剣戟はる駒座お芝居「びびり剣法」


2013.4.6 昼の部@篠原演芸場

4月最初の土曜日、お江戸の空は荒れ模様でも、冷たい雨が十条商店街に注いでいても。
篠原演芸場の中は、温かな笑いがとろけて春の陽だまり。
喜劇「びびり剣法」には、ほのぼのという言葉がぴったり。
劇全体を包み込むように響く、ぴーひょろろ…という鳥の声のせいなのか。
それとも、中心人物を演じた竜座長と倭さんの醸し出す、心深さのせいなのかな?

写真・津川竜座長(4/6舞踊ショーより)


写真・不動倭さん(4/6舞踊ショーより)


物語の軸は2人の侍の友情。
一人はめちゃめちゃ弱くて臆病な侍・青江源四朗(津川竜座長)。
いま一人は剣の腕前優れ、名のある剣豪を打ち倒したいと願う侍・壇ノ浦団兵衛(不動倭さん)。

空腹で死にそうだった団兵衛に、源四朗が握り飯をあげたことで絆が生まれる。
「この壇ノ浦団兵衛は、恩を忘れない男だ!」
感激に固く目をつむりながら、この上なく美味しそうにおにぎりを頬張る団兵衛。
むしゃむしゃもぐもぐ、豪快な食べっぷり。
喧嘩を売って来た役人(津川鶫汀さん)を、おにぎり片手に斬ったりもして(!)。
刀を鞘に収める前に、手に残った米粒ぺろり。

倭さんの演技の多面鏡は、この日は格別大きく開いて。
なんとも豪胆、気持ちのいい武士像が現れていた。

団兵衛は願い叶って、剣豪・伊藤一刀斎(勝龍冶さん)を打ち果たす。
ところが団兵衛は、足を滑らせて崖の下。
一刀斎の遺体とともに残されたのは、たまたま居合わせた源四朗!
一刀斎にびびり、刀を抜いてぷるぷる震えていたところを、
藩の家老(晃大洋さん)に目撃されたことで、大いなる誤解が生まれる。
「あの伊藤一刀斎を倒すとは!ぜひ娘の婿になってくだされ!」

話は家老の娘婿だけじゃ収まらない。
「源四朗殿に藩の剣術指南役になっていただきたい」
「そしてゆくゆくは、わしの跡を継いで城内家老に…」
どんどん一人歩きする、源四朗の強さ幻想。

それと言うのも、源四朗がきっぱりと誤解だと言えないせいだ。
この弱き侍は、心優しさの半面、誘惑に弱い。
家老の娘・おきぬ(千晃ららさん)の美しさにくらくら。
「おきぬどのに心底惚れてしまった…」
「好きで好きで好きで好きでたまらん!」
なのでずるずる、誤解を解く日は先延ばし。
戸惑いながらも家老の屋敷に留まっている。

竜座長のおろおろとした眼差し、気弱さが滲むセリフ回し。
普段の粋を絵に描いたような持ち味が引っ込んで、こういうキャラクターも絶妙に似合うから不思議。

クライマックスは、源四朗と団兵衛の、御前試合での再会だ。
伊藤一刀斎を斬った手柄を奪われて、団兵衛は怒り心頭だったものの。
相手はかつての恩のある友。
しかも惚れたおきぬの前で恥をかきたくないと、困り果てているようだ。

そこで団兵衛は、双方が得をするように目論見を立てる。
「試合にはお主を勝たせてやる」
「その代わり、わしを剣術指南役として殿に推薦してくれ」

ああ、確かにこれならwin-win。
ありがたがる源四朗に、団兵衛はからりと笑う。
「わしは、恩を忘れん男だと言っただろうが!」
この場面は2人の友情に心晴れ晴れ、観ている私の胸も明るく晴れた。

降りる幕に拍手を送りつつ、ぬくぬくと満たされた顔を隣の観劇仲間と見合わせて、「面白かったねえ」。
さらには知り合ったばかりのお隣席のご婦人とも、「面白かったですねぇ」。
そしてご婦人にいただいた飴を一緒に頬張りつつ、舞踊ショーの幕開けを待つ。
私が篠原演芸場を大好きなのは、こんな風な近しさゆえかも。
舞台と観客も近いし、観客同士も近い。

ところ狭しとぎっちり並べられた、座布団と座椅子。
その観客席を、これもまたところ狭しと壁に掛けられた、大量の役者さんのタペストリーが見下ろしている。
あの畳空間の濃密さと言ったら。

木馬館から翌月篠原演芸場という鉄板コース。
個人的には篠原に来てからが、劇団の魅力の濃い味をとことんいただくお食事本番。
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