劇団新お芝居『三人出世』―もしかしたらお前も―

2017.3.9 @大島劇場

友やん(新座長)の、のんびりした顔。
定やん(錦若座長)の繊細そうな顔。
島やん(優花形)のキリッとした主張の強い顔。
『三人出世』を若き三兄妹が演じるというのがどういうことか。目鼻立ちのそっくりな三つの顔が運命を分け合う。
「もしかしたらお前も、そんな風になってたかもしれんやんか!」
このセリフは通奏低音のようだ。


龍新座長。友やんの演じる愛すべきキャラクターの上に物語が乗っかっている。

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龍錦若座長。彼の定やんは健気だ。優しい人ほど人生につまづく、ということを体現しているみたいに。

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小龍優花形。島やんの一人称は「わたし」。わたしは他の二人よりも出世したんだ、と主張する気根の強さが彼女ならでは。

このお芝居については、仲良くしていただいている鳥目見習い中さんが昨年12月にブログを書かれていたので観たいと思っていた(ぜひご一読を~)。

筋は皆さんご存知の通り。大阪の河内から出てきた3人の友達同士が、江戸で出世比べをする話だ。
友やんは目明し。それなりの出世。島やんは金貸し。世間的には一番出世。
そして定やんは――
「俺はな、今、材木問屋の一番番頭やってるんだよ」
と友やんにうそぶくけれど。
「大した出世や!けど、番頭ちゅうたら頭きれいに整えてるもんやろ。なんでそんな伸ばした頭で、黒づくめの格好しとるんや」
と聞き返されて、それは…と口ごもる。
定やんは江戸に出て来た後、拾われた人が悪かった。路頭に迷っていたところを盗人の親分に声をかけられ、いつしか追われの身の怪盗になってしまった。

この役を錦さんに当てているのがウマいな~と思う。あの柔らかい、ぽわんとした少年的な面差し。こんな良い子が道を踏み外すには、きっと相当な葛藤があったに違いないと思わせる。
「友やんの縄にかかりてえ。友やんに手柄を立ててもらいてえ…」
かつての友が目明しになったと知った後。錦さんがたった一人、花道でつぶやく姿の哀れさは涙を誘った。

時の流れを象徴するのは三人の言葉づかいかもしれない。島やんも、定やんも、標準語になっている。江戸で出世するべく身を削って、ふるさとの河内の言葉は舌から失われている。
けれど臆病でのろまな友やんだけは、ずっと河内弁で通しているのだ。
「なんか、おった…どないしよ…」
友やんが、部屋に忍び込んだ見知らぬ気配に怯えるシーン。新さんが大きな背を縮めて、うずくまる姿がユーモラスだ。
「親方、わしも一緒に行く、一人でここに残さんとって下さい~…」
目明しの親方(桂木昇さん)から一人で持ち場にいるように言われて、十手を握って嫌がるシーン。頼りなくって弱虫で、でもつい周りの人が面倒を見たくなってしまう、そんなキャラクターが新さんの体に息づいている。

この“できない子”枠の友やんが、実は一番世の真理をわかっていて、私たちは彼に教えられる。
クライマックスの場面で三人が対面したとき。立派な着物に身を包んだ島やんは、縄をかけられた定やんを罵倒する。
「まったく、同じ村の者から泥棒が出るなんて。お前なんか恥だ、村の恥だね」
すると友やんは島やんに呼びかける。昔、お前が川に落ちたとき、飛び込んでまで助けてくれたのは定やんやったやろと。
「定やん、江戸に出て来てからいっぱい苦労したんや」
温かいふるさとの言葉のままで。
「なぁ島やん、もしかしたらお前もそんな風になってたかもしれんやんか――」

偉い、立派だと称えられる者も。後ろ暗い罪を犯した者も。
ほんの少し、つかんだ運が違っただけ。
ほんの少し、うまく生きられなかっただけ。

だから友やんは、縄をかけた定やんの肩を叩く。抱きかかえるように。
この光景は二重写しに見えた。一つは友やん・定やんの友達としての風景。そしてもう一つは、新さん・錦さんの実の兄弟としての。
――お前がどんな風になっても見捨てはしない。
重なった景色から、尽きない同苦と慈悲が溢れてくる。

劇団新版『三人出世』は、最後の最後にアッと驚く演出があった(未見の方のため内容は伏せます)。
「時が流れ場所は変わっても、変わらない友情はたしかにある」という根幹のメッセージが映画的手法で示されて、涙腺が決壊してしまった…。

新さんのオリジナル演出のうち、≪古典・定番もののアレンジ≫というジャンルで観ることができたのは『三人出世』『もう一つの瞼の母』『丹下左膳』。少なくともこの3本について思ったのは、受け継がれてきた物語の心を守った上での新しいアレンジなんだなぁ…ということ。
『もう一つの瞼の母』は忠太郎を兄弟二人の役に割ることで、忠太郎の抱える母恋がより視覚化されていた。
『丹下左膳』には現代ドラマの明るさもあるけど、ニヒルなヒーロー像は崩さないまま、優さん演じるヒロインのほうが破天荒なキャラにしてある。
とっても素敵な温故知新のあり方だと思う。

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3/29、会社退勤後に大島劇場の千秋楽に駆けつけると、畳はいっぱいの人で埋まっていた。
1か月ありがとうございました&また進化していく劇Araの世界を楽しみにしています!

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