たつみ演劇BOXお芝居「明治一代女」2―赤のお梅・黒のお梅―

2013.7.27 夜の部@浅草木馬館

1―白のお梅―の続き。

◆中盤・赤のお梅
巳之吉への裏切りから、見せ場である雪の中の殺人まで。
小龍さんの衣装は、赤と黒の縞模様の着物になる。
赤色は、お梅の運命にひそむ毒を託されて、さらに色濃い。

写真・辰巳小龍さん(当日舞踊ショーより)


「別れ―られません…!」
ダイヤさん演じる津の国屋を前に、引き絞るような小龍さんの声音。
巳之吉との約束を、当初はちゃんと守るつもりだったのに。
「お梅お前を、俺の女房にすると決めていたんだ…!」
恋慕う役者に、そんなことを情熱的に言われてしまえば。
別れに踏み切ることはできず、お梅は巳之吉から逃げ隠れするようになる。

裏切られた巳之吉は、凄惨な目つきでお梅を追い回す。
「お梅姐さん!そこにいるんだろう…!」
お梅の家や座敷の前で、待ち伏せしては、憎しみを込めて叫ぶ。

そして12月27日、降雪の日。
座敷帰りのお梅を待っていたのは、匕首を握った巳之吉だった。
「来ないで、来ないで」
必死に逃げ回るうちに、お梅の手は巳之吉を刺してしまう。
「違う、あたしじゃない、あたしじゃない」
犯した罪におののき、その場から逃れようとするお梅の足を、積もった雪が絡め取る。
積み重なった悲運が、この薄幸の女性をまろばせる。

舞台の緊迫感は、ひりひりと高みに達していて。
赤い着物の小龍さんが、よろけながら黒い街灯に寄り掛かり、ざっと白い紙吹雪が降りかかる。
――小龍!――
飛んだハンチョウは、舞台上の至芸を讃えて、木馬館に響いた。

「あたし――どうしよう………!」
お梅はわなわなと震える手で、母と武彦に縋りつく。
だが、あと5日で正月=津の国屋の名披露目の日だった。
お梅の胸に、浮かび上がる恋情。
「津の国屋の晴れ姿を、一目見てから、牢獄に行きたい…」
お梅の目に、いぶし出される執念。
「あたしそのために、人まで殺したのに!」

◆終盤・黒のお梅
5日間、逃げてのがれて、場面はお正月。
舞台背景には、襲名披露の「白波五人男」の劇場前の風景が描かれている。
そこに、張りつめた表情の小龍さんが、辺りを見回しながら影のように現れる。
着物は咎人の黒。
世間の目から逃れるための、黒い頭巾を被って。

だが、劇場前で待ちかまえていた警察署長(嵐山瞳太郎さん)に、あえなく捕まる。
「せめて一目、津の国屋の晴れ姿を観てから、暗いところへ行きとうございます」
哀願むなしく、警察に取り押さえられているうちに、襲名披露は終わってしまう。
絶望したお梅は、匕首で自らの胸を突く。

けれどお梅の人生には、最後の温情が残されていた。
晴れ装束に身を包んだ津の国屋が、楽屋から駆け出してきたのだ。

津の国屋は瀕死のお梅一人に見せるため、その場で口上挨拶をしてみせる。
「今日のこの日を迎えられたのは、命を賭してまで尽くしてくれた、ある女性のおかげです…」

息も絶え絶えのお梅は、泣き笑いを浮かべて、恋した役者の声を聴いている。
やがて観客席に手を延べ、最期の一言。

「津の国屋―っ!」

「明治一代女」のお梅。
役者に恋して道を外れた、愚かな女と語られた。
そのために人まで殺した、稀代の毒婦と描かれた。

でもこの夜の主人公は。
まじめで、健気で、利発で、家族思いで、小さな体に気をいっぱいに張って、懸命に生きてきた、お梅。
彼女の、たったひとつの望み。

「津の国屋―っ!」

よかった。
この女性の人生の終焉に、救いがあってよかった。
物語のおしまいに散っていったのは、白梅、紅梅、それとも黒い梅だったのか…

幕が引かれた後も、しばらく私の涙線は緩みっぱなしで。
周囲の女性客も、ハンカチを目元に当てていた。

至高のお芝居を観た後は、心は恍惚。
帰り道、雨上がりの夜道を歩きながら、まだ魂は明治の物語から抜け出しきっていなかった。
この夏、小龍さんが、たつみ演劇BOXが、東京に来てくれて本当によかった。
こういうお芝居を観るために、お萩は毎日頑張って生きてるんですよ!

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コメント

こんにちは。お久しぶりです。お萩さんは
大衆演劇はスペシャルなのだのブログを見てるのですか。面白いブログですね。勉強になります。さて、8月から劇団KAZUMAは浪速クラブです。7月は高槻千鳥劇場でずーっと観劇してました。次で3ヶ月連続で観ることになります。やっぱりKAZUMAは最高です。観客動員がちょうどいいです。応援したくなるツボです。名古屋から全国的に追っかけしてるおばさんが、もう病気ですと言ってました。贔屓の方ですので将くんと気さくに話してました。9月から東京に行くので応援してください。ではまた。お元気で。

> 浪速のファン様
いつもありがとうございます。
KAZUMAの舞台を心底楽しまれているようですね! 好きな劇団が地元に来て通う…これくらい幸せなことはないと思います。9月の東京公演、今からそわそわと待っています。
追っかけの方も素敵ですね。もう病気です…なんて言い方に、あふれる愛情を感じます!
大衆演劇は、舞台内容はもちろん、そのファンの方の愛情深さも私は大好きです。

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