剣戟はる駒座お芝居「江戸っ子やくざ 恋の春雨」

2013.3.30 昼の部@浅草木馬館

桜が満開を迎えたと思ったら、瞬く間に葉が混じり始めたように。
あっという間に過ぎ去ってしまった弥生月、三十日は浅草千秋楽。

花冷えも花曇りもなんのその、木馬館はお客さんでみっちり!
特に遠方からいらしたご贔屓さんが多かったのか、この日は誰が出ても、
「座長!」「鶫汀!」「祀武憙!」「洋ちゃん!」
と会場からのハンチョウがきれいに決まる決まる。
聴いててとっても気持ちよかったですねー。

お芝居「江戸っ子やくざ 恋の春雨」は、千秋楽に相応しく、笑いどころも情け深さもたっぷり織り込まれた盛りだくさんの逸品。
主に笑いどころを担うのが、「はらわたの腐ったような」武士のキャラクターだ。
名は竹村。
演じるのは、晃大洋さん。
この日の洋さんは、間違いなく会場中の心をつかんで行かれました!

写真・晃大洋さん(3/30舞踊ショーより)


洋さん演じる竹村は、正直かなり最低な男。
茶店で食い逃げしといて、従業員の娘への言い訳は、
「お前が召しあがってください、どうぞ飲んでください、と誘ったのではないかー!だからわしは食いたくもないのに食ったのだ!」

幼馴染・村上(不動倭さん)が胸の病で苦しんでいるのに、
「昔、古書をまとめて買いたいというお前に貸した金があっただろ。あの金を返せ」
と言い募る。
しかも、どうやら作り話のようだ。
村上がお前に借りた覚えはないと言えば、貸しただろうが!とキレて。
あろうことか、刀でばっこんばっこんと村上を殴るのだ。
病人を!しかも古い友達を!
「労咳持ちで、武士のくせに腰には竹光か!村上、お前も落ちぶれた姿になったものだなぁ!」

訂正。
“かなり最低”じゃない、最低そのものだった…。

でも。
やってることだけなら極悪な竹村を、とんでもなくコミカルに、愛嬌交えて魅せてくれるのが洋さんならでは。

棒に寄りかかってふらふら歩む男が、幼馴染の村上だとわかった瞬間、
「村上ではないかー! さ、さ、いいからここに座れ」
棒で地面にぐーるぐーると輪を描く。
まさかその輪っかが座布団とちゃぶ台…なんだよね。

村上の苦労話を聞いた後、竹村は神妙な顔をして、
「村上よ、実はわしもこの三年、病に苦しめられておるのだ」
「お前が?」
「うむ、いぼ痔になってしまってな」
「…それと一緒にしないでもらいたいな…」
「今や互いにこんな体になってしまったなぁ」
だから一緒にしたらいかんってば。

竹村と村上の場面、観客席は笑いの渦。
もう洋さんの一挙手一投足がおかしくって仕方ない。
そして物語後半、竹村は再登場する。

芝居の本筋は、元やくざの春雨一家の兄弟分と、敵対する浅間一家の因縁にある。
クライマックスが近づき、春雨宗太(津川竜座長)、弟分の政吉(津川隼さん)、浅間一家衆と役者は揃った。
いよいよ立ち回りが始まりそうな舞台景色、シリアスモード最高潮…
そこで浅間一家親分(勝龍冶さん)が、「先生!お願いします」と一家の食客を呼ぶ。

「うむ。任せろ」
と舞台に現れたのがあの竹村だった瞬間、爆笑に包まれる客席。

「わしの剣の流派は、右は無念流、左は残念流、合わせて無念残念流だ。何も案ずることはないぞ、浅間殿」
それまでのシリアスな空気をぶち壊していく竹村。
ああ、やっぱりこのお芝居は洋さんの輝きを堪能するものだ!

そんなわけで、洋さんの三枚目役の魅力、芸達者ぶり、大爆発の千秋楽でしたが。
倭さんは前回の鑑賞に続けて、病に身も心も喰われている男の屈辱という新たな演技を見せてくれた。
浅間一家若衆の頭を演じていた小虎さんは、舞台の端のほうにいる時も、他の若衆役と眉をひそめて談義。隅々までお芝居空間が創られていた。
やっぱりはる駒座のお芝居はすごいな。
毎回胸いっぱいお腹いっぱいにさせてくれるけど、まだまだ観足りないな。

でもまだ、観れるのです。
四月は十条、篠原演芸場で!
普段の月末は去っていく劇団さんを思って寂しいもんですが、もう一カ月、はる駒座が東京にいてくれるということが嬉しくって仕方がない。

千秋楽はラストショーの幕が降りた後も、熱気に溢れたアンコール!
会場から上がる拳と手拍子と、この日の木馬館はライブハウスさながら。
私も観劇仲間と互いの興奮した顔を見合いつつ、心の底から盛り上がって盛り上がって…
あああ、楽しかった!

篠原のぐぐっと舞台に近い畳の客席から、見上げるはる駒歌舞伎はどんな煌めきなんだろう?
春爛漫、はる駒座が彩ってくれるお江戸の四月が始まります!
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