劇団KAZUMAお芝居「花かんざし」

2013.2.9 @くだまつ健康パーク

東京から新幹線で4時間半。
観劇仲間とつつく駅弁に絶え間ないお喋りがあれば、舌は休む暇もなく。
気づけば車窓は山口の空、
やって参りました、くだまつ健康パーク!

遠征初日のお芝居は、「花かんざし」という美しいお外題。
地元の常連の方から「このお芝居は泣くわよー」と教えていただき、期待に膨らむ胸。
2か月ぶりに観たKAZUMAのお芝居は、ああやっぱり、優しい切ない手触り。

写真・藤美一馬座長(2/9舞踊ショーより)


※いつもの通り役名は耳で聞いたまま、当て字↓

物語の始まりは殺人の場面。
盲目の八重(霞ゆうかさん)が、兄(冴刃竜也さん)に連れられて目医者に行く道中。
物盗り(藤美真の助さん)に襲われ、兄は死んでしまう。
途方にくれる八重を助けたのが、通りかかった源さん(藤美一馬座長)だった。

この源さんの人柄が、お芝居全体に滲む。
腕の立つ博打打ちで、喧嘩も滅法強く、人望厚い。

弟分の信太郎(柚姫将さん)が、もめ事を起こして追われる身になったとき。
助けてくれと縋られた源さんは、ため息一つで
「ああわかったわかった、俺がなんとかしてやるから」
でも、信太郎が自分の言う事を聞かないと、
「じゃあ俺もお前の頼みは聞かねえ、斬られて死ね」
そんなドライな一面もある、頼れる兄貴分。

でも八重に対しては態度が全然違う。
自分の家で八重の面倒を見ているうちに、芽生えた思い。

甘ったるい声で「お八重ちゃん」。
信太郎相手にすら何度もためらいながら照れながら、
「だから、いろはの五文字目だ」。
ほ(惚)の字と言うのに、さんざ迷って。

漢気溢れる兄貴分が、そっと抱えた淡い恋心。
このシチュエーションだけで、なんともたまらないじゃあありませんか!

けれど源さんには、八重に恋を打ち明けられない理由があった。
思いのままに行動できない枷があった。

源さんの右頬には、醜い大きな火傷の痕があるのだ…。

観ながら思い出したのは、フランスの戯曲。
シラノ・ド・ベルジュラック。
人並み外れた大きな鼻を持つ貴族、シラノのお話。
醜い自分では愛する女性・ロクサーヌは喜ぶまいと、シラノは美しい青年を自らの身代わりにする。

源さんも同じ道を取った。
八重に「お兄様の顔を触らせて」と頼まれて。
(余談だけどゆうかさんの声で「お兄様」っていう可愛さは異常)
困り果てた挙句、信太郎に頼む。

「お前の顔を、俺だと言ってお八重ちゃんに触らせてやってくれ」

心のきれいな「お兄様」は、顔もきれいだと信じている八重。
「俺のガサガサした顔なんて触ったら、乙女心に傷がついちまうだろうが…」

――源さんの恋は、愛情より先にためらいばかり。
顔の火傷のために、女性に免疫がなかったのか。
大事なものをそっと扱うように、
八重とのささやかな生活が壊れないように。
そんな演技が、一馬座長のふわ、ふわ、としたニンに合うのです。

しかし源さんの心遣いは、仇になった。

ラスト、妙薬で目が見えるようになった八重は。
手で触った顔――火傷なぞない顔をちゃんと覚えていて、
「お兄様!」
と、真っ直ぐに信太郎に駆け寄るのだ。

呆然とする源さんの、背後で抱き合う弟分と八重。
この場面、一馬座長は一言も台詞を発しない。
ただ表情と動作だけで語る。

唇震わせ、
空を睨み、
と思えば地を嘗めるように見つめ、
ぎりぎりと握られた手が腰の刀に伸びる。

なぜ自分はこんな顔なのか。
なぜ信太郎のようにきれいな顔でないのか。
なぜ。
言葉にならない哀しみが、一馬座長の体に収斂する。

けれども次の場面では、源さんの顔から悲哀がふっと抜け落ちて。
諦念ともとれる、明るい笑顔を浮かべて。
「幸せにな!」
信太郎に八重を託して、自分は旅の空へと去っていくのだ。

そんな、ちょっと待って!
お八重ちゃんだって本当のお兄様がいいに決まってるのに!
私の胸中の叫び虚しく、涙目でちょっとぼやけた視界の中、幕は閉じる。

「花かんざし」は裏切りの色。
身代わりをやるうちに八重に惚れてしまった信太郎が、源さんの不在を狙って、
八重に贈った花かんざしのこと。
それが題になっているあたり。
源さんという主人公には、最初から「裏切られる哀しみ」がつきまとっているのだな、と思ってみたり。

飲みこんだら苦しくなるような。
胸を押さえたくなるような。
切ない、でもどこまでも優しい、恋の色。

その色がまだ漂っているような舞台で、始まった口上挨拶。
一馬座長と将さんのいつも温かなコンビが、明日以降のお芝居の予告をしてくれます。

…思わず、手で口押さえてしまった。
翌日のお芝居は、「生首仁義」だと言われたとき。

たった3日間の遠征、3回しかお芝居のチャンスがない中で。
一番忘れられない、原点のお芝居に当たるとは!
客席でそわそわもぞもぞ、私のテンションはえらいことに。

「生首仁義」への私の思い入れも含めて、くだまつ健康パーク編は次回に続く。
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