劇団KAZUMAお芝居『兄弟仁義 男の唄』―戯作者に敬意を―

2016.12.2夜の部@三吉演芸場

戯作者――芝居を書いた人のことは、大衆演劇の世界では多くの場合どこにも残らない。
けれど芝居は残る。
繰り返し上演される物語の中に、その人の世界観は響き続ける。


『兄弟仁義 男の唄』は強いホンだ。どんな配役で上演されても、その配役ならではの煌めきを引き出す。この芝居に3回当たり、3回とも違う配役で観て、改めて台本の強さを思い知らされた。
現在の劇団KAZUMAの話に入る前に…少しだけ懐かしい話にお付き合いくださいませ。戯作者に敬意を示して――3年前、『兄弟仁義 男の唄』を劇団KAZUMAのために書き残された、美影愛さんという役者さんの話をまずしておきたいのです。

美影愛さん(2013/10/14)


最近劇団KAZUMAを観始めたという方も、嬉しいことに拙ブログを見て下さっているので、僭越ながら説明を。
美影さんは九州出身の大ベテラン。2013年の数か月、劇団KAZUMAに指導役として在籍していた。私が通いまくった年9月の浅草木馬館、10月の篠原演芸場でも、劇団メンバーと一緒に舞台に出ていた。
藤美一馬座長が、木馬館での『三代の杯』について。
「美影先生の演技に引っ張られるように、演じながら涙が出た」
と、座長自身も驚いたように語っていたのが思い出深い。
美影さんは『兄弟仁義 男の唄』以外にも、『藤沢涙雨』という作品も残されている。

で、先日12/2(金)の話。改めて、この芝居は劇団KAZUMAの財産だなぁ…と思わされた。

1.主人公と敵方の深い関係
筋そのものはシンプル。良いやくざ一家と悪いやくざ一家がいて、悪いほうの親分が良いほうの親分を闇討ちするという、大衆演劇あるある話だ。「良いやくざ一家」のメインとなる人物が直次郎(藤美一馬座長)。「悪いやくざ一家」のメインは大島の親分(龍美佑馬さん)。

この直次郎と大島の関係性が、大衆演劇の芝居の中ではかなり特殊だと思う。普通は単純に憎い敵同士となるところ、直次郎と大島は昔馴染みという設定だ。二人は敵同士なのだけど、互いにひとかどの男として、相手を誰よりも理解している。
直次郎は大島に言う。
「てめえは昔からそうだった、その薄汚ねえ根性が俺は気に入らなかったんだ」
大島は直次郎をにらんで言い返す。
「お前が俺の傍にいさえすれば、こんな回りくどいことはせずにすんだんだよ。なのに何度誘っても、お前は俺の仲間になりゃしなかった」

藤美一馬座長(2016/12/2)
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直次郎役の一馬座長。病を患っているという設定もあり、やや老境に差し掛かった男の風情がどことなく漂う。

龍美佑馬さん(2016/12/2)
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大島役の佑馬さん。普段の優しさを引っ込めて、貫禄たっぷりの悪役。「しくじるんじゃねえぞ」と部下に指図する声も脅すように。

大島という人物が切ないなぁと思うのは、敵にも関わらず直次郎を“直さん”と親しみをこめて呼んでいる点だ。
「直さん、聞いたよ、あの“喧嘩竜”が一家の二代目だって?やめとけやめとけ、まだ若すぎらあ、一家の金看板を背負うのは無理だろう」
大島は、直次郎に跡を継いでほしかったんじゃないだろうか。自分と対等なライバルになるのを望んでいたんじゃないだろうか…。
二人の間に横たわるのは、同類意識なのか、いっそ愛憎なのか。

昨年、一馬座長はこの芝居について、「直次郎と大島の関係をもっと深くしたら面白いんじゃないかな、という気はします」とおっしゃっていた。主人公と敵方の言葉にしきれない関係性が、芝居を立体的に見せていることは間違いないと思うのです。

2.登場人物全員が役割を持って動く
さらにこの芝居は、登場人物の誰に注目しても面白い。いわゆる“モブ”がおらず、群像劇っぽくなっている。

たとえば良い一家のほうの若い衆・政(柚姫将副座長)。兄貴分である竜次が大好きで、直次郎のことも尊敬している、はねっかえりの鉄砲玉。
「直次郎のおじきが来てるんですかい?二、三日、ゆっくりしていっておくんなせえ!」
政は直次郎の来訪を飛び上がって嬉しがり、
「せっかくおじきが来てるんだったら、以前おいしいって言ってた藤兵衛とっつぁんの酒を飲ましてやりてえ!待っててくれ!」
と一家を飛び出していく(その先に悲惨な運命が待ち受けているのだが)。全体的にハードボイルドな芝居に、明るさ・純粋さをもたらす役割だ。

柚姫将副座長(2016/12/2)
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政役の将さん。芝居が重々しい場面ばかりにならないように、いつもよりワントーン高い声で演じられていたそう。この明るさ込みで、政は将さんのニンそのものだった!

それから一家の二代目を継ぐ竜次(千咲大介座長)。一家を背負う立場ながら、若さゆえ、怒りの沸点が低くピリピリ。けれどとても仲間思いだ。
「弔いの言葉の一つでも言ってくれるのかと思えば…てめえらはもう許さねえからな」
家にやってきた大島をにらみ上げ、一対一の喧嘩を申し込む。大島に斬られ、殴られ、半殺しにされても、血走った目で噛みつくように立ち上がる。

千咲大介座長(2016/12/2)
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竜次役の大介さん。鋭いまなざし、スマートな身のこなしが印象に残った。

出てくる人ひとりひとり、それぞれの物語を負っている。
「劇団KAZUMAはみんなに良いところがあって、だからみんなに見せ場を作った」
3年前の初演時、美影さんはそんな風に話されていた。

古い芝居を口立て稽古で受け継いでいく文化が強い大衆演劇。だから、芝居の筋については正直わりかし粗いなぁと思うものも時々あります(^-^; 主役がカッコよければOKだったり、決め台詞の詰め合わせみたいな芝居だったり(もちろん、それゆえにキラッと光るところもたくさんあるのだけど)。演者がとても優れているだけに、時には整った物語でこの人たちを観たい…という願望もあったりする。

そこへきて戯作者が創った芝居は、いったん物語が完成した上で、演者による肉付けが始まる。だからベースが強い。役者さんがのびのびと個性を発揮できるだけの、強固な受け皿がある。

劇団に関わった人がいなくなっても、芝居は残る。舞台に残る。
『兄弟仁義 男の唄』――フィルム・ノワールばりの陰影を持つ群像劇。いつか劇団KAZUMAのマスターピースとして、そして大衆演劇の特異な作品の一つとして、知られるようになってほしい一本だ。

【劇団KAZUMA 今後の予定】
1月 鈴成り座(大阪)
2月 八尾グランドホテル(大阪)

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