色を含みながら観客席に差し込むのだ。
東京にいてくれるのはあとわずか、その光の眩しさを目一杯堪能しよう。

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