たつみ演劇BOXお芝居「明治一代女」1―白のお梅―

2013.7.27 夜の部@浅草木馬館

「明治一代女」のお梅。
役者に恋して道を外れた、愚かな女?
そのために人まで殺した、稀代の毒婦?

いいえ、この夜、辰巳小龍さんが見せてくれたお梅は。
まじめで、健気で、利発で、家族思いで、小さな体に気をいっぱいに張って、懸命に生きている女性だった。
そのお梅が、カタカタ回る残酷な運命の歯車に乗って、暗いところへ転落していく。

写真・辰巳小龍さん(当日舞踊ショーより)


27日に、小龍さん主演で小泉版「明治一代女」をやる!
その予告を聞いたときから、もう私は浮足立っていて。
当日夜の浅草、隅田川花火大会に沸く人込みをかき分けて、一目散に木馬館へと駆けつけたのです。

物語が進むにつれ、舞台に現れる小龍さんの着物の色が変わっていく。
まるで、少しずつ狂っていくお梅の運命が託されているかのように。

◆序盤・白のお梅
芸者・お梅は、旦那の一人も取らず、「男嫌い」として通ってきた。
まじめで潔白な性格なので、そもそも、好きで芸者になったわけではない。
芸者を務めてきたのはひとえに、年老いた母(辰巳龍子さん)と弟の武彦(小泉マサトさん)を身一つで養い、なおかつ武彦を学舎へ通わせているからだ。

そんなお梅に、初めての浮いた噂。
役者の沢村仙枝(小泉ダイヤさん)から、自分が誤って割ってしまった詫びにと、新しい三味線を贈られる。
「別にねぇ、(仙枝とは)変な仲じゃあないんだよ」
と苦笑混じりに噂を否定しながらも、
「そりゃあね…あんな素敵な人だもの…」
座敷支度の最中、お梅はぽつり本音を零す。

しかし、仙枝とお梅の噂に怒り心頭になっていたのが、大物芸者の秀吉(小泉たつみ座長)だ。
秀吉は以前、仙枝の情人だったのだ。

写真・小泉たつみ座長(当日舞踊ショーより)


仙枝を取られたことで、お梅へのいびりが始まる。
秀吉が舞う際に、お梅が地方を務めて三味線を弾けば、わざとつまずいてみせる。
「三味線がツボを外していたんじゃあ、あたしはもう踊れません」
「いくらいい三味線でも、弾くほうの腕が足りやしない。この秀吉姐さんの地方を務めるんなら、もう2、3年、修行してからだね」
客の前で、そんな嫌味を言ったりする。
たつみ座長の涼しげな目元が、このときばかりは冷酷に凍てついていた。

一方で、嫌味にじっと耐えているお梅の健気さ、不憫さといったら。
小龍さんの、眉をきゅっと寄せて唇を噛みしめた表情。
幼子が必死に泣くのをこらえているような風情に、胸を衝かれる。

序盤の面白さは、秀吉とお梅の対比にあったと思う。
秀吉は、赤を基調にした着物をまとって艶やか。
加えて、大物芸者らしく、ものの語り口調は強い。
「お梅さん、目上の者の前を通るときには、あいすいませんと謝るのが筋だろう!」
「いつからあんたは、会釈であたしの前を通れるほど偉くなったんだい」
たつみ座長が、かなり楽しそうに悪女を演じるものだから、客席からは大笑いを取っていたけど…(笑)
たつみ座長の長身も相まって、「秀吉姐さん」はたとえるなら大ぶりの菖蒲の花。

対して、お梅の座敷用の衣装は純白だ。
芸者稼業にありながら、凛と矜持を守ってきた、これまでの清廉な生き様を表す色。
「あい…すみません。堪忍してください」
涙を湛えて秀吉に手を突く姿は、名前の通り、白梅のささやくような可愛らしさ。
さらにお梅の白い着物には、ちゃんと梅の花の模様が入っている。
こういう細かいところが個人的にはたまらない演出!

加えて、小龍さん版お梅は、気丈だけど泣き上戸でもある。
秀吉にいじめられ、はたはたと目元を押さえる姿の可憐さが、この人を助けてあげたいと思わせる。

仙枝は、もうすぐ三代目・津の国屋仙之助を襲名することになっていた。
それを知っていて、秀吉はお梅を挑発する。
「お梅さんのことだ、百円や二百円じゃくだらない、千円二千円かけて、さぞ立派な襲名披露ができるんだろうね」
お梅の女の意地が、売り言葉に買い言葉を返させた。
「このお梅の力で、誰より立派な襲名披露にしてみせるよ」

だが実際には、金などあるはずもない。
途方にくれたお梅に、「千円、俺に用立てさせていただけませんか」と言ってきた男がいた。
お梅の身の回りの世話をしてきた、箱屋の巳之吉(小泉ダイヤさん・二役)だ。

「その代わりと言っちゃあなんですが、俺からも姐さんにお願いがあります」
「この襲名披露が終わったら、津の国屋とはきっぱり手を切っておくんなさい」
「そして芸者を辞めて、俺と夫婦になってほしいんです」
お梅は頷いた。
この約束が悲劇を生む。

時節は年の瀬。
純白のお梅の歩む先は、血の色の道行き。

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