剣戟はる駒座お芝居「鷹の目鳶の目」

2013.3.24 夜の部@浅草木馬館

元祖喜劇王・曾我廼家五郎さん作の喜劇!
実は曾我廼家五郎喜劇を観るのは初めて。
一世紀近く受け継がれてきたお芝居からは、おかしさの中に、なんだか懐かしい香りが漂います。
それは中心人物を演じた、不動倭さんのニンに起因するところも大きいような?

写真・不動倭さん(3/24舞踊ショーより)
曲線がちな面差しが撮れてお気に入りの一枚。


舞台は浅草、大賑わいのほおずき市の季節。
スリの名手・隼の半次親分(不動倭さん)を、大阪から六兵衛(津川竜座長)という男が訪ねて来る。
聞けば、古い知り合いの伝吉の義理の弟だという。
伝吉には、かつて半次がイカサマ博打を暴いたことで、江戸にいられなくなり大阪へ逃れたという因縁がある。
なのに六兵衛の頼みは不可思議。

「なんとしても一人前のスリになるため、隼の親分さんに弟子入りさせていただきたいんですわ!」

普通なら怪しむところだけど。
六兵衛は四六時中ぽやーっとして、お風呂でのぼせてぶっ倒れたり、街頭で堂々仕事(=盗み)の話をしたり。
その間抜けぶりに半次はすっかり油断しきり。
にやり笑って悪だくみ。

「こんな奴を一緒に連れていたら、ほおずき市の人ごみで仕事なんてできるわけがない」
「誰も俺を怪しまない、そこがかえって好都合ってわけだ」
「この隼の半次様の腕の見せ所よ!」

財布を掠める速さは、まるで隼。
ぐるぐる回る、間抜けな鳶のような目の六兵衛とは大違い…のはず!

これまで観たはる駒座のお芝居で、倭さんは悪役の親分とか代官とか多めな印象。
普段の元気・明快極まりないお人柄と裏腹に、したたかな悪人顔を見せてくれます。
その二面性にさすが役者さんだなあ、と思いきや。
舞踊ショーの最中には、また別の表情がふと覗くことがある。

どこか翳りを含んだ仄暗さであったり。
切れるような鋭い立ち役であったり。
女形には、訴えかけるような健気さがあったり。
でも、どの表情の根底にも、素朴な優しさがひと固まり。
花形・不動倭さん、二面性どころか、こちらもあちらもと贅沢に次々開かれる、多面鏡のようです。

さて「鷹の目鳶の目」の雰囲気は、倭さんの根底に流れる優しさと、ぴたり合致していたように思う。
ぽやーっとした六兵衛には実は秘密があり(未鑑賞の方のためにここは伏せます)、
最後にうまいこと騙されたと気づいた半次は悔しがる。
布を噛んできぃーっと歯を剥く、コテコテの漫画的表現!
それが悪人なんだけど、懐かしくって可愛らしい。
むごさや凄惨さとは無縁の、思わずふふっと笑いが零れるような悪役で魅せてくれました。

「鷹の目鳶の目」、少々調べてみたら昭和4年(84年前!)の番付表に発見。
セリフ回しやテンポなんかはどんどん現代に合わせているのだろうけど。

「ええ、もう仕事にかかるんでっか!あいつでっか、あの田舎侍を狙うんでっか」
「こんな往来で、大声で仕事仕事と言うな、この阿呆!」

六兵衛と半次のすっとぼけたやり取りに、昭和初期の人々もお腹を抱えて笑ったんだろう。
時代の一つ二つ向こう側から届いても、おかしさの原型の味わいって変わらない。

毎年7月のほおずき市、私はまだ行ったことがないのだけど。
このお芝居のような賑々しさを期待して、今年はぜひ足を運んでみたいなぁ。
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