春陽座お芝居「御用晴れ晴れ街道」


2012.10.29@篠原演芸場
「御用晴れ晴れ街道」

見どころはたくさんあるけど、なんと言っても三代目座長・澤村かずまさんの演じた主人公の五助のキャラクター!
もう可愛いやら微笑ましいやら応援したくなるやら。
あの人好きのする笑顔!
うんうん、こういうキャラクターに会えるから、お芝居を観てるんだよ!

スリをしていた五助(澤村かずま三代目座長)。
十手持ち(澤村新吾初代座長)の情けと小料理屋の女中のお蔦さん(澤村かなさん)の説得で、まっとうな堅気として生きることを決意する。
一年後、二人に恩返しするため堅気になって戻って来た五助。
お蔦さんが昔の男・伊三郎(澤村心二代目座長)に脅迫されているのを目撃し、なんとか助けようとする。

ああ、やっぱり「恩」を主軸にしたお芝居は良い…
人間はこうあるべきだ、人間にこうあってほしいっていう「願い」を感じる。

このお芝居は笑ったし泣けたし全編通して大好きなんだけど、一つ、本当に好きなセリフがある。
自分を説教してくれた上、故郷に帰る路銀まで貸してくれたお蔦さん。
五助はお蔦さんに、「姐さん、一年後、お金は必ずお返しします。それまでこの顔忘れないでくださいよ」と言って別れる。
一年の間、五助は辛いことがあるとお蔦さんに借りた財布を見つめて、お蔦さんの優しさを思い出して頑張ってきた。

そして一年後、五助にとって待ちに待った感動の再会。
だけどお蔦さんは、五助の顔を見ても
「どなた…でしたっけ?」
あらショック。
人生を変えてくれた大恩人に忘れられるっていうのはけっこうショック。
でも五助はニコニコしたまま、一つのためらいもなく言うのだ。

「助けた姐さんが忘れようとも、助けられたわたくしが、どうして忘れることがありましょうか!」

五助―!!
そうだよ、恩ってこういうものだよー!
客席で文字通り膝を打って、私も五助の笑顔につられてニコニコ。

役者さんとお芝居上のキャラクターは全然別物だけど。
この五助は本当、三代目座長にぴったりだったと思う!

三代目の笑顔はすごい。
初めて9月に木馬館で春陽座を観たとき、幕が開いて真っ先に目に飛び込んできたのは明朗そのものの笑い顔。
三代目のえがお。
ひらがなでえ・が・おっていう文字一つ一つが表情に詰まってるくらいの笑顔。

写真・澤村かずま三代目座長(9/29舞踊ショーより)



閑話休題。
…で、恥ずかしながら。
「助けられたわたくしが、どうして忘れることがありましょうか」
このセリフ、後になってからさらに染みてきた。
だいぶ飛躍するけど、私の大衆演劇の役者さんへの恩に当てはめてみたから。

日々色んな舞台を見せてくれる役者さんたち。
私がどんなに好きでも、向こうにとっては通り過ぎていく無数の客の一人。
顔も名前も一片も記憶に残りはしない。
(ありがたいことにそれでも覚えてくれてる役者さんもたくさんいるけど…)

でも私は覚えていたい。
感動をくれた役者さんを忘れたりしない。

ボロボロ涙を流した、宿命に対する人間の生き様を見せてくれたあの悲劇。
お腹抱えて笑って、疲れた心に明るい気持ちを吹き込んでくれたあの喜劇。
リズムにのって手拍子して、楽しいってこういうことだと思いだしたあの踊り。
しなやかな動きに魅せられて、きれいすぎて最後には涙まで滲んだあの踊り。
美しい短編映画のような、ストーリーに惹きこまれたあの踊り。

どうして忘れることがありましょうか。
助けた貴方が忘れようとも、助けられた私は、ね。
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