剣戟はる駒座・不動倭さん個人舞踊「恋」

2013.5.26 昼の部ユラックス

――あなたを あなただけを いつでも見ていました――

倭さんの長い衣装の袖が、さらりひらり舞って。
想いが桟敷へ降りかかる。
この舞踊の4分半は、ユラックスの観客席ごと、紡がれる物語の中にいた。

写真・不動倭さん(5/25舞踊ショーより)
痛恨のミスでこの舞踊のときのお写真が消えてしまったので、他のお写真からイメージ的に近いものを…


普段お芝居の感想のみを細々と書いておりますが。
私はもちろん舞踊ショーも大好き!です。
あの豪華舞踊絵巻の時間が、至福・眼福でなくて何でありましょうか…

特に、物語をなぞるような舞踊。
歌詞の中の語り手が、役者さんの身体と表情に憑依して。
その喜怒哀楽に、ついと引き込まれるような舞踊。
たった5分程度の踊りでも、一本のお芝居を観たかのような、陶然とした感動が胸に残る。

最近観た中で、どうしても特筆しておきたい舞踊が、不動倭さんの「恋」(中孝介)。
報われなかった片恋の切ない歌だ。

源氏物語千年紀のアニメのテーマ曲だったためか、平安貴族風の衣装で出てきた倭さん。

――せめて一度くらい 振り向いて欲しかった
せめて風のように ただそばにいたかった――

歌の出だしが流れた瞬間、さぁっと舞台景色が変わった。
驚くくらい自然に、水が流れるように頭の中に流れこんできた。
恋する女性に想いを伝えられずに、相手を陰から見つめる青年の情景。

演じながら踊る、倭さんの表情。
何かを語ろうとしているようで、でも語りかけてくることはなく。
切ない想いが、言葉になる直前でたち消える。
後に残るのは、ささやくような舞だけ。

――咲かないつぼみのように 報われない恋でした――

この歌詞の語り手は、今目の前で踊っている倭さんに憑依しているキャラクターは。
きっと、恋する相手に自分をうまく見せることなんて出来なかったんだろうな。
もしかしたら、器用に恋敵に出し抜かれたりもしたのかもしれない。
恋うる心を、こらえて、ひたすらこらえて…

これはお芝居じゃあないのに。
そんな想像が止まらなくなってしまうくらい、脳裏におのずと浮かぶのはハッキリとした光景だった。

以前も書いた通り、倭さんの魅せてくれるたくさんの表情の底には、素朴な優しさがひと固まり。
素のご気性が、透き通って見えているのか。
送り出しの際、聞こえてくる声の明るさにふと振り返ると、ファンの方に丁寧に応じている倭さんのお姿があったりした。

歌の物語と役者さんの輪郭が、混じり合って溶け合って。

――あなたを あなただけを 思って啼き続けた――
――飛べない小鳥のように行き場のない恋でした――

心は透き通る。
想いは降りかかる。

幸運にも観ることができた4分半の珠玉。
この日以来、「恋」は一日一回は聴かないと気がすまない曲になりました。
通勤中でも、自室でも、イヤホンを通してイントロが流れた瞬間、頭はいつだってユラックスの舞台へ。

思い出すのはいつも、眩しい舞台で見つけた情景。
さらりひらり、舞い降る想い。



…しかし、お写真が失われたのが重ね重ね悔しい…。
そして舞踊の記事はお芝居にもまして、書くのがむつかしいなぁ。
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