たつみ演劇BOXお芝居「お祭提灯」

2013.8.9 夜の部@篠原演芸場

「あのおじいさんがダイヤさんだって最初、わからなかったね…」
十条駅へ向かう帰路で、そう話しているお客さんがいた。

花金の夜、退勤後はまっすぐ篠原演芸場へGO!
喜劇「お祭提灯」の幕が開くと、いきなり衝撃の光景があった。
白髪のおじいさんが、子ども(小泉ライトさん)から布団をひっぺがして奪おうとしているのだ。
「この子の母親に貸した金の期限や。返す金がないっちゅうから、せめてこの布団でも質に入れようかと思ってな」
あらま、子ども相手に、なんという強欲爺さん。

ぎらぎらと銭への欲に染まった瞳、白髪と白ひげの下でにたぁと笑う顔。
お芝居始まって最初は、本気で気づいてなかった。
この強欲爺さん=“幸兵衛はん”が、あのきらっきらの王様みたいな小泉ダイヤ座長だとは!

写真・小泉ダイヤ座長(当日個人舞踊「勝手にしやがれ」より)


金貸しの幸兵衛は、どこまでも吝嗇。
町の祭の寄付金集めが回ってくれば、
「わし、もう寄付金払ったわ!」
「えっ、いつです?」
「去年の祭で払っとるわ!」
提灯屋の徳兵衛(小泉たつみ座長)の家に勝手に上がって、
「喉がかわいたなぁ~」
と出されるお茶を待ち、悪びれずに
「えろうすんませんなぁ~」
そして帰る際には、徳兵衛から借りた煙草入れを、こっそり懐に忍ばせようとするんだから。

不注意にも、祭の寄付金を集める佐助(愛飢男さん)と寛太(嵐山瞳太郎さん)が、うっかり集めたお金を落としてしまった。
二十五両もの大金だ。
この二十五両をなんとか手に入れようと、ダイヤ座長演じる強欲幸兵衛は奔走する。

ダイヤ座長といえば、これまで私の中では、勢いに溢れたパワフルな二枚目のイメージだった。
エネルギーが炸裂している舞踊ショーは言わずもがな、お芝居でも「明治一代女」の巳之吉とか「小豆島」の定吉とか…
長セリフのときの、気合いの入った声音が印象的だ。

だけどこの夜は三枚目の老人役。
老人の器にパワーを収めきらず、はみ出し気味にしているのが特長的で面白いのだ。
提灯の中に二十五両が隠されていると思いこんだ幸兵衛は、しめたとばかりに、その提灯を買いに行く。
「この提灯、五両で買うたでぇ~」
セリフの音一つ一つに、力がこもりまくっていて、やたら可笑しい!

幸兵衛の行動だけ考えたら、そのあまりのがめつさに、いくら喜劇とはいえちょっと好感は持てなさそうなものだけど。
私の頭には、目をまんまるにしたすっとんきょうな表情や、呼び止められて片足をぴょっこり上げたポーズばかりが、記憶に残っている。
ダイヤ座長の“勢い余った感じ”が注入されてこそ、金貸し幸兵衛は吝嗇老人の典型をはみ出して、笑いを誘えるキャラクターになりえるのだろう。

吝嗇老人といえば、金銭欲に歪む幸兵衛の眉根のあたりを横切るのは、「クリスマス・キャロル」のスクルージ爺さんの面影。
けれども、「お祭提灯」にはクリスマスの夜に導き諭してくれる精霊はいない。
代わりに、幸兵衛を見捨てず、困惑しながらも世話を焼いてくれるのが、たつみ座長演じる提灯屋の徳兵衛だ。
徳兵衛は、正直徳兵衛と呼ばれるほど、誠実な人柄。
「幸兵衛はん、あんたまたそないなこと言って…みんなに嫌われまっせ」
たつみ座長の困った表情と、ものやわらかな大阪弁が、なんともしなやか。
幸兵衛と徳兵衛、二人のキャラクターと演技の創り方が、抜群に好対照だった。

たつみ座長の口上によれば、「お祭提灯」はとっても古いお芝居らしい。
お父様の小泉のぼるさんがまだ子役の頃から、「この芝居、古いんだよ」と周囲に言われていたというから、よっぽどだ。
何十年前から上演されているのだろう。
ひょっとしたら世紀をまたいで古かったり?
この喜劇の歴史を思うと、昔の人々の笑いのさざめきが、かすかにまつわっているような気がする。
ちょっと頼りない、だけど温かく懐かしい、提灯の明かりのように。

それにしたって、つくづくダイヤ座長の三枚目は、私にはビッグインパクトだった。
しかし、この日ゲストにいらした舞踊家の胡蝶さんが、インタビューされていた内容によれば、ダイヤ座長は最近あんまり三枚目役はされないらしい。
だとしたら、ちょっともったいないような。
また、あのパワーのあり余った三枚目に出会ってみたいな。

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