劇団花吹雪お芝居「踏切番」①桜恵介さんの清香役

2013.2.3 昼の部@篠原演芸場

写真・桜恵介さん(2/3舞踊ショーより)


如月に入り、浅草から十条に移ってきた花吹雪さん御一行。
篠原演芸場の舞台は客席と距離が近いので、
各人の放つオーラがさらに強烈に感じます。

さて、お芝居「踏切番」はNotお着物!(着物の役の人もいるけど)
時代は明治か大正か、?なのですが。
踏切という文明機器と、
工場の社長という西洋社会的なステータスと、
芸者というお江戸の名残りが、共存する時代であるらしい。
個人的に和洋折衷が大好きなので、お芝居始まった時点で「おお!」と内心歓喜。

春之丞座長・京之介座長の白シャツ黒パンツの出で立ちと、
かおりさん・恵介さんがたおやかに着こなす着物スタイルが、
踏切を背に一枚の場面に収まる。
この絵がもうたまらない。

そんな時代の、小さな田舎町の、小さな人々の物語。

あらすじ↓※役名は耳で聞いたまま、漢字はわからないので当て字をしています。
踏切番の彰人(桜春之丞座長)は、踏切に飛び込もうとしていた女性(小春かおりさん)を助ける。
話を聞けば、大きな工場の社長の奥さんだという。
そこへ訪ねてきたのが、彰人の妹で芸者の清香(桜恵介さん・女形)。
「好きな人ができたんよ」
その人は社長で、清香を身請けして結婚するつもりらしい。
清香の借金を返してくれ、芸者から足抜けさせてやれるという。

妹のつかんだ幸せに喜ぶのも束の間、彰人はハタと気づいてしまう。
その社長が、自殺未遂の奥さんの夫と同一人物だということに。
そして奥さんが自殺を図った原因が、社長の清香への心変わりだということに…。

真っ先に書きたいのは。
恵介さん演じる清香が素晴らしかったこと!

「なんで兄ちゃん、うちばっかり責めるん?!」

人の道に背くな、奥さんを死なせるな、社長のことは諦めろ。
兄の彰人にそう説かれて清香は叫ぶ。

「うちかて、幸せになりたいんよ…」

ベンチにうずくまって、震えながら絞り出すような言葉。

大仰に悲しみを表現するような動作はない。
体を守るように固くして、兄の説得に首を振るだけ。
だからこそ。
その固くなった全身には、清香の必死の思いが詰まっているように見えた。

やっと手に入れた幸せを逃したくない。
ここで社長さんの手を放したら、ずっと芸者から抜けられない。
兄は、
「お前にはこれからがある。でも奥さんには旦那さんしかおらんのや」
なんて言うけれど。
うちに「これから」なんていつ来るの?

そんな清香の言葉が気持ちが、俯いたままの恵介さんの体に押し込められているようで。

恵介さんの女形のお芝居は、「富くじ千両箱」でもお女中さんの役を観た。
このときも、切れ長の目が不思議な可愛さを発してるなぁ、と思ったけど。

「兄ちゃん、きっと喜んでくれると思って…」
所作の優しさから滲む色気には、今回初めて気づいた。

兄は、奥さんを犠牲にして社長と結婚するなら兄妹の縁を切るとまで言う。
泣く泣く清香は、兄に従う。

「死んだつもりで、社長さんのことは諦めます…!」

この決め台詞のときの恵介さんの見開かれた目、声!
死んだつもりで。
もう自分の人生にこんな幸運は巡って来ないかもしれないから。
だから死んだつもりで…
その言葉の重さを十分に伝えうる演技だった。

終盤、清香は兄に約束した通り、社長(桜梁太郎さん)の下を離れるのだけど。
なかなか未練の糸を断ち切れず、社長を何度も何度も振り返る。
最後は兄に手を引かれるようにして社長宅を後にする。

この場面の切なさ、辛さ。

置いてきてしまった幸せ。
するりと、手の中を抜けていった幸せ。
少し後ろを向けば、まだそこにあるんじゃないか。
少し戻れば、まだその端をつかめるんじゃないか。

でも振り返ってみても、実際には社長が奥さんと一緒にいるだけ。
手を放してしまった幸福が、遠ざかるのを見つめるだけ。

……やっぱり客席で涙目。

懸命に生きている小さな人々が、ささやかな幸福すらも逃してしまう。
元々悲劇が好きなので、こういうストーリーは好物だけど。
でも毎回、もれなく、泣きます。

さて次回も続き書きます。
本筋は切ないお芝居だったんだけど、笑いどころがもう、あまりに多くて。
そのほとんどを掻っ攫っていった、京之介さんの話!
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