いつか故郷に帰る日を―股旅コレクション―

縞の合羽に三度笠。
どこから来たのか、どこへ行くのか。

役者さんの、股旅姿が、好きです!
その日の舞踊ショーで股旅姿が出てくれば。
ありがたや嬉しやと心を潤し、草鞋からスッと伸びる足のラインや、刀にひょいとかかった手の粋な形を味わいつつ、デジカメのシャッターを押しっぱなしにする作業に入るのは、股旅神の信徒としてのたしなみというもの(※個人の意見です)。

仕事で心が疲れたときの必須アイテム=フォルダの中の股旅画像を眺めていたら、この人の三度笠良かったなぁ、この人もいいなぁ、と。
一枚一枚を眺めつつ味わいつつ、のんびり夏の晩酌をするような気持ちで、ぺたぺたと股旅写真をブログに貼っていきたくなりました。
一緒に見てやるよという方は、拙いばかりの写真にしばしお付き合いくださいませ~。



劇団悠・高橋茂紀さん(2015/3/22@浪速クラブ)

のっけから、ほー…っと息をつきたくなってしまって書く手が止まる(笑)。下町かぶき組所属の高橋さん、私は「劇団悠」でお見掛けしている。芝居ではなぜか高橋さんの悪役ばかりに当たるのだけど(『お吉物語』での伊佐新次郎役とか)、舞踊では陽気で晴れ晴れしたキャラクターなのが楽しい!
この個人舞踊には去年の浪速クラブで出会えた。笠の下からのぞく、ススっと筆で書いたような目鼻立ちが美しい。この旅人は何かわけありなんだろうか?視線は前を見ているのに、どこか捨てきれなかった未練を感じさせるのがとても味わい深いたたずまいだった。

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きれいな立ち姿。どなたかというと…

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劇団KAZUMA・KEITAさん(2015/11/15@浪速クラブ)

劇団KAZUMAの誇る美青年!目ぱっちりの少女漫画のヒーローみたいな顔立ちのKEITAさんが古典的なものを踊ると、エキゾチックな魅力が出て来る気がします。写真の舞踊は『潮来笠』。心が定まりきってない感じも、旅を始めたばかりの若者らしく、みずみずしい。

そう、当たり前だけど股旅って“旅をしてる”!どこかからどこかへ行こうとしている。
だから衣装そのものの物語性+役者さんの持ち味と演技力で、いろ―んな物語をわくわくと妄想できる。ダーッと妄想を書いていきます!

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劇団都・藤乃かな座長(2015/10/10@島田蓬莱座)

粋!熱い!カッコイイ!立ち舞踊だと、客席から自然に黄色い悲鳴が上がるかなさん。股旅姿は、かちっと留め金の音がするように形が決まる。
この舞踊は、手にした赤い玉のかんざしが物語を想像させた。誰かに会うのか、探すのか?島田蓬莱座の小さな舞台に、旅人の行き先を追っかけたくなるような、イキイキした世界が開かれていた。

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たつみ演劇BOX・小泉ダイヤ座長(2015/1/1@浅草木馬館)

ちょっと古いお写真ですが、たしか曲は『沓掛時次郎』。恋しいおきぬさんに向けて、思いを乗せたセリフ付きで熱演でした。お芝居でもダイヤさんの股旅姿は、まっすぐ!かつ柔らか!な感じが、稀有な汚れのなさだなぁと思う。

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恋川純弥さん(2016/3/20@梅田呉服座)

こちらも『沓掛時次郎』。今年3月の座長公演からの一枚。純弥さんはとにかく姿が美しかった!背が高くて脚絆を巻いた足がすらーっと長くて、ぐっと落とした腰や、刀を一振りする腕に見惚れてしまう。

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劇団新・龍新座長(2016/3/27@小岩湯宴ランド)

