劇団KAZUMAお芝居「生首仁義」②華原涼さんの仙蔵役・冴刃竜也さんの長五郎役

2013.2.10 昼の部 @くだまつ健康パーク

息絶えた三代目の体を、
もう物言わぬ親分の体を、
崩れ落ちさせまいと支える部下が二人。
「世間に弱いお人だと言われようと、俺たちにとっては日の本一の親分でございました…!」

今回は三代目のお付きの若衆、仙蔵と長五郎の話。

仙蔵は華原涼さんが惚れ惚れするほどの漢っぷりで、
長五郎は冴刃竜也さんが絶妙な軽みをもって演じてらっしゃいました。

写真・華原涼さん(2/10舞踊ショーより)


写真・冴刃竜也さん(2/10舞踊ショーより)


どちらのキャラクターもヤクザの仁義に生きているけれど、
性格や行動はかなり異なる。

まず仙蔵は、面倒見が良く、冷静沈着。
「三代目、もう大丈夫ですよ」
「誰もいやしませんよ」
三代目には、いつも子供に対するような愛情と寛大さをもって接する。

白鷺一家の縄張りか三代目の命か、という選択を突きつけられたときも。
震え慄く三代目に、優しくこう言ってくれるのだ。
「どうだろう。俺は、縄張りはいったん手放そうと思ってる」
「縄張りはまた、みんなで頑張って取り戻せばいい。でも三代目の命は取り戻すことはできねえんだ」

家に帰って来た二代目が「弟と話がある」と言って、仙蔵と長五郎を出て行かせる前に。
仙蔵はこっそり二代目に告げておく。
「三代目は気の弱いところがあります」
「あまりきついことは言わねえでやってくれませんか」

頷く二代目。
安心したように三代目を振り返りつつ、出て行く仙蔵。

でもこの時点で二代目は、既に弟に自決させることを決めていたのだ。
つまり仙蔵にとっては、生きている三代目を見るのはこれが最後になった。
今回の鑑賞ではその事をあらかじめ知っていたので、
「あまりきついことは…」というセリフでもう涙線が決壊。

ずっと守ってきた、弱い頼りない、でも気の優しい、たった一人の親分が、次に見るときには冷たくなっていて。
もうあの泣き言も甘えも二度と聞けないなんて、どうして想像できたろう。

その仙蔵の心が突き刺さる場面がある。
二代目が三代目の首を抱え、弔い合戦に駆けて行った後。
仙蔵はたった一人家に残り、じっと手の中のものを見つめている。
手には黒髪。
三代目の首から落とした髪。
長五郎がたまらなくなったように呼ぶ。
「兄貴、兄貴」
仙蔵は何も言わず動かず、ただ見つめる。
髪の持ち主がいなくなったことが、まだ信じられないと言うように。
もう失われた彼の姿形を、記憶でなぞるように。

でもお芝居的な見せ場はこの直後。
仙蔵はおもむろに立ち上がり、
三代目の髪を口にくわえて、
足が踊るように地を蹴って、
鋭く叫ぶはたった一言、

「横車の野郎、長い正月にはさせやしねえ!」

もう、涼さんが見得を切るとまるで一幅の絵。
仙蔵のような「The水も滴る良い男」の役が、涼さん以上にハマる役者さんているんだろうか。
低く通る声、常に堂々とした立ち姿、きりりとした目。
登場しただけで、空気まで何か深い色に染められるようです。

(ちなみに昨年7月の初見では、仙蔵役は龍美佑馬さん。
佑馬さんの素朴な温かさが漂う演技にも泣かされた。
仙蔵が三代目の遺体を担ぎあげたとき、それまでこらえていた哀しみが押さえきれなくなったように、立ち止まって震えながら泣くという演技があって。
私は木馬館の客席でぼろぼろと涙をしぼったものでした)

そしていま一人、長五郎。
このお芝居の中で、一番「変化」を見せてくれるキャラクター。

最初はお付きなのに、三代目に最も厳しい。
横車一家に怯える三代目を見て、「腰抜けが…」と吐き捨てる。
履物を用意してやる時も、足元にバコッ!と叩きつける。

縄張りか三代目の命かとなれば、ずいと三代目に刀を差し出して、
「死んでください」
おいらの命と縄張りとどっちが大事なんだい!と言われれば。
「縄張りに決まってるじゃないですか」

なんで自分が、ヤクザの心をかけらも持っていない奴を親分と敬わなければならないのだろう。
長五郎からはそんな不満がだだ漏れ。

でも、三代目が本当に自決してしまったとき。
絶命した三代目の顔を、長五郎は食い入るように見つめている。
死ねと言ってしまったことへの後悔か。
それとも自分が思っていたよりずっと強い心の奴だったと思っているのか。

長五郎は二代目や仙蔵と違い、三代目への思いをはっきり口に出すセリフはない。
けれど終盤、横車一家との斬り合いに勝利した後。

長五郎は、誰より先に――二代目より仙蔵より先に。
地に置かれたままだった三代目の首に駆け寄って、大事そうに抱えるのだ。

ぶっきらぼうな喋り口の中から、仁義や情愛がたまにぽろっと零れる。
竜也さんはそんな演技で魅了してくれました。
一緒に観ていた観劇仲間の一人は、長五郎が最も印象的だったそうな。

仙蔵と長五郎、二人の対照的な部下が、三代目にとって大事な人間だったから。
だから、三代目は最期に二人への言葉を遺す。

「仙蔵と長五郎に、今までは弱い男だったかもしれないが、死ぬときは強い男で死んでいったと、そう伝えておくれ!」

だから、ラストで再び旅立つ二代目は、同行しようとする二人を止める。
「お前たちが俺と一緒に来たら、清次郎が独りぼっちになっちまうじゃねえか」
「いつまでも清次郎の傍にいてやってくれ」
死んだ後も。
いついつまでも。


「生首仁義」について語ることはまだまだ尽きないけれど、次でラストの記事にします。
私がこの物語に惹かれてやまない理由。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)