劇団KAZUMAお芝居「生首仁義」③宿命と意志

2013.2.10 昼の部@くだまつ健康パーク

①将さんの三代目・一馬座長の二代目の記事と、②涼さんの仙蔵・竜也さんの長五郎の記事を書き終えて。
「生首仁義」について再び考え直せば、同じ所に戻って来る。

なぜ三代目はヤクザの家に生まれたのだろう?
なぜあんなむごい死に方をしなければならなかったのだろう?

繰り返し、私は同じ問いに出会う。

最後に、私がこの物語の核だと信じる、
<宿命>とそれに抗う<意志>に目を凝らしてみたい。

写真・柚姫将さん(2/11舞踊ショーより)
お写真はやっぱり三代目を演じた将さんで。


三代目は、どうしようもなく最初から死を用意されているキャラクターだ。
何ひとつ、悪を働いたわけではない。
むしろ普通の人間として、ただおりゅうに恋をしただけだ。

「男が女に惚れるのは当たり前じゃあないか!」

でも、三代目の言い分は許されなかった。
当たり前の恋は、死をもって報いなければならないほどの過ちだった。

なぜ?
三代目は、白鷺一家の親分という立場にあったからだ。
なぜ親分になったのか?
兄の二代目が旅に出て、弟に一家を残していったからだ。

好きでヤクザの家に生まれたわけではない。
好きで三代目になったわけではない。
周囲が、生まれが、弱い清次郎にそう要請した。
気づいたら決まっていた。
気づいたらその宿命の中にあった。

そして最期も。
三代目は、仙蔵や長五郎に苦労をかけている我が身を振り返って。
兄に仁義を解かれ、諭されて。
「兄ちゃんに迷惑かけるくらいなら…」と。
周囲の要請で、三代目は死んでいくのだ。

では三代目の命とは何だったのだろう?
何一つ自分では決めず、ただヤクザに生まれた宿命を受け入れることしかできない、
ひたすら無力な生き様だったのか?

いや、違う。

「おいらの墓に供えてもらいたい首が、二つある…!」

自決の最中。
苦悶の中、三代目が憤怒を込めて叫ぶセリフがあったじゃないか。

「おいらを騙した横車大八と、男心を弄んだ娘のおりゅう」
「この二人の首だけは、必ず供えておくれ!」

自分の意志で、二代目に怒りを託したじゃないか。

私が、この悲惨な自決の場面に、それでもかすかな希望を見つけるわけは。
最初は死ぬのが怖いと怯え、
ただ兄に言われるまま泣きながら腹を突いた三代目、
ただ宿命に従って消えていく三代目の命に、
場面途中から確かな意志が瞬き始めるからだ。

仙蔵と長五郎に、強い男で死んでいったと伝えてくれと、確かに言った。
兄に促されることもなく、自分で決めてそう言った。

自分の首を横から掻き切って、自分にとどめを、確かに刺した。
誰かの助けを得ることもなく、他ならぬ自分の手で刺した。

将さんが目を剥いて切る、見事な見得。

「おいらの首を横車一家に渡して、渡世の仁義を通しておくれ!」

このセリフが叫ばれたとき。
自決は、三代目が自分で選んだ死になる。
自分で選び取った仁義に変化するのだ。

だから「生首仁義」は、宿命の重さが描かれたこのお芝居は。
それでもなお煌めく、人間の意志の光を讃えてやまない。
決められた死を享受するだけだったはずの三代目。
巨大にそびえる宿命に、命の全てをもって一矢を報いた。
その矢がどんなに小さかろうと、か細かろうと。
放つ光の眩しさに、私は胸を打たれてやまない。

二代目は弟の亡骸に言った。
「次は決してヤクザの家に生まれてくるんじゃあねえ。カタギの家に生まれて、幸せになるんだぜ…」
けれどラストシーン、風の中から二代目の耳に聞こえてくる三代目の声は、そうは語らない。
「今度生まれてくるときも、兄ちゃんの弟に生まれてきたいなあ…」
三代目が自分で選んだ、一番大事なもの。

忘れもしない2012年7月15日お昼の部、浅草木馬館で初めてこのお芝居に出会ったとき。
お芝居が終わった後も客席に縫い止められていた。
大衆演劇、劇団KAZUMA、柚姫将さん。
自分の知らなかった世界の入り口が、鮮やかに照らされていた。
だから私はそれからずっと、夢桟敷にいる。

いずれまた「生首仁義」を観るまでに、舞台から溢れる膨大な感情を少しでも汲めるよう、文章の器を広げておきたい…。
なんて考えていたけど、意外にも早く来た再会。
私の器はやっぱり全然追いつかなくて、たぷたぷ零してしまった。
まだ語る言葉を知らない物語の深淵をちら見して、悔しさ混じりに見送っているけど。

それでも今回山口に同行してくれた観劇仲間は、三代目が自分の首を掻き切る場面で、
「お萩の言う人間の意志ってこういうことか」と共感してくれた。
くだまつ健康パークの客席で、働きっぱなしだった私の涙線(そらもう目が真っ赤になるまで)。
自分の流した涙の分だけは、どうにか文章に流し込めただろうか。

いつか、私はまたこのお芝居に出会えるだろう。
宿命の物語。
意志の物語。
放たれる光をいつまでも、見つけることができますように。
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