深く染むる2―続・色をまとう役者さんの話―

前回から引き続き。
役者さん各々の色の彩文は、深まって広がって、スポットライトの真ん中に浮かび上がる。

◆たつみ演劇BOX・小泉たつみ座長の「紫」
写真・小泉たつみ座長(2013/7/20)


高みの紫。
かの座長さんの着物や帯に紫色を見つけると、そんな言葉が浮かぶ。

お芝居の幕間で、あるいはたつみ座長の個人舞踊の直後に。
「いやぁ、うまい」
「うまいねぇー、たつみさん」
惚れ惚れとした声が、あちらこちらから聞こえて来る。
観たばかりの芸に心の芯を持っていかれて、まだ魂がどこかふわふわしている、そんな称賛の声。
一度、古典演劇・舞踊に詳しい知人を、たつみ演劇BOXの舞台にお誘いした。
彼も、しきりにたつみ座長の技巧を賞賛していた。
「相当、舞踊の基礎がしっかりしてますよ」
「お若いのにすごいですね」
舞台のたつみ座長は、ロングの鬘をさらり揺らして、どこまでも軽やか。

踊りも芝居も抜群、そんな役者さんが山ほどいるのが、大衆演劇のすごいところだと思うんだけど。
たつみ座長の”上手さ”は、ソフィスティケートされていてあっさり風味。
加えて、名高いトップ劇団の頭を15年も務めてきた、誇り高さ。
さらに、涼しげな気品は生来のものなんだろうか?
とにかく、たつみ座長のお衣装の中に光る紫色は、その高位を讃えてやまない。

喜劇では、とんでもなくコミカルなのにな(この間観たお芝居「小豆島」とか)。
口上や送り出しでは、サクッと気さくな語り口なのにな。
たつみ座長の個人舞踊は、時に静謐。
瞳は何かを語りかけそうでいて、その手前で堰止められ、舞台景色はしじまに沈む。
細面の美貌が、しゃんと客席を向けば、深い京紫の気品がたなびく。


◆劇団KAZUMA・柚姫将さんの「紫」
写真・柚姫将さん(2013/2/9)



いま一人、紫色。
紫のメッシュの鬘(写真参照)は、将さんのイメージが強すぎて、もう私の中では覆ることないだろうなぁ。

将さんの個人舞踊は、しっとりした曲、悲哀のにじむ曲が多いような気がする。
「蒼い瞳のエリス」(安全地帯)、「友達の詩」(中村中)、「BALLAD」(alan)など。
真摯に、まっすぐに、踊られる一つ一つの物語の中に。
うっすらと物悲しさが掬い取れる。

若くてエネルギッシュな、劇団KAZUMAのお芝居の柱。
そこに、つ、とほんの一筋にじむ「悲」の色合い。
精悍な顔立ちに、ほんの一枚ひらりとめくれる、影のとばり。
将さん特有の魅力は、溌剌さの中にわずかに埋まった哀愁だと思うのです。

だからその面差しは、霞がかった菫の色味。
赤のエネルギーと青の悲哀がほどよく溶けて、やわらかな紫に行き着く。

9月、東京公演というのを聞いて、疼くようにワクワクしております。


◆劇団KAZUMA・藤美一馬座長の「白」
写真・藤美一馬座長(2012/8/26)


細雪。
触れなば落ちんと言うけれど、一馬座長の女形は、触れなば消えん。

我ながら暇人だけど、一馬座長の女形の魅力について、観劇仲間と延々語り合ったことがある。
そのときの結論は、「繊細なお嬢さんっぽさ」だった。
管見の限り、一馬座長の女形が観られるのは、大体舞踊ショーの2曲目。
黒幕が開くと、一馬座長のきっそりと細い立ち姿が現れる。
幻燈のようなスポットライトの、光を拾いながら踊る。
眼差しは伏せがち、でも時折、客席と舞台の狭間に定まらない瞳が浮かぶ。
それは、どこか名家の令嬢の風情だと映る。

あの舞台に浮かぶ彩文を、言葉にするのはむつかしいのだけど。
ほどけかけた糸よりも、さらに細く。
溶けかけた雪よりも、さらに儚く。
自らの掌にふーっと息をかける動作をする一馬座長は、なんだかスポットライトの白光に溶けて行きそうにすら見えるのです。

消え入る直前の純白。
一馬座長が女形で白い着物に身を包んでいると、その白はなお淡い。


さて、舞台に散る色を、自分勝手な眼差しでいくつか集めてみたけれど。
写真フォルダを丹念に見返してみると、あれ、意外とこの役者さんはこの色着てないんだな…
あ、このときの舞踊の表情、今までのイメージと違うな…
なんて、改めて気づくことが多くて。
今回言及した役者さんみんな、私の見つけられない色を、まだまだたくさん隠し持っているのだろう。
次の発見を楽しみに、カラフルな舞台の記憶を抱いて、ひとまずおやすみなさい。

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コメント

新開地。

劇団KAZUMAさんは、今月新開地です。
丁度27日に観劇の予定でした。

>nemu様

27日ということは、橘大五郎さんゲストの日ですね!
劇団KAZUMAのやわらかーい雰囲気と、大五郎さんのきっちりお芝居!って感じがどう絡むのでしょう。
私も関西にいればぜひ見たい組み合わせでした…
楽しんでらしてください(*^_^*)

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