劇団KAZUMAお芝居「唄祭り やくざ仁義」

2013.8.2 夜の部@浪速クラブ

地下鉄御堂筋線、動物園前駅、ここが新世界!
『演劇グラフ』や色々な大衆演劇ブログで幾度も目にしてきた地名に、実際に降り立つと感激もひとしお。
所用で大阪に行った週末、なんとかスケジュールの合間を縫って、慌ただしく観て参りました。

まずはKAZUMA目指して駆け込んだ、浪速クラブ。
入り口でまごついていたら、揃いのTシャツを着たスタッフさんがとても丁寧に、サッと案内してくださった。
会場に入るなり目に飛び込んできた、あのアットホームな舞台!

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)


写真・龍美佑馬さん(当日舞踊ショーより)


さあ、ミニショーの後は3か月ぶりのKAZUMAのお芝居。
浪速クラブのブログで事前にお外題をチェックすると、「唄祭り やくざ仁義」とあった。
題からして、硬派なやくざもののお芝居かな?
だけど、そしたら「唄祭り」って何だろう?

物語の前半は、予想通り、ぴりっとした味の任侠道。
藤美一馬座長演じる旅烏・勘太郎は、山嵐(藤美真の助さん)の一家に草鞋を脱いでいるとき、裏切り者の始末を依頼される。
それが板橋の新吉(柚姫将さん)だった。
勘太郎は、新吉を殺すには忍びなく、片腕を落としたのみに留める。

ここから、勘太郎は旅装束を解き、故郷の実家に帰る。
物語の後半は、やくざ仁義の殺伐感を脱ぎ捨て、郷愁をかきたてる「唄祭り」の響きへシフトしていく。

故郷は、年に一度の木曽の祭りの準備中。
帰って来た勘太郎を迎えるのは、たった一人のおとっつぁん((龍美佑馬さん)だ。
何年も行方知れずだった息子を、父はいきなり座布団で引っぱたく!
「お前、木曽の祭りの時期には必ず帰ると言っておったじゃないか。何年過ぎたと思うとるんじゃ」

勘太郎は、旅烏からただの息子の顔に戻って、困ったように説明する。
「いや、俺はなぁ、毎年木曽の祭りの頃には、ちゃんとこの近くまで帰って来てたんだ」
嘘をつけ、と拗ねるおとっつぁんも、次の一言で目を丸くする。
「ほら、おとっつぁん、昨年の祭りには提灯を吊るさなかったろう。何かあったんじゃないかって心配したぜ」
どうやら、勘太郎は本当に毎年故郷の近くまで帰り、様子をうかがっていたらしい。
ではなぜ家に顔を見せなかったのか?

それはおとっつぁんの、この質問が嫌だったからに他ならない。
「して、勘太郎。お千代は、どうじゃった?」

まったく気の置けない間と見えるこの親子には、少しばかり事情があることが明かされる。
実は勘太郎は、亡くなったおっかあの連れ子で、おとっつぁんと血の繋がりはない。
おとっつぁんと血が繋がっているのは、妹のお千代(霞ゆうかさん)である。
勘太郎は、数年前行方知れずになった、お千代を探して旅していたのだ。

「お千代は…ほうぼう探してあるいたけど、見つからなかったよ」
おとっつぁんを落ち込ませまいと、勘太郎は慌てて付け加える。
「俺はまた旅に出る、いくらだって探して歩いて、今度こそお千代を見つけてみせるからよ!」
この、情の厚さ。
くそじじい、なんて憎まれ口を叩くのと同じ口で言うから、なおのこと沁みる。

でも、勘太郎が旅する必要はもうないのだ。

ぷくくく…と笑い出すおとっつぁん(このときの佑馬さんはホントに楽しげに笑ってた)。
「実はお千代はな、帰って来とるんじゃ」
運命の巡り合わせか、勘太郎の不在中に、お千代は偶然おとっつぁんと出会っていた。
おとっつぁんは、今はお千代とその亭主と一緒に暮らしているのである。
「このご亭主がな、また立派なお人なんじゃ。お前、ちゃんと挨拶できるか?」
なんて気安く冗談を言うおとっつぁんは、孤独の面影をすっかり消して、可愛いお茶目な老人の顔をしている。
「当たり前だろ」とふてくされたように返す勘太郎。

この父と息子は、いいなぁ。
愛情たっぷりに互いの悪口を言うあたり、たまらないなぁ。

でも、小さく引っかかる。
血の繋がった娘とその亭主が、一緒に暮らし始めたという。
――継子である勘太郎の居場所を、上書きするように。

紹介されたお千代の亭主を見て、勘太郎は愕然。
なんと、自分が片腕を落とした板橋の新吉だったのだ。

新吉と一触即発の空気になる中、新吉をいまだに狙っていた山嵐が襲って来る。
おとっつぁんは大事な娘婿の身を心配するあまり、勘太郎を怒鳴ってしまう。

「お前はどうなってもいいから、早く新吉さんを助けに行け!」

ああ――言ってはならないことを言ってしまった。
勘太郎の顔に浮かぶ、静かな諦念。
これがラストへの布石になる。

山嵐たちを斬り伏せた直後、勘太郎はその刀で自らの腹を突くのだ。
新吉と遺恨のある自分の存在は、今後おとっつぁんを苦しませると信じて。

勘太郎が走馬灯の中に思い描く情景は、幼い頃の木曽祭り。
「祭りに行こう、行こうって、おとっつぁんを呼んで」
「俺は唄って踊って、渦の中」
「最後はおとっつぁんの背中に揺られていた…」

