劇団花吹雪お芝居「昭和枯れすすき」


2012.11.10夜の部@湯宴ランド小岩
「昭和枯れすすき」

写真・桜春之丞座長(11/10舞踊ショーより)



鳥肌が立つくらいの。
心が冷え冷えするくらいの。
怖さ。
残酷さ。
無慈悲さ。
桜春之丞座長が演じた、このお芝居の敵役に当たるヤクザの若頭のことだ。

笑いながら病人の女を蹴飛ばす。
足の爪を剥ぐ。
彼女が舌を噛んで自害すると、
「珍しいもんが見れたわ」
自分の部下が刺殺されても眉一つ動かさず、
「なかなか骨のあるやっちゃ」
涼しい顔して、なんだかホントに楽しんでるように言うのだ。

悪役、敵役。
これを演じるとき、うわめっちゃ悪い顔してるなぁ、と思う役者さんはたくさんいる。
こっちが引くくらい、悪の雰囲気を醸し出してる役者さんもいる。
登場するだけで、舞台に荒んだ空気を漂わせる役者さんもいる。
みんな、普段優しい役者さんの生命のどこに、こんな悪い顔が潜んでいるのだろう…と思うのだけど。

春之丞座長が演じていた若頭は、そのどれとも違って、怖い。
「(自害した女について)元々殺す予定やったんやないか、手間が省けてよかったわ」
あの綺麗な顔で残酷極まりないことを、お天気の話でもするみたいに飄々と言うから。
舞台に冷気が広がる。
客席の私までぞわぞわと冷える。

クライマックスは、この若頭に対して、ちっぽけな大工の直(桜京之介三代目座長)が、怒りだけで刃向かっていく。
刀を振り回して、必死に食らいついて。
まさに窮鼠猫を噛むといった感じの、無力な者の全身のあがき。
直の渾身の怒りを、巨大な残虐性が嗤いながら通せんぼするのだ。

…怖いよー…
いや凄いよ、凄いけどけっこう本気で怖いよ、この役は。この演技は。
前日に観たお芝居「兄の真心」で、春之丞座長はすごい良い人の役だっただけに…
あのときは虫も殺さないような善人に本当に見えたのに…

そんなわけで春之丞座長の芸は、なんだか奥が深そう。
あの綺麗なお顔の下に、隠した顔はいくつなのだろう。
東京にいてくれる間に、見える顔はいくつなのだろう。
底が見えない水甕をのぞきこむように。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)