天華ロスに落っこちて① ―澤村神龍副座長が“座長”になる日―

季節はとうに春です――が。
桜の木がピンクに膨らむ中、胸中の喪失感がだいぶ募り中。
小倉・宝劇場のお外題がTwiterに流れてくると、明日このお外題かぁ良いなぁ、前に聞いたセリフあるのかなぁ、とか思いつつ。

周囲の大衆演劇ファンもみんな、それぞれに観に行きたい劇団はあれど、多忙やら金欠やら観劇欲求には足枷が付きものらしく。春陽座ファンの姉は行ける月をひねりだして遠征計画を立てているし、劇団炎舞ファンの友人たちは一日千秋の思いで東京公演を待っている。
タイムラインにフォロワーさんの「○○ロス」の言葉を見つけると、あ、同じです…!今、胸の中空いてるこの穴おんなじです…!と(勝手に)共感していたりする。

劇団天華さんの場合、今のメンバー構成を観られる“リミットが迫っている”のが大きい。


(2017年3月、奥道後公演)

3/17(金)、澤村千夜座長のゲスト先での発表によれば、6月いっぱいで澤村神龍副座長は旗揚げのため退団。そして澤村龍太郎さんも退団。
同日、神龍さん自身がブログで発表されました⇒澤村神龍の俺様ブログ

旗揚げか…。昨年から30歳前後の役者さんの再スタート宣言が相次ぐなぁ。すでに旗揚げ公演を成功させた嵐山瞳太郎座長、6月に大阪で旗揚げされる碧月心哉座長。ここに澤村神龍“座長”の名が加わることになるのか。
改めて、一座の中心に立つ者としてとらえ直したとき。
神龍さんって、どういう色の役者さんなのだろう?

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◆得がたい“いたいけ”感
≪お客様からは、幸の薄い、悲しい役が似合うと言ってもらうことがあるんですが、確かに人情劇のほうが自分としても魅せられるかなと思います≫
とご本人がインタビューで語られているように(『演劇グラフ』2017年3月号)、神龍さんの芝居には“いたいけ”な印象が残る気がする。
ほっそりした体格で、背丈もあまり大きいほうではないせいか。それとも、話し方や笑い方に取り繕わないピュアな感じがするせいかな?
主演の『雪懺悔』も惨い目に遭って同情を誘う役どころだったし、『鷺娘』の娘役は神龍さんの醸す悲壮感があってこそ。

その真骨頂は、ご本人のお誕生日公演で作られたという『マリア観音』なのかもしれない。30歳の神龍さんが、ごく自然に少年・半次郎に変質することにビックリさせられる…。
母親(志保さん)と語らう甘えの残る口調。悪ガキ連中とつるんでいる場面のイタズラっぽい表情。父(千夜さん)をかばって捕らわれの身になる場面で「あの…」と、もの言いたげに振り返る思慕。終盤にボロボロの身体で父に縋る弱々しさ。
半次郎のよろめく足取りを見ながら。お芝居と役者さんの芸風が当たるってこういうことなのかと思っていた。
『マリア観音』と神龍さんは、きっと物語と演者の幸福な出会いのひとつだ。

千夜座長の濃さに対し、サブポジションの神龍さんの儚さがバランスよく糸を引いていることが、天華さんの人情芝居の飲み込みやすさなのだと思う。

だからこそ、正直な気持ちを言えば、驚いた。
神龍さんが座長に…。
座長といえば舞台も客席もグイグイ引っ張って、力と熱でヤマを上げて、芝居の核を立たせる存在。そんな従来の座長像は古いのかもしれないけど、やっぱり自分が長だ!という強引なまでの強さを持ち合わせた人に向いてるんじゃないのかな…?

◆変わっていく時代
でも思い出したのは今年1月・池田呉服座公演中のこと。神龍さんがブログで、心身の調子がかなり良くないことに言及していた。
読んだ途端、なんだかそわそわ…
遠い東京でもそわそわしたのだけど(勢いでこんな文も書いている)。大阪では、ブログを読んで副座長を心配するあまり、実際に劇場に駆けつけた人が相当いたと友達から聞いた。皆さん神龍さんが可愛いみたい、と。

私は結局、他の大阪行きの用と合わせて、千秋楽直前にようやく池田を訪れた。送り出しで副座長のほうを見ると、お客さんに囲まれていた。
「もう全然大丈夫ですよ!」
ニコニコと応対されている姿が見えた。なら良かった~、気になってたの~とホッとした顔のお客さんたち。その後ろにも並んでいる方の列が出来ていた。

つい気にかかる、とか。なんとなく心配になる、とか。
あのしゅるんっとした線の中に、人の気持ちを引く何かを持った役者さんなのだ。

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多分、根底に、純度の高い気持ちが見えるせいかな。
それが芝居で感じられるのが『遊侠三代』。丞弥さん主演だけど、子分役の神龍さんも敵役の千夜さんも、それぞれの演技の特性が際立つ面白い構成だった。
神龍さんは、丞弥さん演じる親分の代わりとして自ら斬られにいくという役どころ。思いつめた表情で戸に手をかけ、背後の弟分(悠介さん)に言う。
「親分はずっと、ずっと別れた兄を探してきたんだ、必ず生きて会ってもらいてえ…」
そして戸を開け、一目散に駆けていく。身代わりになって死ぬために。目つきは、ただ一点だけに向かって研がれている。
「なんか神龍さんって、ホントにそういうことしそうな感じがあるじゃない?(笑)」
一緒に観ていた友人が言った。

時代は変わっていく。
座長という概念も、古いイメージを軽く飛び越していく。
一生懸命で、人情芝居では憐憫を誘って、“純”が透ける神龍座長を、座員さんやお客さんがつい支えたくなる…そんな未来の形があるのかもしれない。

見回せば、若い劇団さんには色んなスタイルがある。座長さんと座員さんのフレンドリーな関係性が微笑ましい劇団もあるし、みずみずしい新人さんたちの教育係として座長が慕われている劇団もある。
今の時代、中心に立つ人の引力の在り方は様々。
やわらかな笑顔の神龍さんらしいチームがきっとできるのだろう。

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≪一瞬の演技に、その人物のストーリーが感じられるような。それくらい役になり切りたいです≫(同インタビューより)
近い将来、この世界に新しい劇団さんがまた一つ加わる。

……つまり今の天華さんを観られるリミットは刻々と迫っているってことなんですけどね。気づけば、もうあと3か月切ってました。なんてこった💦
ロスを持て余した勢いで書き始めた天華さん語り、①があるってことは②もあります。②は千夜座長の話。多分ファン丸出しの文になっちゃうので、生暖かい目で読んでいただければ幸いです…(^-^;

【劇団天華 今後の予定】
4月 宝劇場(福岡)
5月 城山温泉(香川)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川)

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