深く染むる1―色をまとう役者さんの話―

真っ暗な舞台、零れ出すイントロ。
ライトが当たった瞬間、闇をひらいて色が咲く。
観客席から、待ちかねていたと言わんばかりの拍手が起こる。
空間全部の眼差しが、鮮やかなお着物と鬘、役者さんの笑顔に集中!

舞踊ショーの登場の瞬間が大好きです。
役者さんと色鮮やかな衣装の組み合わせは、まさに眼福。
その中で、いくつか。
私がおお…!と目を見開いた、特定の役者さんがまとう色がある。
多分、それらの色たちは、ただのお衣装や鬘ではなく。
それぞれの役者さんの風貌や息遣いや、染み出す心根と溶け合って、深いところまで染め抜いていたのだ。
時折、にんまりしながら覗きこむ、記憶の中のカラフル・ビュー。


◆春陽座・澤村心座長の「青」
写真・澤村心座長(2012/10/29)


青色から連想されるものといったら、やっぱり水だろうか。
水のイメージに連なる役者さんは、私の中では澤村心座長。
まず、さわむらしん、という名前の響きの清廉さが、水面に広がる波紋を思わせる。
それに、淀みない一筋の流れのような舞踊。
決めるところになると、色白のお顔が客席に向けられ、情念のたゆたう波を静かに投げかける。
そんな心座長には、写真の水色のロングの鬘が、本当によくお似合いだと思うのです。
(本格的な一眼レフを持つ観劇仲間いわく、心座長の肌色の白さは、写真では色が飛んでしまってベストショットが難しいほどらしい)

「上品」「はんなり」「やさしい」…心座長のファンに魅力を尋ねると、よくそんな言葉を聞く。
「心様!」
というハンチョウとともに、篠原演芸場の舞台にすっと立った心座長の青い影。
女形も立ち役も、どこか幽玄めいていて。
ああ、だから呼び捨てでも”ちゃん”付けでもなく、心“様”なんだ…と納得した覚えがある。

春陽座は昨年の9・10月に東京公演があって。
春陽座特有の美しく完成されたお芝居見たさに、せっせと通い詰めた。
なのに当時ブログを書いていなかったことが悔やまれる…
近いうち、必ず再会したい劇団です。


◆たつみ演劇BOX・辰巳小龍さんの「赤」
写真・辰巳小龍さん(2013/7/20)


まだ、この女優さんの至芸を観始めたばかりだけど。
2013年夏、東京にいらしているがゆえに、私の中で今最も熱い役者さん!

小龍さんというと、黒の中に浮かび上がる赤色が印象的だ。
たとえば7/20の個人舞踊「朝日のあたる家」(写真参照)。
<あたしが着いたのはニューオリンズの>
<朝日楼という名の女郎屋だった>
ちあみなおみの吠えるような歌声に合わせて、赤いドレスがひらめく。
歌詞を聴くと、かなり重い歌だ。
歌の中の女性は、放浪の果てに身を持ち崩したらしい。
<誰か言っとくれ 妹に>
<こんなになったら おしまいだってね>
小龍さんが両腕を掲げると、空間に物語が揺らめく。
暗闇を割って、一筋、鮮烈に燃ゆる。

初めてたつみ演劇BOXを観たお芝居「雪の渡り鳥」冒頭でも、小龍さんは黒地に赤模様の着物で登場した。
闇の中、一人立つくれないに、目を奪われたものだ。

そう、暗い舞台に一人凛とたたずむ姿が、とても美しい方なのだと思う。
名女優の瞳には、ひそやかな炎。
小柄な体躯がひりりと燃えて、やがて火焔は舞台を覆い尽くす。


◆劇団花吹雪・桜春之丞座長の「ピンク」
写真・桜春之丞座長(2012/11/10)


正直、あの美貌ならどんな色でも着こなしそうだけども。
私の観た中で印象的だったのは、奇跡的なまでに場を明るくするピンク色。
なおかつ、限りなく艶やかに微笑んだりすると、もう。
舞台にいきなり大輪の花が咲いて、見入っている間に、ご本人はさらっと踊り始める。

指先まで詰まった、けぶるような花の甘さ。
春之丞座長がしなやかに踊ると、惜しげもなく溢れる。
加えて、どんな隅っこの席にいても、きっちり眼差しが飛んでくるのだ。
だから観客席中、残らず、花弁に包まれるように舞踊の世界に引き込まれる。
春之丞座長は何でもないことのようにされてたけど、実は卓越したテクニックなのでは…?

写真は、昨年11月に小岩湯宴ランドで初めて観たときのラストショーから。
見切れてしまっているけど、手にはバラの花を一輪持って。
それにこの鮮やかなピンクのお着物、鬘、お化粧だもの。
この方は何者なんだー?!と言いたくなるくらい、夢の中から抜け出てきた存在に見えた。
目の前にいらしたご婦人が、それまでお喋りしていた隣席のご友人のほうを向くのも忘れて、春之丞座長に釘付けになっていたのが印象的。

華やか、甘やか、艶やか。
かぐわしい春の風は、今は毎日関西のお客さんに向かって吹いているのだろう。


◆剣戟はる駒座・勝小虎さんの「緑」
写真・勝小虎さん(2013/4/13)


ヘルシーな、萌黄混じりのみどり色。
このブログでは普段ひたすらお芝居の話ばかりしているものだから。
小虎さんについても、「河内十人斬り」の熊太郎とか「やくざの花道」の剛三とか、お芝居での名演技の話に終始してきたけど(私的には悪役が絶品!)。
場面変わって、舞踊ショー。
かの花形の笑顔の安らかさといったら尋常でない。

滋養をたっぷりたくわえた草木が、空気に潤いをもたらしてくれるように。
小虎さんが舞台に現れて踊り始めると、舞台から客席に向けて、活力の詰まった枝葉がにょっきり伸びていくのを見るようだ。
腕の一振り、足の一振りから、明るい命の粒が飛ぶ。
あの、「底抜けにヘルシーな感じ」は一体どこから芽吹いているんだろう?

小虎さんの印象深い個人舞踊は、5月にユラックスで観れた「ちぎれ雲」(香田晋)。
かつて愛した人を探して、迎えに行く旅の途中、みたいな内容の歌。
<北国へ帰ろう 心を連れて>
<北国へ帰ろう 昨日をすてて>
ほのかに温もりのにじむ歌に、恵みの満ちた笑顔を乗せて。


書くのがあんまり楽しくて長くなってしまった。
次に続く!

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