――最期に木曽の祭り囃子が聴きてぇなあ――

呟いて、瀕死のはずの勘太郎は、かすかに踊り始める。
まことか幻か、おぼろげな祭りの笛の音に合わせて、手足を揺らす。

踊る勘太郎の瞳は、虚ろに過去を覗きこんでいる。
幼い頃の記憶に、よろよろと踊り着く。
きっと継子だなんて気にしなかった頃の、無邪気さにもたれるように。

この場面で、泣き崩れるおとっつぁんだけでなく、新吉が呆然と佇んでいるのがとても良かった。
新吉は、これからおとっつぁんと一緒に生きていく、新たな”息子”だ。
勘太郎はこれからを自らの手で断ち切り、いとけない過去に還って行こうとしている、これまでの”息子”。
このコントラストが、継子である勘太郎の切なさを浮き彫りにする。

…観ているときはそんなことを冷静に考える余裕もなく、ぽろぽろ泣いていましたけど…

唄祭り。
命の灯火が消える間際、記憶の底から蘇る、なつかしい楽の音。
踊る一馬座長の姿は、私のまなうらからずっと離れないだろう。

悲劇の余韻は残るけど、KAZUMAの皆さんに「9月、東京でお待ちしてます!」とお伝えするのは元気な声で。
今頃、大阪のファンを思いきり楽しませているんだろうな。

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コメント

お萩さん、浪速クラブに来たんですね。遠路はるばるようこそです。新世界が初めてなら、観光地化したとはいえ、そこかしこに残っている昭和にびっくりしたんではないですか。私は3日に孝行小判、4日に新場の小安、10日に北海のトラを観ました。しかしながら、すでにKAZUMAは3ヶ月目になり、演目が全部かぶってしまいました。もちろん、大好きな劇団ですし、面白くて楽しませていただいたのですが、以前から気になっていた劇団美山が浪速クラブのすぐ近くの朝日劇場にきており、10日の夜にハシゴしました。KAZUMAの特に座長と華原涼さんのファンで、何かしら後ろめたさがあったのですが、見聞を広めたい欲望に負け、行きました。結果は、行ってよかったです。全体的に座員の能力が高く、まとまりもあります。里美京馬の日本刀捌きも秀逸でした。座長を筆頭に女優陣がしっかり芝居と舞踊ショーを務め、非常にポテンシャルが高かったです。そして何より極めつけが副座長の若干17才である里美こうたさんです。美ボーイズの一人ですが、表面的ではなく、すごい才能の持ち主です。芝居は完璧に泣かされ、舞踊は惚れ惚れさせられました。マジシャンのように面をとっかえひっかえする面踊りは驚愕しました。その技の切れ味とお面の役になりきっている所作にも驚愕です。KAZUMAが愛すべき昭和を引きずる大衆演劇劇団とするなら、美山、都若丸、はる駒座は、これからの大衆演劇のあり方を探求している劇団と言えます。長文となり、申し訳ございません。それではまた。なお、来週の土日はKAZUMAの演目の関係から、KAZUMAと美山、再来週は、KAZUMAを土日に観ます。ますます、どっぷり浸かりますよ。

Re: タイトルなし

>浪速のファン様
いつもありがとうございます!
新世界、その昭和っぽいごちゃごちゃっとした感じが私のツボにはまり、とても好きになりました。
浪花クラブも朝日劇場も、有名な通天閣からあまりに近いので、驚きました。
そのせいか、私が行った2日の夜には外国人観光客と思われる方もいました。楽しんでらっしゃるようでした。

劇団美山さんをご覧になったんですね!
以前篠原演芸場でお隣の席だった方が、里見こうたさんの大ファンで、「どんな役者を観ても、一番は里見こうたで変わらない」とおっしゃってました。
お芝居で泣かせる役者さんなら、私もぜひ観てみたいです。
僭越ながら、大好きな劇団さんが近くにいるときに他を観に行くときのちょっとした後ろめたさ、わかります(笑)
大阪は劇場が多いから、あちらも観たいこちらも観たいと誘惑が多そうですね。
来週・再来週の週末の観劇、お楽しみください。

"これからの大衆演劇のあり方を探求している劇団"…素敵な表現だと思います。
はる駒座は今秋から津川鶫汀さん組と不動倭さん組の2つに分かれ、別々の巡業をするようです。これまでコミカルで垢抜けていた彼らの芸がどう変わっていくのか、楽しみです。

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