たつみ演劇BOXお芝居「小豆島」

2013.7.20 昼の部・夜の部@浅草木馬館

木馬館の座席の間、ずらーり並んだ補助椅子。
いつも週末の木馬館は混み合うけど、この日のお昼の部はちょっと見ないくらいに満杯!
客席の熱気が舞台上にも伝わるのか、小泉たつみ座長の清しい笑顔が、前回にも増してたくさん見れたような気がします。

写真・小泉たつみ座長(7/20舞踊ショーより)


「小豆島」は、たつみ座長の口上によれば、「古くからどこの劇団でもよく演じられてきたお芝居」だそうな。
実際私も、昨年劇団花吹雪で観たことがあった。
(劇団花吹雪版のお外題は「兄の真心」。桜京之介座長の演技が胸にしみる名品だった)
しかしたつみ演劇BOX版において強烈なのは、たつみ座長演じる「お父さん」だった。
どうしようもなくおかしいそのキャラクターに迫る前に、まずはあらすじ。

小豆島の漁村で、兄の定吉(小泉ダイヤ座長)と妹の直江(辰巳花さん)は、両親を早くに亡くし、2人きりで生きてきた。
ある日、直江の許嫁・多三郎(嵐山瞳太郎さん)が東京から5年ぶりに帰って来る。
直江も浜の衆も喜びに沸くが、定吉一人が浮かぬ顔。

「東京には、きれいなおなごが、ごまんといるっちゅう話や」
「そんなとこで5年も東京で暮らした多三やんが、この直江といまだ結婚するつもりなはずないわ」

定吉が疑うのも無理はない。
多三郎は網元の跡取り息子で、容貌も人柄も優れている。
さらには、東京での猛勉強の末、見事医者になり、浜に病院を建てるという。
つまり、絵に描いたような立派な男なのだ。
一方直江は、純真無垢で、誰より心がきれいな女の子なんだけど。
お世辞にも美人とは言えず、頭のほうも良くはない…。

悩んだ末、定吉は多三郎の本心を確かめるため、策を練る。
「おっさん、ちょっと頼みがあるんや」
「俺と、嘘っ気の喧嘩をしてほしい」
多三郎のお父さん(小泉たつみ座長)を巻き込んで、一芝居打つのだ。

さて、このお父さん。
定吉に芝居の話を持ちかけられたときには、多三郎の到着する浜へせかせかと走っているところだった。
手作りの日本国旗を持って!
「浜ではぎょうさん迎えの人が来とるやろ。でもそこはやっぱり親や、息子に一番に見つけてもらいたくて、ゆうべ夜なべしてこの旗作ったんや」
たつみ座長が、器用に両手の旗をくるくる回し、新体操のように華麗に舞う(笑)
客席爆笑。
激しい動きに旗の一本が折れて、さらに爆笑。

お父さんはお年寄りの設定で、実際白髪の鬘を被っているものの。
濃いつけまつげのメイクに、つぶらな瞳がぱちぱち。
「多三郎は、まだ浜に着かんのか。わし、ちょっと早すぎたな」
たつみ座長の素の声とは全く異なる、ふにゃりとした高い声。
なんだか、可愛い。

見た目だけじゃなくて、動作も性格もチャーミング。
多三郎を騙すため、定吉が自分の持参するぼた餅を足蹴にしてくれと頼めば。
「芝居とはいえ、食べ物を蹴るのは嫌やなぁ~」
顔をしかめて、それでも定吉に頼まれたセリフを言いながら、軽くぼた餅を蹴る。
「こんな汚いぼた餅が食べられますか!」
ぼた餅、ぽーん。
この仕草がなんとも滑稽で、どかんと客席が笑う。

さらに、定吉に「お前とわしとは身分が違う、貧乏金持ちの身分が違うわい」というセリフを頼まれれば。
お父さんの正義感がメラメラ、つぶらな目を険しくして真剣に怒る。
「定吉お前なぁ、いい加減にせえよ!」
「わしは確かに網元や、けどそれは立場の問題や、わしは今まで貧乏金持ちなんて目で人を見たことは一度もないで!」
ほんわりした口調も荒らげて、お父さんの怒りは本気モード。
「芝居やから!嘘っ気や!」と定吉に再三突っ込まれて、ようやく静まる。
そして怪訝な表情になり、
「もしかして、わし、悪い役か?」
今更!(笑)
うん、やっぱり可愛い。

昔は、たつみ座長が定吉を演じ、お父さんの役を父・小泉のぼるさんが演じられていたそうな。
のぼるさんの「お父さん」も、波平さんみたいな鬘を被って、徹底した三枚目キャラクターだったそうな。
「受け継いでいく芝居なんですね」
たつみ座長は口上でそう語られていた。

そういえば私は大衆演劇にハマってから、古くからの演劇に詳しい方にお会いする機会があると、ちょこちょことお話を聞かせていただいているのだけど。
どの方も必ずと言っていいほど、喜劇役者「藤山寛美さん」の話題を出される。
舞台に寛美さんが登場するだけで、むやみにおかしさがこみ上げたんだそうだ。

今回「小豆島」鑑賞に同行してくれた方が、終演後に私に呟いた。
「たつみさんって、お若いのにすごいですね」
「たつみさんが舞台に出るだけで、みんな笑うでしょう。あの藤山寛美さんも、そんな感じだったらしいですよ」
それはもしかしたら、小泉のぼるさんも。
受け継いでいくお芝居――受け継がれる芸。
きっと今、私はとても贅沢な舞台を観ているのだろう。

余談だけど、今回は同行してくれた方が昼夜で異なったため、昼夜続けて同じお芝居を観た。
驚いたことに、昼の部と夜の部のわずかな間(1時間ちょっとしかない!)で、「小豆島」はブラッシュアップされていた。
お父さんはよりおかしく、定吉は気の短い熱血漢の様がより出ていて、話全体もより筋の通ったものに。
日々どころか、毎時、変化していく。進化していく。
次の週末までには、どんな進化を遂げているのだろうか?

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