劇団KAZUMAお芝居「浅間の喜太郎」

2013.5.4@夢劇場

劇団KAZUMAのお芝居の温もりの何分の一かは、
龍美佑馬さんの名・老け役によるものだと思います。

写真・龍美佑馬さん(当日舞踊ショーより)


ほとんどのお芝居で老け役を演じられる佑馬さん。
今回の「浅間の喜太郎」では、主人公の喜太郎(藤美一馬座長)のとっつぁんの役だった。

旅のやくざだった一人息子・喜太郎が、ようやく故郷に帰ってきた。
けれど頑固なとっつぁんは、やくざに憧れて飛び出した息子を決して許さない。

「おっかあは、喜太郎に会いたい、喜太郎に会いたいと言いながら…泣き暮らした挙句、死んでしもうたぞ!」

さらに、喜太郎がやくざの道にならって山根の親分(藤美真の助さん)を斬ったと聞けば。
佑馬さんの本来柔和な印象の目が、ぎりりと吊り上がって怒鳴り声が響く。

「お前は人斬りまでしたのか。お前も死んで、斬った親分さんにあの世で謝って来い」
「お前と親子名乗りなんぞ、誰がするか!」

片田舎にあって、痺れるように芯の太い百姓の人間像。
息子の愚行に、とっつぁんは怒り心頭なのだけれど。
喜太郎がいくら頼んでも、親子だなんて認めないのだけれど。

佑馬さんが演じると、ひとつひとつのセリフに、怒気を込めた表情に。
隠しきれない息子への愛情が尾を引く。
“頑固な爺さん”キャラクターに収まりきらない、情の深さが舞台にたゆたう。
それは佑馬さん独特の、ものやわらかな発声の仕方のためかなと思ったり。

たとえば、喜太郎に仇討ちをすべく、山根の若親分(華原涼さん)が喜太郎の故郷まで追ってきた後の場面。
仇討ちを受けるため、家を後にしようとする息子に、とっつぁんが背後から投げかけるセリフ。

「息子に出してやる飯はないが、赤の他人になら食わせる飯くらいはある」。

もの言いたげな眼差しを伏せながら。
ゆっくりしたテンポで、一音をなぞるように。
――あかの、たにんになら――
柔らかな音が、トコン、と観ている私の胸に落ちる。

最終的にとっつぁんは、喜太郎と親子名乗りをする。
そうしないと喜太郎を斬ると、山根の若親分に脅されたためだ。
「ま、待ってください、わかりました、親子名乗りを致します」
「喜太郎はわしの、たった一人の息子なんです」
息子の命が危うくなれば、今までの強靭な態度と打って変わり、若親分の前で狼狽する姿の弱々しさ。
意固地な物言いの向こうに押し込めた、年老いた父親の切ないまでの愛情が、この場面ではらりと解かれる。

人情劇の模様はラストにかけて、からりと爽やかに晴れていく。
親子名乗りを出来た喜太郎に、とっつぁんはひょいと背負われて。
満足げに笑みを浮かべ、観客席に呼びかける。
「息子を持つなら、こういう孝行息子を持つんですよ!」
笑いと頷きに満たされて、終幕。

それにしたって元・警察官だとお聞きする骨太の体躯が、お芝居となるとどうしてこんなに老け役にはまるのだろう。
舞踊ショーで男前ぶりを如何なく発揮するのを観るたび、不思議です。

五月は五日、丈夫に相応しい菖蒲の節句にお誕生日を迎えられた佑馬さん。
この遠征中も、佑馬さんファンと思しきお客さんから、愛情のこもった贈りものやお花が舞台に上げられるのを目にした。
佑馬さんが高い背を折って、丁寧にそれらを受け取るお姿を見つめていたら。
ニンの優しさの拠り所も、見えるような気がしました。

最近すっかり更新が遅れ気味で申し訳ない限りですが…
本格的な夏が訪れてしまう前に、新緑の季節に出逢ったお芝居を駆け足で書き残しておかねば。
夢劇場編3日目は、劇団KAZUMAの珠玉のお芝居!
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