劇団KAZUMAお芝居「文七元結」

2013.5.5@夢劇場

藤美一馬座長の、不甲斐ないけど憎めない三枚目役。
華原涼さんの、ぴりりと痺れる迫力の大店の旦那役。
冴刃竜也さんと一馬座長の、可笑しいけどなんだか涙が出てくる夜の吾妻橋でのやり取り。
…この喜劇の見どころを数えあげればまだまだ。
劇団KAZUMAの魅力を丸ごと詰めて、舞台の上で勢いよく開けたなら。
夢桟敷に転がってくるのは、なんと明るい、なんと優しい色ばかり。

そんなスペシャルな箱です、3回目の鑑賞となる「文七元結」!
昨年7月、浅草木馬館で劇団KAZUMAに初めて出会った1回目の鑑賞。
今年の2月、山口遠征での2回目の鑑賞(そのときの記事)。

一緒に遠征した仲間は、このお芝居は初鑑賞だった。
観終えて一言、「今まで観たお芝居で一番好き!」
うん、うん、観ている間、隣席から笑い声が絶えなかったもの。

主人公の長兵衛(藤美一馬座長)ありきのお芝居なのはもちろんだけど。
今回はちょっと視点を変えて、柚姫将さん演じる長兵衛の女房役について話そうと思います。

写真・柚姫将さん(当日舞踊ショーより)


長兵衛の奥さんは、観る回数を重ねるごとに、長兵衛以上に味が染みてくるキャラクター。
夫の博打癖を咎めたり、娘のおひさ(霞ゆうかさん)の行方を心配したり、悩みの種が尽きないのでいつもぷりぷり怒っている。

「あんた、娘がいなくなったっていうときに、よく博打なんて行ってられるね」
「おひさはそんな子じゃないよ、あの子はあたしの子だよ」
「着物なんてないよ、借金のせいで全部売っちまったもの!誰のせいだと思ってるんだい!」

噛みつくようにまくし立てているのに。
将さんの温かみのある声のせいか、ちょっとおきゃんな感じがする。
貧乏暮らしを表すように、地味な着物で髪飾りの一つもなくても。
「ああ~、あの人ったらどこ行ったんだろ、何してるんだろ、こんなときに!」
眉をひそめて、せわしなく動き回りながら夫を待つ姿が、大層可愛いのです。

そして女房役最大の見せ場と言ったら、次の夫婦喧嘩。

「お金はどうしたのよお金は!」
「くれてやったんだよ!」
「誰に、誰にくれてやったの!」
「知らねえ!」
「知らないのになんでくれてやるのよ!」
「死ぬって言ってたからだよ!」
「嘘ばっかり、お金はどうしたのよお金は!」

借金を返すための大事な大事な五十両を、見ず知らずの青年・文七(冴刃竜也さん)の自殺を止めるためにくれてやった。
そんな長兵衛の話を、どうやったって奥さんは信じない。
「嘘ばっかり言って、どうせあんた、本当はまた博打で使っちまったんだろ。本当のことを言えってんだい、こん畜生め!」
そしてまた、「お金はどうしたのよお金は」が始まる。
繰り返し繰り返し、しかもリピートのたんびに加速していくのがたまらなく可笑しい(将さん、よく舌が回るなぁ…)。

「昨夜からこの繰り返しで、寝てねえんだよ…!」
と心底疲れ果てた風に長兵衛がぼやけば、客席はこの日一番の大笑いに包まれる。

でも。
この奥さんの一番面白いポイントは、一見まともなようでいて、実は長兵衛と本質的にそっくりなんじゃないかと思わせるところ。

たとえば上記のやり取りの最中、文七と文七の奉公先の旦那さん(龍美佑馬さん)が訪れる。
お客さんなんだから、2つしかない座布団を差し出すのが当然と思いきや。
長兵衛と奥さんの手が、ひょいと同時に動く。
夫婦は座布団をあっさり自分たちの下へ引き寄せ、座る場所を無くした旦那さんは畳へ滑ってずるり!
長兵衛いわく、
「俺の家なんだから俺が座るんだよ、当然だろが」
いつも夫をたしなめている奥さん、このときは特に何も言わず、当たり前のように座布団に座っているのです。
そこはいいんだ?!
夫と同じ考えなんだ?!

そして長兵衛が”くれてやった”五十両を返してもらう場面。
長兵衛は本当にありがたそうに、泣きだしそうな表情と声になって。
「どうも、すみません~ありがとうございます!」
と深々頭を下げる。
自分があげたお金を返してもらうだけなのに。
見返りだとか恩に着せるだとか、そんな考え、かけらもない。

私はこの場面の一馬座長の表情が大好きなんだけど。
よく見ると、傍らにいる将さんもまったく同じ表情をしているのだ。

本当にありがたくって仕方がない、そんな声が聞こえてきそうな表情。
ただでさえ優しげな将さんの眉が、ハの字の形になっている。
そして夫と一緒に、畳に手をついて頭を下げる。

いくら普段喧嘩ばかりでも、この夫婦は性の根っこが同じなんだろうなぁ。
そんな想像がかきたてられるような女房役。
劇団KAZUMAの至芸・「文七元結」には、絶対外せないキャラクターです。


夢劇場はお昼の公演しかないので、夜は観劇仲間と観光気分で宮島をぶらりぶらり。
明日で楽しい遠征も終わり、劇団KAZUMAとお別れだと思うと、私はちょっとセンチメンタル。
宮島にたくさんいる鹿たちと、ぼんやり見つめ合ったりしてましたが…

翌日、最終日のお芝居は、心に突き刺さるものだった。
このお芝居が福山で観られてよかった。
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