近江飛龍劇団お芝居「遊侠流れ笠」

2013.6.22 夜の部@篠原演芸場

ぐいぐい前へ、ぐいぐい上へ。
風を巻き起こしながら、疾走を続ける昇り龍たち。
龍が握りしめる宝珠の中をのぞきこめば、驚くほど明るい晴天の空が見える。
先陣を切るひときわ大きな龍は、やっぱり座長・近江飛龍!

写真・近江飛龍座長(当日舞踊ショーより)

このビッグスマイル、無限にパワーが沸き出るかのようです。

近江飛龍劇団は、はるか6年前、大学生になりたてだった私が最初に観た大衆演劇の劇団さんだ。
大衆演劇を知った、一番手前のドア。
なのでどこか懐かしい気分を抱きながら、同行してくれた友人と一緒に、篠原演芸場へ向かった。

やくざもののお芝居、お外題は「遊侠流れ笠」。
老いたやくざ一家の親分(近江飛龍座長)は、腹心の代貸し(近江大輔さん)に組を乗っ取られてしまう。
かつては、子分衆皆に畏怖される親分だったのに。
「おい、老いぼれ。掃除しとけって言っただろう」
代貸しに老いぼれ呼ばわりされ、汚い格好に身をやつし、掃除を押し付けられている。
さらに代貸しの妻・おなか(轟純平さん)や子分(橘小寅丸さん)にも、馬鹿にされ、足蹴にまでされる始末。
「なんて奴だろう、この老いぼれ、あたしの名前を呼び捨てにするなんて!」
曲がった背中をおなかに座布団で叩かれる姿は、哀切極まりない。

筋を追えば、英国のリア王の物語が浮かび上がるような、<かつての栄華が枯れ落ちる>典型のお話。
しかし、どう演じても悲劇になりそうな筋書きを、龍の飛ぶ空に放り投げてみたならば。
けたたましい、笑い声ばかりが降って来るからすごい!

飛龍座長が演じる親分は、悲惨な立場にあるはずなのに、とにかく可笑しいのだ。
まず、大仰にひん剥かれる目とへの字を描く唇。
歌舞伎役者が方向を間違えて見得を切ったような表情とメイクが、じわじわと笑いのツボを刺激する。

親分のキャラクターも、哀れっぽさを感じさせないたくましさ。
代貸しに座布団で叩かれれば、親分は座布団をひっつかみ、機敏な動きで後ろからすぱぁん!とやり返す。
やりやがったな、と代貸しが振り返ると、親分はすかさず手を震わせながら訴える。
「ああ、老いて体の自由がきかねえもんだから、ついやっちまった!」
いや、さっきものすごい機敏に動いてたけど。
代貸しが背を向ければ、親分は再び後ろから座布団つかんで、一発食らわせる。
そして限りなく哀れっぽく、
「ああ~、体の自由がきかねえもんだから、手が勝手に!」
いや、さっきすごい滑らかな動きだったけど。
親分の座布団攻撃、代貸しが怒って振り返る、「体の自由がきかねえ!」のループ。
親分の哀れさは霧散して、気がつけば私はお腹を抱えて笑っていた。

観客を巻き込むのもお手のもの。
代貸しや子分達に追いかけられ、逃げる親分は観客席へひょいとダイブ。
客席の一番奥までやって来て、
「おい、逃げるところがねえな…」
だって座長、今日は大入り、みっちり埋まってますもの。
そしてまた舞台へと走る親分。
がっしりした体躯が座椅子の間を駆け、私の真横を走り抜ける!

逃げる途中、空いていた席に座りこんで、お客さんの予約用の名札を顔に貼りつけてみせたりもする。
「親分って誰だ、俺は○○さん(名札のお名前)だ」
これには心底大笑い。

そんな飛龍座長の親分に、「若い衆、お前たちも御苦労だったな」と呼びかけられれば。
「へい!」
と観客席一体となって、楽しく元気よく返事してしまうというもの。
観劇というより、アトラクションに乗っている楽しさだ。
とにかく、座長は次に一体何をやるんだろ?ということで頭を一杯にしていたお芝居だった。

6年前、初めて観た近江飛龍劇団のお芝居が、脳裏で蘇る。
やっぱり飛龍座長が観客席の間を駆けるシーンがあり、あの大きな目がお客さんの顔を次々のぞきこんでいった。

ああそうだった、明るい龍は、賑やかな架空のほうから、この桟敷に降りて来てくれるのだ。
歌の合間にも、前列のお客さんからコーヒー缶を受け取って、
「こんな指輪はめてしもたら、めっちゃ開けづらいわ…」
きらきらしい指輪を抜いて、コーヒーをぐびりと一気飲み、ポンとお客さんに缶を渡し返す。

座長の歌に合わせて、ペンライトが揃って揺れる。
座長をはじめ全体に体格の良い座員さんたちも、二階席まで埋まったお客さんも、隣席の友人も…この夜を思い出すと、パッと笑顔のイメージが咲く。
多分私自身も、鏡を見れば満面の笑みだったのだろう。

昇り龍の飛んで行く先、いつでも快晴の天。
その下で、必ずまたお会いできるでしょう!
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)