劇団新お芝居『俺は…太郎』―未来のスパイス―

2016.8.28 昼の部@茂美の湯・もさく座

喜劇で今年一番笑った、というくらい笑った。
新座長がゆったりと大股で舞台を踏み、肩にかついだ刀を揺らす。
「これ(刀)か…?これはな、千歳飴だ」
ニヒルに唇を歪め、かすれの混じったイイ声で言うのに爆笑。
そして、笑いの中に息づいていた新しい芽。
出会ったことのない、大衆演劇の外側に開かれた目。

龍新座長(2016/8/28)


※今回、新作ということで芝居の本筋にほとんど触れていません。気になる~という方がいらっしゃいましたら、ぜひ劇場でご覧ください!

「新さんのオリジナルの何が良かったかっていうと、新しい気づきがあったこと!」
友人が以前観た劇団新のオリジナル芝居に、いたく感銘を受けていたのを見聞きして。
またTwitterに流れて来るフォロワーさんのドラマチックな写真に惹かれて。
関西に行ってしまう前に劇団新を観ようと、初めての茂美の湯まで約2時間かけて来てみれば。
偶然にも8/28(日)は、昼夜ともオリジナル芝居!やったね!

昼の芝居『俺は…太郎』は冒険譚を骨格にしたコメディ。夜の芝居『黄昏空の下で』は少年少女の純愛が描かれる悲劇。
どちらも、新座長の現代っ子感性がほとばしっていた。セリフや演出の端々に、青々しい想像力の枝葉がパキパキ伸びていく。
新さんは映画大好きでいらっしゃるらしく。どうりで、回想シーンと平行した立ち回りなど、すごく映画っぽいと思わせられる演出がちらほら。

中でも斬新だったのが『俺は…太郎』。小龍優さん演じるやくざの下っ端・三太郎を主役にした芝居だ。

小龍優さん(2016/8/28)
CIMG1690.jpg
友人たちにもファンの多い優さん。16歳にしてこの貫禄と、かわいらしさが同居しているのに感嘆。

「海賊の荒波の鬼五郎の首を獲って来い。いいか、ここにくじがある。このくじの先が赤かった奴が、一人で行くんだ」
親分(秋よう子さん)が差し出したくじ引き。
一番先に引いた三太郎のくじの先は…
「親分、これは赤じゃないですよね」
「いや、赤だろ」
「緑でしょ!俺にはこれ緑に見えるもん!」
「赤だよ。三、お前で決まりだ」
三太郎は必死に逃れようとするも無駄なあがき。

「俺一人でって、死ににいくようなもんじゃん!」
どうせ生きて帰って来れない命。出発の前夜、三太郎はやけ酒をあおりに居酒屋に入る。
そこには、変な亭主がいた。サングラス(的なもの)をかけた新座長が、戸惑う三太郎の傍らに腰掛けて、粋な旅人風に微笑む。
「お前…何のためにここへ?」
「いや、酒飲みに来たんだけど…」
まったくだ…(笑)

「熱燗もらえるかな」
と注文すれば、亭主はフッとうなずき、非常にイイ声を奥の間に飛ばす。
「熱燗いっちょう!」
「この店、お前以外に奥さんとか、誰かいるの?」
「俺のこの風貌を見て、人がいるように思うのか?みんな居つかないでいなくなっちまったよ」
「じゃあお前が行かないと熱燗出てこないじゃん!」
「はっはっ。お前、面白い奴だな」
「面白いのはお前だよ!」
まったくだ!(笑)

居酒屋の亭主がなんでこんなにおかしいと思ったか、というと。
新座長が意図してか、意図せずしてかはわからないけど。
彼の行動の一つ一つが、たしかに“大衆演劇あるあるのおさらい”になっているからだ。

