2017年 忘れがたい7本の芝居 ―恋しい他者―

大晦日に滑り込みセーフ(;・∀・) 2017年も東京や川崎、大阪や岡山、色んな劇場でいっっっぱい芝居を観ました!
中でも忘れがたく、書き残しておきたい芝居が七本。長い記事になりますが、よろしければお付き合いください😊

★一本目
『三人出世』
劇団新 2017.3.9夜@大島劇場



龍新座長 友吉役

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龍錦若座長 定吉役

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小龍優花形 島吉役

「なあ島やん、もしかしたらお前も、そんな風になってたかもしれんやんか――」
龍新座長演じる友やんのセリフが胸にずっと響いていて、何度でも反芻したい。
運命を違えた幼なじみ3人を演じるのは、目鼻立ちのそっくりな三兄妹。3人の生き様が影絵のようにダブる。だからお前を決して見捨てたりしないよ、とばかりに友やんは微笑んで、定やんの肩を抱く。
お前は運の悪かった私――という浮かび上がるメッセージは、『三人出世』という芝居の主題なのかもしれない…と思った。

ラストシーンには斬新な演出も! 新進気鋭、今波に乗っている若い力を感じた。来年2月には再び川崎・大島劇場での公演が決まっているそうだ。

★二本目
『中山峠 どさ帰り』
里見要次郎会長誕生日公演 2017.8.6夜 @後楽座


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里見要次郎会長 長次役
※当日、会長の舞台写真は禁止だったので男前なポスターから。

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当日ゲスト・澤村千夜座長(劇団天華) お美代役

15年の、地獄の流刑!
一目見初めた恋のために、大工の長次(要次郎会長)はそんな目に遭った。長次はそれでもなお、かつての一目ぼれの相手・お美代(千夜座長)に執着し続ける。
「俺は15年前のお前の姿を、忘れやしねぇぞ…」
いや、そんな目に遭ったからこそ、過去の美しい一点を見つめ続ける。

里見劇団の若手さんのツイッターによれば、芝居の題が『中山峠 恋のまほろば』となることもあるらしい。“まほろば”って言葉はぴったりだ。決して手に入らない、遠い憧憬。
「俺の一生はその女で始まり、その女で終わるような気がします…」
「あたしにとってはこの15年、この世のすべてが地獄だった!」

描かれていたのは、逃れられない執着としての恋だった。楔のように絡んで、汚泥の中に人間を留まらせる。
要次郎さんと千夜さん、大人の演者2人っていいなぁ…(しみじみ)

★三本目
『河内十人切り』
劇団花吹雪 2017.9.26夜@浅草木馬館


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桜春之丞座長 熊太郎役

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三代目 桜京之介座長 弥五郎役

熊太郎と弥五郎は大衆演劇界のゴールデン・ペアだと思う(浪曲界でも多分そうかな?)。花吹雪版が突き抜けていたのは、「二人で一つ」という密着性だ。
警察に追い詰められた山中、熊太郎(春之丞座長)は弥五郎(京之介座長)を刺す。そして瀕死の体を腕に抱く。「ごめんなぁ…」とうめく熊太郎に、弥五郎は「ええねん、ええねん」と笑って返す。
「不思議やなぁ、兄貴にこんな酷いことされとるのに、お前を恨む気にならんねん。うん、何をされても、わしはお前は恨まん!」
べとべと赤い血にまみれ、二人の体は一つになっていくようだ。

春之丞さんも京之介さんも、相手の体に触れるときに全然遠慮がない。まるで自分の体みたいに、相手の肩や腕に触れながらセリフを言う。二人が従兄弟で、ずっと一緒に育ったという家族関係が芝居にも生きているんだろうなと思った。だからあの熊太郎・弥五郎は、家族を核にした旅芝居にしか存在しえない表現なのかもしれない。

★四本目
『君の名は。』
劇団天華 澤村千夜座長誕生日公演 2017.10.21夜@紀の国ぶらくり劇場


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澤村千夜座長 瀧太郎役

「今までやったすべてのお芝居の中でも一番難しかったかもしれません」(千夜座長口上より)
何でも屋を営む瀧太郎の身体に、見知らぬ娘・おみつ(死者)の魂が入り、二人で一つの体を分け合って暮らすというSF設定。漫画が元ネタなんだそう。
千夜さんの男⇔女の転換が面白い。胡座をかいて男の声で喋ったと思ったら、慌てて恥じらって脚を揃え、女の細い声で言い返す。

ラストシーン、死んだおみつの正体が明かされた後、瀧太郎は初めてその顔を見る。最初で最後の対面。
背景に流れる青空と白い雲の中を、死者が遠ざかっていく。生きている人々を置いて。青空を仰ぐ瀧太郎の滂沱の涙から、“人を恋しがる” 気持ちがドッと流れ込んでくる。

今年は長年副座長を務めた神龍さんの独立など、変化の大きかった天華さん。その中で残ったメンバーや新メンバーが見せてくれた舞台は、なおエネルギッシュだった。来年はどんなシーンに出会えるかな?

