きらきらひかる ―劇団天華・澤村千夜座長― 

幸せな夜でありますように。

「ホントに変わったこと、変わったことを常に考えるようになって」
常々新しさを標榜する、この役者さんの舞台で。
とりわけ印象深い二つの夜がある。

澤村千夜座長(2015/12/20)


一つはかなり懐かしい。昨年11/22の夜の部。篠原演芸場には“定次郎”がいた。
「あんちゃん、祭りって行ったことあるか?そりゃあ楽しいんだ。貧乏人も金持ちも、年寄りも若いのも関係ねえんだ」
へらり笑って生きる男の、押し隠した悲しみ。
芝居『釣忍』は、千夜さんがお面を着けて舞台を横切っていく場面とともに、記憶の中の悠かなところに今も残っている。

この11月の篠原演芸場公演で、劇団天華を初めて観た。
それまで、評判から勝手に持っていた先入観は、言うなればキラキラ、ギラギラ、グリッター。
“ショーが華やか”とか。“若いイケメン揃い”とか…

シンと静まった篠原の舞台では、定次郎が一人歌うようにつぶやいている。
「祭りの太鼓はてんつくつ、てんてんつくつ…」
それまで、『釣忍』という芝居は単に夫婦愛のお話だと思いこんでいた。けれど舞台上には、人が生きていくことの哀切が沁み通っていて。
――頑迷な自分の頭の中のカーテンが、サッと取り払われる音を聞いたのだ。

それからこっち、1年。仕事の出張にくっつけて、旅行の前後とくっつけて、あるいは単身遠征で。
三重・ユラックス。石川・大江戸温泉ながやま。大阪の色んな劇場…。あちらこちらに出かけては、天華の芝居に出会いに行った。

思い出の中にひときわ賑やかな、もう一つの夜。

(2016/7/20)
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(はにかむ座員さんたちと対照的な、座長の迷いなきポージング!)

ええと、度肝を抜かれた…
今年の7/20の夜の部、ながやまで初披露だったラストショー『罪と夏』。ジャニーズに疎い私は知らなかったのだけど、直前に発売された関ジャニの曲だと、当時Twitterで教えてもらった。
その日の千夜さんの口上いわく、「舞台でビーチバレーする劇団観たことありますか?ないでしょ?!」
ですね!(笑)
実に上手に、ビーチボールをぽーんと打っていらした。

他にも、洋風ドレスのショーとか、空中で四回転とか、数百万円もする電飾衣装とか…。

(2016/10/10)
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こんな演出に出くわすたび、頭の古い私はマジか…と目を丸くするのだけど。

「誕生日公演が来るたびに特別的なことをするようになったんですけど、段々段々お客さんが期待するようになって」
「その期待に応えなきゃいけないというハードルが段々段々上がっていくうちに、今年何しよう、何しよう、て」
そういえば、4月にSPICE連載のインタビューをさせていただいたとき、そんな風に発言されていた…(SPICEインタビュー記事)。

2015年のお誕生日公演のDVDを見てみる。最後、座員さんがそれぞれメッセージを述べていき、ラストに座長本人が登場する。
公演後のちょいお疲れの表情ながら、カメラに向かってニッコリ、「まだまだ澤村千夜は飛び続けます!」
1回や2回のアイディア勝負ならトライする人は多いだろう。それだって十分勇気の要ることだ。
じゃあ、何年も“型破りな人”をやり続けるのは―?