三太郎に何度も言う「お前、面白い奴だな」っていうのも、二枚目の主人公がアホな三枚目と出会ったときとかによく言うセリフ。この芝居では、それを言っている奴のほうが面白い(笑)
亭主が引っ込むとき、幾たびも振り返って低―い声で、
「三太郎さんよぉ、これだけは言っとくぜ…」
これも影を背負った二枚目役のセリフあるある。それがこの芝居では、三太郎に「しつこいよ!さっさと入れよ!」と突っ込まれる(笑)

従来の大衆演劇様式がベースにあった上で。
「様式を過剰にすると笑いになる」ということが、新さん・優さんのやり取りの中でイキイキと実践される。
映画やテレビ、ほかの芸能を日常的に見ている人ならではの斜め上からの切り口は、ぴりっとスパイスみたいに効く。
このキャラ、実はすっごく新しい何かじゃないか?!と、もさく座の客席でわくわくしっぱなしだった。

居酒屋の亭主だけにフォーカスしたけど、芝居は居酒屋の場面が終わってからが本題だ。三太郎の下に、猿吉(龍錦さん)、お雉(新燿さん)、犬次郎(龍児さん)が揃い、鬼五郎を目指す。
心優しい猿吉は、錦さんのやわらかな持ち味そのものだったし。
燿さんのお雉は、コメディの中にも、恋に真剣な健気さがあったし。
龍児さんの犬次郎は、のんびりしたトボケ感と「世を知ってる」感が絶妙な混ざり具合。
オリジナルのホンの中で、演じている一人一人がとかく活気づいていた。
そして最後にはアッと驚く仕掛けも。

「芝居が良いって最高に幸せ!」
「今日、楽しかったねえー!」
もさく座からの帰り道、友人と何度も言い合った。

一行はこれから、初の関西回りに行かれるという。
「関西でつくったものを、また来年以降の関東でどんどん出していきたいと思います!」
ニッコリして言いきる新座長の爽やかさ。

CIMG1794.jpg
この日の夜の部の個人舞踊「花は咲く」は、やさしい鎮魂に満ちていた。

若きクリエイターに福運あれ!

【劇団新 今後の予定】
9月:島田蓬莱座(静岡)
10月:ユラックス(三重)
11月:夢芝居(和歌山県)
12月:鈴成り座(大阪)

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コメント

いつも読ませて頂いてます♪

こちらの記事と出会って、大衆演劇を観はじめました。いいなぁ~、私もお魚さんになって釣られてみたい♪あぁ、50オ-バ-の座長大会があったら観たい♪
きっと情感ダダ漏れで溺れてしまうに違いない。ツイッタ-も拝見してます はい。
独特の雰囲気を放つ劇場は最初だけちょっとアレだったけど、慣れるのも早かった(笑)。
よし、木場館デビュ-ちゃうぞ!と前回の記事で思いました。
読者を明るいオ-ラで惹きつける。感じたものをこんなに上手に表現できるって才能ですね。お萩さんの記事には愛がある。大衆演劇自体にも大きな愛を感じる今日この頃。あれ、私の表現ちょっとおかしい(^_^;)。
コチラで劇団の下地を仕入れて観劇ってイイ♪沢山の劇団情報、楽しみにしてますね!(^^)!

>のん様

素敵なコメントありがとうございます。今朝コメントを読んだときから、とても嬉しくって一人でにまにましておりました♪書いてきたことへのご褒美をもらった気分です!
のんさんも、大衆演劇の世界を楽しんでいらっしゃることと思います(*^^*) この世界は役者さんもお客さんも濃い…。おっしゃる通り、独特の雰囲気を放つ劇場には、人間の喜怒哀楽がすべて漂っているみたいです。だからこそ一度ハマったら抜けられず、年々愛着が増していきます(笑)
言いたいことはいっぱいあるのになかなか筆力が追い付かず、いつも「必死」の二文字で書いてます(^^; それでも読んで面白いと言ってくれる方がいるのが支えです。
のんさんの言葉に、とても、とても、励まされました。感謝です!
今後ともよろしくお願いします♪

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