王子様の未来―劇団天華・澤村丞弥さんの誕生日に寄せて―

背景にバラを飛ばしても違和感のない役者さん選手権第一位(個人調べ)。劇団天華の花形・澤村丞弥さんは、まるで少女マンガから抜け出してきたような方だ。


≪丞弥まつり≫からの1枚

美形と一口に言っても、好みは千差万別。目力強力なキツめの麗人もいれば、春の陽だまりのごときエクボふんわり美人もいるわけで。
でも丞弥さんの癖のない美しさは、好みの壁をするんと抜けて、ほとんどの人が「キレイな人ね」と頷けるであろう涼しさがある。

CIMG3375.jpg
女形のきらびやかな姫っぷり!

さらに声も甘やか。踊りもしなやか。そんでもって人に接するときは丁寧で優しく、笑顔を絶やさず…誰に対してもニコッとして「いつもありがとうございます!」
わわ、リアル王子様だ~(;’∀’)
昨年のバレンタインデーの公演では、さすがと言うべきか、両手いっぱいの紙袋にチョコをもらっていらした。

でも。大人気の花形さんは単に“きれいな役者さん”に留まらないようだ、と遅ればせながら気がつくことができたのは昨年7月。個人舞踊【新無法松の一生】を観てからだ。イントロが流れたとき、え、丞弥さんが無法松!と意外な選曲に驚かされた。

CIMG0568.jpg
“啖呵切るより手のほうが早い 無法松よと なじらばなじれ”

CIMG0562.jpg
“おいさんはのぉ ぼんぼんがこぎゃん小まかぁとっから 育てちきたっとぞ”

この日初めて踊られたそう。容貌がきれいすぎて、武骨な車夫に似合っていたかというと、ややぎこちなさもあったけれど。
むしろ印象に残ったのは、無法松というキャラクターの形を素直に体に乗っけようとしていたこと。顔を悲しげに歪ませて、ぼんぼんに手を伸ばす姿。役へのまっすぐな向き合い方が清々しい余韻を残した。

以来、ちょくちょく丞弥さんの表現の楽しさに出会えている。
たとえば【浪花恋しぐれ】。

CIMG6845.jpg
“泣きはしません つらくとも いつか中座の華になる”

放蕩家の噺家・桂春団治を歌った歌。多くの役者さんが春団治になりきって、荒々しく怒鳴ったり酒をあおる振りをするけれど。丞弥さんはスッと膝をついて客席にお辞儀をし、“これから落語を一席”という場面を作っていた。

鮮やかだったのが【津軽平野】。面を使って、歌の中に出てくる“親父(おどう)”と息子の二役を見せる。

CIMG8387.jpg
“津軽平野に雪降る頃はヨー 親父(おどう)ひとりで出稼ぎ仕度”

CIMG8392.jpg
“夢もしばれる 吹雪の夜更け”

持ち味だなー…と思わされるのは、かなり具象化された世界観にも関わらず、くどく感じないこと。「澤村丞弥のステージでした」とアナウンスされた後は、常々、涼風が吹いたような爽やかさが場に残っている。踊りが素直に曲に溶けていくのだ。
多分、カッコよく見せてやろうとか、上手く見せようみたいな自意識が薄い役者さんなのじゃないかと思う。

思えば、芝居にもカッコつけがない。老人役なら老人らしく、悪役なら悪人らしく、本質をとらえようと丁寧になぞっていかれる。
丞弥さんの持ち役で私が好きなのは、『丸髷芸者』の老いたお義父さん役だ。千夜座長演じる元芸者の嫁を非常に嫌っているが、最後、出ていく嫁にお義父さんは自ら下駄を揃える。そして自分の誤解ゆえの意地悪を詫びる。何度も何度も頭を下げ、腰を曲げて。
「この場面で涙がこぼれました」
観劇に誘った友人が言っていた。

丞弥さん主演芝居でいえば『遊侠三代』。役どころはゴリゴリのやくざの親分・川北長治!
終盤のワンシーンが印象的だ。長治は、子分の長吉(神龍副座長)の亡骸と、兄(千夜座長)の亡骸に挟まれる。両方を交互に見て口元に手をやり、かすかに息を飲む丞弥さんの横顔。
――どうしよう、と声が聞こえるようだった。
“親分”と“弟”の立場の狭間で揺れる心。この長治は青年のみずみずしさだ。ほっそりした甘い顔立ちに川北長治というキャラクターを乗せたら、こんな風になるのかと新鮮だった。

CIMG7711.jpg
千夜座長との相舞踊【お島千太郎】。千夜さんお島に「世話女房に」と告げる、丞弥さん千太郎の清冽さが光る。

いつもきれいに、爽やかに。その上でちゃんと“役らしい”。だから、花形さんはこんなにも愛されるのかもしれない。
「丞弥っ!」
≪丞弥まつり≫の日、客席から一斉にかかるハンチョウを聞きながら思った。

きっと30代、40代と歳を重ねられるにつれて面白くなる役者さんだ。表現者として、より滋味深く。
けれど何年経っても舞台に吹いているのは爽風なんだろうな。優しい笑顔に皺が増える頃になっても、客席から黄色い声が飛んでいるのだろうな。

…と、ずいぶん先走ってしまった。本日2/20、花形は30歳を迎えられたばかり。祝福すべきお誕生日に乾杯!🍸
これからどんな扉を開いていくのだろう。丞弥さんならではの役らしさを、どんな場面で見つけることができるだろう。

CIMG3271.jpg
CIMG7808.jpg

無法松は、春団治は、王子様スマイルで微笑む。
役者・澤村丞弥の未来に乾杯!


【劇団天華 今後の予定】
2月 大江戸温泉物語あわら(福井)
3月 奥道後壱湯の守(愛媛)
4月 宝劇場(福岡)
5月 城山温泉(香川)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川)

にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)