★五本目
『影絵の鶯』
若丸一門劇団時遊 烏丸遊也座長誕生日公演 2017.11.12夜@大島劇場


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烏丸遊也座長 蜉蝣(かげろう)の時三郎役

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雲母坂美遊さん お佑役

初めて観る劇団さんってやっぱりワクワクする!川崎に来てくれた劇団時遊さんは、遊也座長、座長のお母様の十川流(つなし・せんりゅう)さん、都川純後見、友情出演の優木劇団・優木誠座長に優木直弥花形……と、芸達者な面々が揃っていた。

『影絵の鶯』は遊也座長の書き下ろし芝居。いかさま師の蜉蝣の時三郎(遊也座長)と、足抜け女郎のお佑(美遊さん)。親を知らない二人が惹かれ合い、夫婦の暮らしをし、やがてお佑は赤ん坊を身ごもる。
この一回こっきりで再演は決してないとおっしゃっていたので書くと……時三郎とお佑は、実は血を分けた兄妹(!)だったのだ。けれど。
「俺たちはたとえどんな形であれ、家族なんだ!」
と、世間の目よりも個人の愛情を貫こうとする。

何もかもを飛び越して、時三郎とお佑の二人が強烈に結び付いていた。終盤にお佑が時三郎の顔に触れながら、つぶやく。
「ずっと、時さんと、兄ちゃんと、ううん、お前さんといたかった…」
みなしご同士、絶対的な“ワンペア”の前で、夫婦とか兄妹とか関係性の名前は取るに足らないもの。演じる遊也さん・美遊さんがどちらもあどけない顔つきなのも、役と重なっていた。

★六本目
『花の生涯 浅野内匠頭切腹』
春陽座 2017.12.3 昼@新開地劇場


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澤村心二代目座長 浅野長矩役

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澤村かずま三代目座長 片岡源五右衛門役

12月は忠臣蔵シーズン⛄ 大阪の友人が春陽座に通いまくっていたので、新開地公演に一緒に連れて行ってもらい、忠臣蔵の芝居に当たった。切腹直前の浅野(心座長)と片岡(かずま座長)の対面を描く静かな芝居。

一番胸に迫って来たのは、片岡が浅野に、民から預かってきた御守りを渡す場面だった。
「我ら家臣ばかりでなく、領民、百姓、女、子ども、年寄り。みな、殿のご無事を願って…」
物語には登場しない無名の民の祈り――それらももう、無駄になってしまった。嗚咽する片岡と、しんとどこか遠くを見ている浅野の白い顔が対照的だ。
ついに切腹の時がやって来て、浅野はおもむろに立ち去る。舞台上手に消えていく姿に、片岡が涙に濡れた声をかける。
「と、殿……殿…」

講談ファンで、色々話芸について教えてくれる友人がいる。彼女の好きな講談師の説によれば、「忠臣蔵はさまざまな別れを描いた物語」なんだそうだ。
片岡は、浅野が立ち去った欄干にしがみついて「殿」と呼び続ける。花の生涯――民に愛され、家臣に愛された人と永遠にお別れ。生きている者がどんなに泣いても縋りついても死者はいなくなってしまう。
春陽座が大切にしているという忠臣蔵のお芝居、来年も観られるといいな。

★七本目
『雪の長持唄』
下町かぶき組 三峰組&岬一家合同公演 2017.12.10 昼@オーエス劇場


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三峰達(みつみね・とおる)座長 佐吉役

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舞鼓美さん おこう役

涙を振り絞った。2017年、「泣いた量」でいったらこの芝居が一番だと思う。
ツイッターで『雪の長持唄』のことをつぶやいたら、観たことがある方々から一様に「素晴らしいお芝居ですよね」とリプをいただいた。

主人公・佐吉(達座長)は人生を一度諦めた男だ。医者の道を捨て、やけっぱちで盗人稼業に手を染めていた。盗みに入る家の情報を聞き出すために女中のおこう(鼓美さん)をさらい、利用した後は殺すつもりだった。だが、おこうも同じ奥州の出身だと知って殺せなくなってしまった。
「俺と居たって良いことなんか何もねえぞ」と、おこうを追い払おうとする佐吉。これに対する、おこうの言葉がビリッと響く。
「そんなことねぇ!おめぇはおらを助けてくれた。故郷(くに)の長持唄も歌ってくれた。もうおらには良いことがあった!」

陰を背負った佐吉を包み込むように、おこうは温かい。自分を殺そうとしている男が同郷だと知ると、「おめぇも奥州か?!」と笑顔を弾けさせる。演じている舞鼓美さんの持ち味だろうか。開けっぴろげで声が大きい。『雪の長持唄』に心を引っ張りこまれたのは、おこうのキャラクターによるところが大きいと思う。

「娑婆に戻って何とかやり直そうとした。それでも何もかもうまくいかなくて、心ばかりが擦り切れて――」(佐吉)
下町かぶき組の星誠流座長の脚本だそうだ。心情がセリフの中にくっきりと描写される。
芝居が続いている時間ずっと、佐吉とおこう、この二人になんとしても幸せになってほしいと思っていた。


場面場面を思い起こすと…七本の芝居にすべて共通することがある。皆、誰かを切なく恋しがっていること。
『三人出世』は幼なじみを、『中山峠…』は初恋の面影を、『河内十人切り』は兄弟分を、『君の名は。』は死者の魂を、『影絵の鶯』は片割れを、『花の生涯…』は主君を、『雪の長持唄』は奇妙な縁で知り合った男女がお互いを。
どんなに近い関係性でも、他者はずっと遠いから。埋めがたい距離をなんとか埋めようとする気持ちに、物語が成立するのかもしれない。

ところで木馬館の初日が12/30だったから、2018年の観劇ももう始まってます! 来たる年も、ここに書ききれないくらいたくさんのお芝居に出会えますように!ヾ(*・∀・)/

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