剣戟はる駒座お芝居「残月二本棒」

2013.5.25 昼の部@ユラックス

「お前、ホントは刀使えないだろ?その腰の刀抜いたの見たことねえもん!」
足を撃たれていても、敵の白刃にぐるりと囲まれて絶体絶命でも。
津川竜座長演じる二本棒は、涼しい顔で挑発してみせる。

ピンチをジョークでまぜっかえす。
この感じ、どっかで観たことがあるような…。

写真・津川竜座長(当日舞踊ショーより)


このお芝居は、なんと言っても主人公の旅鴉・二本棒の飄々としたキャラクター!
雷一家に5年も草鞋を脱いでいたけれど、哀れな姉妹を庇ったことで、世話になった一家に敵視される羽目になる。
雷一家のもう一人の食客・青柳四朗(勝小虎さん)に拳銃を向けられ、命の危機。
でも、二本棒はけろりと喧嘩を売ってみせるのだ。

「青柳お前、いっつも何かあるとすぐ拳銃に頼って。本当は刀抜けねえんだろ!」

あくまでも軽ぅく、いたずらっ子のように。
青柳は当然激怒する。
「そこまで言うなら、刀で勝負してやろう…」
拳銃を地に捨てさせた瞬間、二本棒の戦略勝ちだ。
ひらりひらりと軽妙な立ち回りの後、晴れ晴れと立っているのは当然二本棒。

…あ、わかった。既視感の答え。
映画『明日に向かって撃て!』のブッチだ。
粋が炸裂していたポール・ニューマンだぁ。

かの傑作が銀幕に乗った時代には生まれ損ねたけど。
DVDで出会った、からりと明るいアメリカの風とウィットに満ちた会話。
「残月二本棒」の竜座長の笑顔を観ていると、どうも頭に浮かぶのは若きニューマン。
はる駒座の演技がまとう垢抜け感が、どこかでアメリカン・ニューシネマに繋がっているのやも。

たとえば、二本棒の初登場のシーン。
雷一家の親分(勝龍冶さん)と、親分に狙われる姉妹(宝華弥寿さんと宝華紗宮子さん)が、悲壮感漂う中で博打をやらされている。
勝てば、姉妹の借金三十両がチャラになる。
しかし負ければ、まだ幼い妹の体を差し出さなければいけない。

だが実際は、いかさま賭博なのだ。
床下に潜む手下(勝彪華さん)が賽の目をいじって、親分が勝つように変えているのだから。

そこに「やあやあ、何やってんだい!」と二本棒が乱入。
竜座長が、底抜けに明るい空気をポンと開かせる。
「なあ、賽を振る役、俺にやらせてくれよ、いいだろ」
と、手下の持つ賽を楽しげにぶんどる。
いかさまを邪魔された親分と手下たちから、殺気だった目を突き刺すように向けられても。
「こういうの一回やってみたかったんだよね~」
まるでただ遊んでいるように、二本棒はうきうきと場の中央にあぐらをかく。

ニューマン演じるブッチが、敵に囲まれて、死がすぐそこまで迫っているときも。
「この次はオーストラリアに行こうぜ。なんたって言葉が通じる」
なぁんて、希望溢れるジョークを飛ばしていた横顔を思い出すのだ。

そう、二本棒の物言いは、いつもどこかジョーク混じり。
賭博の進行役を務めているときは、床に伏せた賽の目に、ニヤリと笑んで囁きかける。
「娘が丁だ!で、親分が半。さぁ賽の目よ、ここが根性の見せどころだぞ?お前の出方次第で、哀れな娘が体を差し出さなきゃあならなくなる」
親分を博打に負けさせたことを恨まれ、5年居た一家から出て行けと言われた時も、仕方ねえなあと肩をすくめて。
「親分さん、じゃあ、世話になったな。体大事にしろよ」
青柳に足を撃たれた後も、びっこ引き引き、雷一家までやってきて。
「俺は、借りたもんはしっかり返す主義なんでね!」

二本棒は姉妹を助け、雷一家を始末し、再び旅鴉。
ただでさえ粋たっぷりの竜座長が演じるから、痛快極まりない。
「お嬢さん、あんたの勝ちだ!ツキが回ってきたねぇ」
セリフ一つ、動作一つに滲む、あの洒脱感は一体何なのか。

ユラックスの男性スタッフがこんもりと持ってくれた、クッキー&クリームのアイスにかぶりつきながら。
舞台から届いたのは、青春映画のような気持ちのいい乾いた風だった。
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