剣戟はる駒座お芝居「一六三八 駕籠屋仁義」

2013.4.9 夜の部@篠原演芸場

貼り出してあった「9日(火) 女形大会」の文字に引き寄せられて、平日の退勤後に駆けつけた篠原演芸場。
3部・舞踊ショーは、期待以上に豪華絢爛絵巻のごとく、すっかり見惚れた。
その一方で、この夜の2部・お芝居は、ショーとのギャップ甚だしい三枚目喜劇!
竜座長・小虎さん・倭さん。
この御三方の演技の熟達っぷりを、とことん腹の底まで味わいました。

写真・津川竜座長(4/9舞踊ショー 女形大会より)
粋という言葉を生身に映し出すようだ。


写真・勝小虎さん
立ち役と印象が最も変わり、ほろりと柔和に溶けるような女形でした。


写真・不動倭さん
童女のような健気さが覗くから、倭さんの女形は不思議。


さて、いつも通りお芝居について綴ります。
駕籠屋の親方(不動倭さん)の家に、2件の泊まり客がある。
一人は、恩あるかつての奉公先の息子・清三郎(津川隼さん)。
いま一人は、父の仇討ちを志す旅人・新十郎(津川鶫汀さん)。
新十郎は怒りをこめて素性を語る。
「私の父は、役人の汚職を咎めたところ、その役人に逆恨みされて斬られたのです」
だが、親方は恐ろしい事実に気づいてしまう。
その役人、つまり新十郎の仇討ちの相手こそ、清三郎なのだということに…。

「大恩人の旦那様のせがれは、裏切れねぇなあ…」
散々悩んだ挙句、結局親方が選んだのは昔の恩。
新十郎に勧めた酒に、薬を盛って眠らせる。
あとは山の上で待ち受ける清三郎が、ばっさりと新十郎を斬ればいいだけだ。

このお芝居はここからが本題!
眠ってしまった新十郎を、誰が、どうやって、清三郎のもとまで運ぶか?
「今日はウチの駕籠屋は休み…残ってるのは一六・三八の阿保コンビだけか」
親方が不安げに、それでも「おおい、仕事だ!」と呼べば。
満を持してようやく登場、駕籠屋の兄弟分、タイトルロールの一六・三八(津川竜座長・勝小虎さん)。

悔やまれるのは、主人公コンビのうち、どっちが一六でどっちが三八なのか最後まで正確にわからなかったこと…(互いに兄弟としか呼ばないんだもの)
とりあえず仮に竜座長の役を一六、小虎さんの役を三八としておこう。

親方には「阿呆コンビ」でまとめられていたけど、一六と三八それぞれのキャラクターは、しっかり異なる色合いで立っている。

まず一六はちゃきちゃきとよく回る口、すばしっこそうな瞳。
親方から命じられた新十郎を運ぶ仕事にも、
「行くのやだよ、だって今日休みだもん」
「月にたった一度しかない休みに、なんで働かなきゃいけないの。休みの日くらい好きなように寝てたいの」
と、あっさり子供のように文句を垂れる。
褒美として金一両・もう一日の休みを提案されれば目を光らせて、
「一両くれて、一両とは別にお休みもあるんだよね?」
と念押し。
竜座長のコミカルな面が前面に出ていた。

一方、三八はあまり喋らず、瞳がとろんとどこか眠たげなキャラクター。
「お前はなんか喋れ!」
と苛立った親方に怒鳴られて、とろぉんと半笑い。
小虎さんの精悍な顔立ちに、この表情がふいとハマるのが不思議です。
すばしっこそうな一六・のんびり飄々とした三八の「空気感の差」、こういうのがサラッと舞台に差し出されるところが凄いと思う。

それでもって駕籠屋コンビは、眠らされて転がされた新十郎を見て、重大なことを思い出す。
「なぁ兄弟、このお方は、3年前俺達がスリやってた頃…」
「そんなことはやめろ、真面目に働くのが人の道だと説教してくださった上、ポンとお金まで下さった、あの旅のお方だ」
「大恩人じゃねえか!」
「今こそ恩返しのとき!」

そこで2人が思いついたのは。
「眠り薬の効き目が切れるまで、できるだけゆっくり、ゆーっくり準備してやろう」

最大の見どころは、出発を引き延ばす一六・三八コンビと、急く親方の掛け合い。
一六が茶目っ気込めて言う。
「この人を運ぶって言っても、このまま担いでいったんじゃあ、人に見られたら疑われちまう。必要でしょ、身支度」
そして一六は、奥の部屋から「順番に」「一つずつ」(もちろん草履、足袋は片方ずつだ笑)道具を持って来る。
「なんでいっぺんに持ってこないんだよ!」
親方の怒鳴り声もなんのその。
ようやく全ての道具を持って来た、と思ったところで。
「じゃ、次は俺が行ってきます」
と呑気に立ち上がる三八にずっこける親方。
「一緒に行け、一緒に!」
ですよね。

と思えば、
「この仕事もなぁ、いつまでも続けらんないよな。若いうちはいいけど、年取るだろ。体がきつくなるだろ」
「俺、将来は駕籠屋を辞めて、あれやるんだ。魚屋」
「いや、食べ物は難しい。俺はあれだ。傘屋」
すっとぼけた風に、今の状況と全然関係ない話を始める2人。
親方もついつい乗せられる。
「あのなぁ、お前たち、簡単に辞めるとか言うな。職を変えるっていうのは大変なことなんだぞ。俺はかつて奉公していて…」
と、ひとしきり昔話。
「親方、苦労したんですねぇ」
とヨイショする一六・三八。
乗せられまくった親方は、気持ちよく得意の歌まで歌わされてから。
「違う!ちっがーう!なんで俺が歌わなきゃいけないの!」
ですよね。
(しかしこのお芝居の倭さんはよく叫んでいた笑)

竜座長・小虎さん・倭さん、舞台の上を飛び交う、御三方の言葉のテンポの良さといったら!
セリフの洪水は舞台をうねって走って、観客席の私の耳までするすると心地よく流れこむ。
その流れに身を巻き取られるように、声に出して笑っておりました。

たっぷり笑えば、仕事の疲れも吹き飛ぶもの。
だから退勤後に篠原演芸場にまた行ける日はないかと、ついスケジュールと睨めっこしてしまうのだなぁ。
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