劇団花吹雪お芝居「かんざし」①春之丞座長の一人二役

2013.2.24 昼の部@篠原演芸場

役の一つは、ヤクザの用心棒。
「皮肉なことよのう…!」
長い鬘の髪に覆われて、春之丞座長の顔は見えない。
低く絞り出される、この一言で鳥肌。

でも本当の鳥肌はこの数分後。

もう一つの役は人の良い商人。
「おしん、おしんー…」
慌てて女房を探す声。
聴いただけで優男の面差しが浮かぶ。

春之丞座長の一人二役。
それは声も表情もまとう雰囲気も、つるりと剥ける。
まっことすごい芸を見せていただきました。

写真・桜春之丞座長(2/24ミニショーより)


24日は2月最後の休日、しかも市川千太郎さんがゲストでいらっしゃるとあって、
篠原演芸場は超満員!
席と席の隙間にまで、ぎゅうぎゅうに詰めかけたお客さん。
みんな、花吹雪の花舞台を観たいがためですよね!
普段より狭めのスペースに膝を抱えながらも、心はうきうき。

お芝居「かんざし」は、女性のヤクザ・おしん(市川千太郎さん)を巡る物語。
千太郎さん演じるおしんは、姐さんっぽさと甘えた声音が混じる可愛さ。
おしんとヤクザの用心棒・木下弥太郎(桜春之丞座長)との関係がたまらない。

赤い玉の付いた、一本のかんざし。
おしんが弥太郎の下を去るときに、弥太郎の髪にサッと刺して遺していった物。
遺していった心。

一年後、弥太郎は病を患っていた。
虚ろな目で、黒い着物に包まれた病身を引きずるように、舞台に出てきた弥太郎。
その手が無造作に懐に伸びる。
取り出して縋るように見つめる、赤いかんざし。

おしんと弥太郎は、互いの心を口にしない。
けれどこの場面で、深い濃い愛情がドンと舞台に落ちる。

かつての好敵手・月輪又四郎(桜京之介座長)がおしんを果たし合いに呼び出したことを知り、
弥太郎はおしんを助けんがため、果たし合いの場へ向かう。
歩くのにも杖が必要な状態で、斬り合いに向かう。
「この体、もってくれよ…!」
よろよろと、けれど眼光だけは強く。
春之丞さんの麗しい顔は、今や気迫に満ちていて。
そして乱れた髪をさらに振り乱して、命を削るような立ち回り。

弥太郎という人物の激しさ、
刃先ひとつで命のやり取りをしてきた危うさ。
「おしん~~~っ!」
低音の声が、唸りを含んで舞台に轟く。

でも、弥太郎が舞台の裏に引っ込めば。

いつの間にやら客席のほうから、春之丞さん再び登場。
「ああおしん、おしん、心配していたんだよ、さあ帰ろう!」

はりゃ。
一気に気が抜けた。

春之丞座長の二役目は、カタギになったおしんの旦那。
善人オーラ全開のあきんどさん。
浅葱色の爽やかな着物を着こなして、女房を迎えにやってきた。
優しい旦那さんは斬り合いの跡を見て、美麗な眉をひそめてみせる。

「その弥太郎という人が、お前の代わりに事を片付けてくれたんだろう」
だから帰ろう、とおしんに呼びかける。
その声はどこまでも柔らかく明るい。

春之丞座長の”声”の引き出しの多さは、以前から驚嘆するところではあったんだけど。
弥太郎と旦那さんの声は、どういうことなのってくらいトーンが違う。
殺し合いの臭いがまだ立ちこめる中に、普通の庶民が飛び込んでしまった…
という「場違い感」まで、鋭敏に伝わる。

ご本人は楽しげに、弥太郎を演じてるとき、
「おしんの旦那という人に会ってみたいものだなあ…」
なんてセリフで客席の爆笑を誘っていたけど。
(これも一人二役の醍醐味ですな)

尖った黒と清涼な青。
ひとつの舞台でふたつの色。
七色虹色、数えるたんびに増えていく色彩を全部包みこむ、春風のような微笑。
カリスマ座長の本領発揮でした。

多分これが、花吹雪さん観劇ラストになってしまうので。
記事を締めくくる前に、もひとつ言及しておきたい。
お次の記事は、桜愛之介さんの演技の話。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)