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残る姿 ―三代目・鹿島順一座長―

「また」があると思っていた。
同じ時代の大衆演劇の舞台と客席を生きていて、大きい世界ではないのだから、また顔を見ることがいくらでもあると。

三代目・鹿島順一座長の訃報は5月最後の日曜の夜に聞いた。26歳。どれだけの人が嘆いただろう。

4年前、初めて、横浜・三吉演芸場の近江飛龍劇団公演に助っ人として出演されていたのを観た。古風な芸風の役者さんだと聞いていたので、キスマイの曲で他の若手さんと一緒に飛び跳ねる姿が元気いっぱいで逆に驚いた。
芝居『三人の運命』は、順一座長の演じる守銭奴・島吉役を観たくて行った。
「小さいときからのド貧乏や。金、金、金、金で世の中回っとる。金を持ったもんが勝ちを取るんや」
島吉が手の平と甲をぶつけ合わせながら、哀しい過去を語るのを朗々とした声で聞いた。

2年前、大阪・十三遊楽館での劇団公演を観た。芝居は『甲州の鬼』で、座長は若々しい黒駒勝蔵だった。客席から登場し、笠を取ってぴしりと決まった角度で振り返った。
旅芝居専門誌では肉体美を披露していた。友人から観劇報告を聞くこともあった。TLには写真も流れてきた。
同じ時間が流れているはずの一人がいなくなった。数えるほどの回数を観ただけの客にすら、若い人の死はぽっかりと穴を残していった。

訃報を聞いた5日後、仕事で山深い地域へ行く機会があった。待ちの時間にぶらっと外へ出たら、駐車場に食料品の移動販売車が停まっていた。初老の男性販売員は車にもたれて、スマホ片手に休憩中のようだった。目が合って、つい挨拶を交わした。
「どちらからですか」
「東京です」
向こうから話しかけてくれたので、何が売れますか、と聞いてみた。
「最近はお年寄りでも簡単に料理できるのがいいんでしょうねえ。レンジでチンできるものとか。あとは、花もよく出ます」
「花ですか」
「お仏壇に供えますからね。不景気でも、スーパーとかでは仏花の売り上げって必ず一定あるんですよ」
移動販売車の仏花コーナーをのぞくと、小さな菊がビニールに包まれていた。



亡くなった人へ花を手向ける。花をたてまつる。
舞台狭しと飛び跳ねていた満面の笑みがまだ浮かぶ。
また顔を見ることがいくらでもあると――いくらでも。

途切れた気持ちを残したまま、その人はこちら側にはもういない。だから花は、こちらとあちらを繋ぐ信号の役割をしているのかもしれない。
移動販売車の中は、野菜と植物の青々しい匂いが同時にした。

もし「また」があればどこだったろう。それはどんな芝居だったろう。

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2014.11.9

ありえたはずの「また」に向けて花を置く。同じ時代の一人の姿が、いつまでもそこに残っている。


友人の加藤わこさんが福岡・見聞劇場での告別式に参列され、順一座長の舞台を振り返っておられます⇒加藤わこ三度笠書簡「舞台の上に花ひとり」

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