ずらりと大入り数がさらされた劇場入り口の光景が浮かんでくる。20近くの劇場・センターがひしめき合う大阪。劇団天華のホームグラウンド。
東京者にしてみれば、こっちは特選狂言、あっちは珍しいゲスト、大阪って贅沢ー!と羨ましいばかりだけど。
舞台をやる側にしてみれば、こんなにオソロシイ戦場もないのだろうな。
「似たようなショー、○○劇団でも観たことあるよ」
「○○座長のほうがサービスええよ。愛想もある」
送り出しで客席で、小声であるいは大声で飛び交う。
だから、いずれの劇団の座長さんも、死にもの狂いで戦っている。
背には座員。腕には守るべき芸。

かの座長さんも、ここに参戦し続けてきた。“型破り”という極彩色の武器をかついで。
背には劇団。天華旗揚げから8年。
「たとえ変わったことやってても、他の劇団でやってたら、こんなんはあの劇団でもやってたよって言われるし…」
インタビュー、苦笑交じりの言葉はそんな風に続いた。
ぴかぴか光る電飾の下、かついだ重さは客席の想像の何倍。何十倍。

それでも日々は続く。舞台は続く。
7月、誕生日公演を間近に控えた澤村悠介さんに対して、こんな口上があった。
「悠介の『三浦屋孫次郎』では、どっか一か所でいい、俺のやり方から変えてほしい。セリフ一つでも、音楽でも、立ち回りでもいいから」
「俺も師匠のやり方から一つ一つ変えてきたし、上手くいくときも、上手くいかないときもあったけど、それでも新しいことを試していかないと…」
見たことのない何かであり続けようと。
たとえ逆風が吹くときも、美人な座長さんは意地でも前を向く。

この1年間、劇団天華の客席にちょこちょこ身を置いてみれば。
舞台を見つめるお客さんのやわらかな声が、私の耳に響いてくる。
「座長の芸者役がとても好きで…ちょっときつい女の人のようなところもあり、でも優しいようなところもあり…」
京橋羅い舞座でお隣になったご婦人のつぶやき。
「千夜さんの場合、定番のお外題でも、それぞれの芝居に独自の解釈があるのがいいよね。だからね、こんな遠くまで観に来ちゃうの」
遠征先でよく出会う同じ関東ファンの方が、熱弁する声。
「数年ぶりに天華を観たら、わ、芝居がいい!って。とにかく一生懸命演じてるし。それからオーエス毎日通うようになったの」
芝居好きの大阪ファンの方は、パッと顔を輝かせて語った。

どんな日も、毎日、続くお芝居。
演じる側にしてみれば、調子がイマイチの日も、仕掛けたことがうまくいかない日も、気持ちが入らなかった日もあるのだろうけれど。
『呪いの千曲川』の笑いを誘う愛嬌。『芸者の誠は石清水』の身を切るような悲嘆。『峠の残雪』の親愛に満ちたぬくもり。『丸髷芸者』の尽きないやさしさ。
大粒のそれらが、観客の胸に、どんなにたっぷりと喜怒哀楽を波打たせているか。
ああでもない、こうでもないと役に手を伸ばし続けてきた、絶え間ない試行錯誤のしぶきが。
どんなに圧倒的に、みずみずしいことか。

それは一見目立たないけれど。
もしかしたら、どんな物珍しい出し物にも勝る“型破り”。

「みんなで一緒に飲んで踊って、三日三晩酔っ払って…楽しいぜ、祭りはよ」
打ち出される定次郎の“心”の量に。
新参ファンの中で、古びたカーテンはたしかに開いたのだ。

10/21~23は初乗りの梅田呉服座で三日連続のお誕生日公演。芝居『雪之丞変化』やショー『鷺娘』を予定されているという。
今度開くのは、どんな風景だろう。

「千夜さんの名前って、大衆演劇界の中でも良い名前じゃない?」
と友人が言った。
役者さんの名前はみんな思いのこもった良い名前だけれど、名は体を表すという意味で、千の夜という名づけは実際冴えている。
どんな日も、役は、心は、まるで星の降るごとく。
キラキラ、ギラギラ、グリッター。

幸せな夜でありますように。

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これから飛ぶ夜空は、なおきらめく。
HAPPY BIRTHDAY!!

【劇団天華 今後の予定】
10月 梅田呉服座(大阪)
11月 四国健康村(香川)
12月 後楽座(岡山)
1月 池田呉服座(大阪)
2月 大江戸温泉物語あわら(福井)

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