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ひと振りの刀 ―四代目・市川ひと丸座長との出会い―

古風な、あまりに古風な。

まるで古いモノクロ映画から輪郭をきれいに切り取って、2018年の舞台に貼りつけたみたいだ。
市川ひと丸劇団座長、四代目・市川ひと丸さんは衝撃の16歳だった。一枚看板の座長としては全国最年少。
「のう、どうだ、わしに一つ小遣い稼ぎをさせてくれんか」(『新月笛吹川』)
声も作法も体の使い方も、全部、THEクラシック!こんなティーンの役者さんがいらしたのか…!



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市川ひと丸座長

6月のオーエス劇場では、2回にわたって座長襲名記念の座長大会があったそうだ。

私がひと丸さんを初めて観たのはその少し前。4/14の愛知・一宮芸能館SAZANだった。尊敬する友人の激推しで足を運んだ。芝居『心もよう』の中盤でひと丸さんが登場し、第一声を発したときの衝撃が忘れられない。
「ここらあたりもすっかり変わっちまったなぁ、十年ひと昔とはよく言ったもんだ」
(゚Д゚)
リアルにこんな顔してしまったと思う。よく響く、これぞ芝居、そんな声。ストトンと体に落ちる明朗な声。今、太夫元クラスの役者さんたちは若い頃にこんな喋り方をしていたんじゃないかと思わせる。
タイムスリップじゃないか、これは。
お芝居全体も細かな構築や、演者の皆さんの誠実な演技が堪能できて、大満足の一夜になったのでした。

そして2回目に拝見したのは6/9。
一宮で芸風を垣間見たものの、もしかしたらオーエス劇場公演ではちょっとカラーを変えられているのかも…と予想していた。なんせ大阪・新世界は超激戦区だし、同世代の役者さんの多くは、現代風のセンスや王子様みたいなビジュアルで人気を集めているのだから。

けれど、オーエスでもひと丸さんは変わらなかった。芝居『新月笛吹川』、個人舞踊【望郷じょんから】、ポップス【最期の川】を踊ってすら(!)、どこか墨で描いた絵を思わせた。若い体に、得体の知れない老優が入ってるみたいな気がした。

だから、「ラストショー、Joker!」とアナウンスされたときは驚いた。Jokerといえば、若手さんが洋風衣装やフードで踊るイメージの一曲だけど…。ひと丸さんが踊るの…?! どんなだ…?!

ん?流れてきた、このパラパラした電子音みたいなイントロは…【唐獅子牡丹】!
舞台に登場する大勢の悪党たち。ひと丸さんは刺青も鮮やかに、彼らを刀でバサバサ斬っていく。昭和残侠伝みたいな世界観だ。

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そして、そのまま曲は【Joker】へ繋がった。ひと丸さんの刀が勢いを増す。任侠スタイルのJokerって斬新、と思っていたけど。

―バッサバッサ ブッた斬る“ボンクラ”
ブッ飛ばすか 乱世の覇者“Joker”―


よく聴くと歌詞が合ってる…!
敵に囲まれた侠客は縦横無尽に向きを変え、ひたすら斬る。汗だくで斬る。

この日の芝居終演後。幕が上がると、ひと丸さんが国定忠治の格好のまま座っていた。マイクを握って口上を始める。
「あまりそう見えないかもしれないんですが(笑)…16です」
歳を言うと、驚きのざわめきが広がった。舞台の上の人は、どっしりと老境のような居ずまいで笑っていた。

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戦場に若武者ひとり――そんな情景だった。
父・南條す丶む総大将がそのあと語っていわく、まだまだ「四代目・市川ひと丸」の名は知られていないこと。オーエス公演でも上旬は苦戦を強いられていること。

少年座長がこれから、ブッた斬らなきゃいけない壁はたくさんあるんだろう。
流行?
知名度?
世の中の流れ?

―どんな状態でも覆してやる
革命児 それがJoker―


その【Joker】は洋風衣装もフードも選ばず、手にはひと振りの刀。
16年で培われた芸風、ただ一つを持って、ひとりで挑んでいた。

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古風、上等。
壁をブッ飛ばして。
タイムスリップしてきた大きな目が、未来を見ている。

【市川ひと丸劇団 今後の公演予定】
7月 桃太郎温泉(岡山県)
8月 飯塚セントラル劇場(福岡県)

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コメント

同感です!!

初めまして、大衆演劇特にお芝居が好きなものです。四代目市川ひと丸さんを観劇して衝撃でした。派手さはないけれど、セリフ回しや口上挨拶しっかりしていて耳に残る太い声、若者が踊るちゃらちゃら洋風もなく、昭和的な伝統を守る踊り、芸の幅が広くまた見たい!と思わせる方でした。まだまだ知名度は低いけど、一生懸命頑張る姿にこれからも応援します。同じように感じてる方がいらっしゃって大衆演劇がますます好きになりました。ありがとうございました。

>大衆演劇大好きっこ様

返信が大変遅れてしまい、申し訳ありません!!
初めてのコメント、本当にありがとうございます。

ひと丸さん、たった16歳であの芸風ということが一つの奇跡みたいに思える役者さんです。とても一生懸命ですよね。
“大衆演劇がますます好きになりました。”…拙文がほんの少しでもきっかけになり、そんな風に思って下さったのなら、とてもとても嬉しいです!この言葉を胸に抱いておきます。


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