南條隆一座とスーパー兄弟お芝居「大岡政談 悪の華」

2013.8.3 夜の部@梅田呉服座

大阪滞在中、もう一つねじ込めた観劇は、梅田呉服座。
横浜で一度お目にかかった、「スーパー兄弟」をもう一度見てみたかったのだ。
スタイリッシュなビルの5階にあるし、映画館みたいに綺麗な座席だし、最初はちょっと緊張した。

お芝居「悪の華」。
こちら、今まで観たことのない種類の面白さだったと思う。
屋台骨は、なんと言っても龍美麗座長の超絶美形!

写真・龍美麗座長(当日個人舞踊「一本釣り」より)


「俺はよ、人を殺すのが好きなんだ」
美麗座長演じる主人公は、羅斜面の狂四郎という名の大悪党。
虫でも払うように、いとも簡単に罪なき人を殺める。
「殺される奴らが、まるで赤ん坊みたいに目を見開いて泣くのがたまらないんだよ…」
性根から真っ黒、純粋な悪意の塊という、人情芝居にあるまじきキャラクターなのだ。

歌舞伎をベースにしたメイク、でもゴシックロマン漂う手足のアクセサリー。
狂四郎がよくする、舌をべろんと出す表情とか。
常に瞳孔が開いているような、凶悪な目つきとか。
一つ一つの表情が、ファンタジーもののコミックから抜け出てきたよう。
演技力や計算されたメイクはもちろんだけど。
美麗座長の華々しい二枚目ぶりがあってこそ、あそこまで絵になるのだろう。

最大の見せ場は、吉田三五郎(南條影虎座長)率いる役人勢を相手取った大立ち回り。
狂四郎は刀を振り回し、役人たちを愉しそうに斬り伏せ、客席にカッと目を剥く。
わあ、凄絶に滲み出る悪の色…
とその倒錯美を味わっていると、次の瞬間には役人たちの槍の上に乗り、また見得を切る。
おお、暗い瞳に欲望がぎらついている…
と拍手を送っていると、次の瞬間にはまた舞台に飛び降りて、役人たちをなぎ倒す。
そして再び眼光が客席をとらえる。

一体何回やるんだろ…?!と思うくらい、見得を切る、その美貌を見せる、ひたすら魅せる。
(ご本人もこのシーンの後は汗だくになっていた)
美麗座長の美しさを、とことん味わい尽くしてください!という全力のサービス精神を感じた。
元々の男前だけじゃなく、ご自分の美しさがどうしたら舞台で一番映えるか。
それを綿密に練った上で、表情や立ち姿の一つ一つを編み出しているように見えた。
そういう役者さんは、すごくいいなぁ。
美しさのプロだなぁ。

とはいえ、このお芝居は座長の美形ぶりだけが見どころじゃない。
細部にこそ、魂が宿っている。

たとえば、狂四郎が舞台上で初めて殺人を行う場面。
狂四郎は冒頭からずっと、被り布をしている。
手には杖。
覆われた視界をかつかつ探る、行き杖。
なんと狂四郎は、目の見えないふりをして、あんまさんをしているのだ…!

日本橋・伊勢屋の女主人(大路にしきさん)は、その姿にあっさり騙されて、狂四郎を家に呼び入れる。
体をほぐしてくれる手に、身を委ねきって寝てしまったところに。
取り去られる顔の布、閃く刃。
女主人は、「あんまさん」の正体に気づく間すらなく、一瞬で絶命する。

殺人鬼の仮の姿として、あんまさんを設定しているのがあまりに絶妙だ。
まず目が見えないため、本質的に弱者の要素を含んでいる。
加えて、癒しを与えるその手には、人は完全に無防備に体をさらしてしまう。
癒しと弱さを抱えた儚い存在が、瞬時にくるりと裏返り、どす黒い暴力に変わる。
このギャップが、ひっぱたかれたように衝撃的だった。

それから、狂四郎の人格を何より明確に伝えてくれたのは、一本の傘の置き方だ。
涼しげな墓地で、手持無沙汰にうろつく狂四郎。
邪魔になった傘を、ポンと。
堂々と墓石の上に置いてしまうのだ。
弔いの気持ちとか、死者への敬意とか、無言のうちに皆が心の底に共有している感覚が、この人には欠落している。
何でもないシーンにこそ、小さな違和のように、狂四郎の抱える欠落が浮かび上がる。

こんな風に、「悪の華」はよく目を凝らすと、細かいところにこだわりが散りばめられていた。
先月、横浜でこの劇団さんの「お糸新吉物語」を観たときも同じことを感じた(鑑賞録の記事)。
そのときはこんな風に書いている。
<隙間なく敷き詰められた宝石箱>
<この日の舞台景色は、なんと言ってもはめ込まれた細かな飛び石、伏線がきらりと光るものだった>
ぴたりぴたりと、宝石の一つ一つが噛み合うまで。
日々編まれ、組み合わされ、何度もやり直されて、あの舞台が出来上がるのだと思う。

たまたまこの日は、美麗座長の24歳のお誕生日だった。
ラストショーの後、ファンの方から贈られたたくさんのケーキを前に、とても嬉しげだった。
とびきり麗しい、若き座長さん。
祝福と今後の輝きへの期待を、たくさん、たくさん込めて。

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コメント

素晴らしい表現力

何度も読んでいますが、何度読んでも、心に飛び込んでくる歯切れのいい、リズミカルな文章表現ですね。内容の豊かさは勿論のこと!

>かまちゃん様

わあv-238ありがとうございます!
文章のリズムはいつも気にかけています。
テンポ良く、リズム良く、読んでいただける方の目に浮かぶような文が書けたら…と。
そこを褒めていただいてとっても嬉しいです!

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