剣戟はる駒座お芝居「はぐれ鴉」

2013.4.14昼の部@篠原演芸場

日曜日、前日土曜の昼夜鑑賞に続けての十条行きだったので、まさにはる駒座漬けの週末を過ごせました。
そして行くたびにぎっしりと満席感の増す篠原演芸場。
ただでさえ魅了される役者さんたちだけれども。
一杯の観客席の前では特に、その輝きはとんでもなく眩しい!

「はぐれ鴉」、鴉と付くからにはヤクザのお話。

津川竜座長演じる主人公の渡り鳥(役名を失念してしまった…)は、数年ぶりに故郷の街に戻って来た。
かつての弟分・新吉(不動倭さん)に再会するも、新吉は盲目になっていた。
「この目を治すにはな、百両要るっていうんだ」
「心配するな、今は百両ないが、必ず俺が治してやる」
そう約束し、兄弟分の絆が戻ったのも束の間。

「奴がいないなら、弟分を連れてくまでだ」
主人公を目障りに思う敵の組が、草鞋を脱いでいる食客(勝小虎さん)に依頼して、新吉を連れ去る。
新吉の面倒を見ている娘・おさと(晃大洋さん)と一緒に、必死に駆けつけるも時遅し。
哀れ、新吉は斬られた後だった。
主人公は悲しみこらえ、弟分の敵討ちに挑む。

鮮やかな水彩画のごとく。
各々のキャラクターの異なる色が、舞台にこんなに滲むとは。
「兄貴に、おさとちゃんと仲良くしてほしいんだよ」
倭さん演じる盲目の新吉は、その喋り口に気の優しさが滲んで、心に哀れだったり。
「俺はお前に負けたんだ…好きに殺せ」
小虎さん演じる食客は、敵役ながら透明な清水のような潔さだったり。

でも最も強烈な色彩を残していったのは、なんと言っても洋さん演じる「おさとちゃん」ですよ!

写真・晃大洋さん(4/14舞踊ショーより)


このお芝居の一番の見せ場は、終盤の派手な立ち回りではなく。
初対面の主人公とおさとちゃんの喧嘩シーンだと思う。

おさとちゃんは、兄貴分がいなくなってからずっと、盲目の新吉の身の回りの世話をしてきた。
新吉を数年も放ったらかしにしていた主人公への態度は、そりゃあ冷たい。
「あんたがいない間、あたしがねぇ、ずーっと新さんの面倒見てきたのよ!」
「新さん見捨てといて、今さら何なんだ?何が兄貴だ?ああ?」
百戦錬磨の渡り鳥も、たじたじとしてしまうほどの迫力。
でも大好きな新吉の前では別人だ。
「新さん、怖かった~」
「何なの、あの人~」
声音が変わる口調も変わる、ああ乙女だなぁ。

主人公も負けずと反撃はする。
「新吉お前、見えてないからわからねぇだろうけどな、ロクな女じゃねぇぞこいつは」
おさとちゃんをあの手この手で家の外に追い出すんだけども。
「何するんだよ!」
おさとちゃんは、戸ごと力任せに押して押して押して…
ガコッとついに戸が取れてしまい、勝者はおさとちゃん!
(しかし、戸を挟んで押し合う竜座長・洋さん御夫婦の光景は実におかしかった)

「女はなぁ、強くなきゃあ生きていけねぇんだよ!」
このセリフには会場の女性陣から大拍手が!
お芝居の中のキャラクターへの拍手なのか、それとも洋さんという役者さんへの共感なのか。
何にしろ私も、もちろん思い切り手を打ち合わせておりました。

でも、冷静に考えれば。
盲目の赤の他人の面倒を何年も見るっていうのは、並大抵のことじゃあない。
おさとちゃんの登場シーンは、新吉の部屋を掃除する姿だ。
かいがいしく、パタパタと障子にはたきをかける後ろ姿。
その可愛さ、健気さ。
「新さん、お帰りなさい!」
強さ逞しさ、その一方で新吉に注ぐ愛情深さ。

だから最後、おさとちゃんの退場の場面では悲痛な思いに胸を絞られた。
大事な新吉の命が、あえなく奪われたと聞かされた瞬間。
洋さんの大きな瞳がぶるぶる震え、かぶりが振られる。
「新さんが…嘘でしょ、新さんー!」
そして新吉の亡骸へ向かって、ふらふらと舞台袖に消える。

この日席を並べた友人は、観劇後に「おさとちゃん役の女優さんが良かった」としきり。
はる駒座のお芝居の垢抜けた風合いは、普段大衆演劇を観ない彼女からも笑いと感動をしっかり引き出したようで。
大衆演劇の素晴らしさを同世代の友人に知ってもらえると、もう私はそれだけで嬉しくなってしまう。

卯月の十条の昼と夜、舞台を染める色彩は無限の組み合わせ。
まだまだ観足りない、味わい足りない。
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