舞踊中のお写真じゃなく口上のお写真(このときの芝居も股旅もの)。私の中で股旅姿が絵のように似合う若手座長・1位独走中の新さん!線のハッキリした顔立ちに懐かしい情味が漂っている。特に今年2月に立川けやき座で観た芝居『関の弥太っぺ』は、原作から抜け出てきたような生命力あふれる弥太っぺに目を見張った。

さて義理と人情の綱渡り、そんなカラッと陽気な股旅姿はもちろん素敵だけども。
やっぱりやくざ者なので、博打に喧嘩、血なまぐさい裏通りの匂いがするのもいいな!というわけで次はちょっと暗めな写真を3枚。

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劇団天華・澤村千夜座長(2016/2/14@堺東羅い舞座)

曲は『一本刀土俵入り』。だいぶ美形な駒形茂兵衛でした。どん!と大きく足を鳴らして土俵入り。千夜さんの股旅姿は、描線がまろやかというか、アウトローらしいアソビの世界の雰囲気が漂うのが私的にはツボです。人生きれいなことばかりじゃないけど、なんだかんだ道中に楽しみを見つけられそうな、享楽的な癒しがにじむ。

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たつみ演劇BOX・小泉ライトさん(2015/2/3@篠原演芸場)

ここ1、2年でめっきり大人になって、「ライトくん」とは呼べなくなってきたライトさん。ポップス舞踊をよく見るけど、たつみ座長のキリッとした線の鋭さを受け継いでいるのか、古典ものもよくお似合い。この旅人は何か秘めごとでもありそうな、影にひらめく目が美しい。

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桐龍座恋川劇団・恋川風馬さん(2015/4/11@篠原演芸場)

いま一人、若々しいやくざ者!風馬さんはハンサムぶりを活かした今風な舞踊に当たることが多いので、この舞踊に当たったときは嬉しかったなぁ。風馬さんの硬質な暗さがハッキリと形を現してる気がします。これから喧嘩にでも向かうのか、重い役目でも背負ってるのか…そんな想像をかきたてる、夜を行く股旅。

いずれの股旅も当然ながら旅の最中。それは大衆演劇の役者さんたち自身の生活とも重なる。前の土地から次の土地へ、寝るところを変え、立つ舞台を変え…
だから舞台の上の股旅姿は、一見、観客席の暮らしと対極の形だ。私たちの多くは“家”を中心に、いつも同じ場所で寝て、同じところへ働きに行く。

でも。
私たちの体はせわしない営みの中にあっても、意識だけは漂流する。
ふいに手を止め、空を仰いで、自分は今何をしているんだろう…?自分の本当にいるべき場所はどこなんだろう…。そんな問いかけにつつかれて、自身を天から見つめる瞬間が誰にもあるだろう。
現実を飛び立とうとする心がうっすら夢見る、“ここではないどこか”。

その夢の温度が、三度笠を被って、縞の合羽を羽織って、結晶として舞台に現れたとき、ハッと無意識に何かが響いてくる。
家を出て、社会からもはみ出して、見たこともない故郷へ帰ろうとうずく。

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橘劇団・橘大五郎座長(2015/8/2@浅草木馬館)

どこから来たのか、どこへ行くのか。
誰かに会うのか、探すのか。
家は影までとうに失い、昨日離れた地は遠く、触れ合う知らぬ人の袖、明日は明日の空の下、いつか故郷に出会う日を―

いやぁ、股旅って本当に良いもんですね~。

最後の大五郎さんの一枚は、粋っぷりといい線の美しさといい、なんかこう、ザ・お手本!って感じです。出てきた瞬間、審査員全員10点!みたいな。

聞くところによれば、昔より股旅のお芝居・舞踊は減る傾向にあるとか…。だからこそ、ここに上げた写真のような、若い役者さんの股旅スピリッツに敬意を表したくなる。

今日もどこかの劇場・センターで。
青暗い照明の舞台に一人、旅人がたたずむ。
その背に観客の数だけの故郷を負って、帰り道を探しに行く。

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