太鼓が鳴るところ―劇団KAZUMA・浪速クラブの客席から―

2015.11.14-15@浪速クラブ

夏祭りの音がする。
太鼓が鳴っている。

浪速クラブの熱気を楽しみに、土日で出かけたKAZUMA遠征。
“きーみーがいたなーつーは”…って『夏祭り』が聞こえ出した途端、場内の空気がワッと楽しげに沸いた。
舞台の幕が割れて、デッカイ太鼓が現れる。
その向こうにほっそりした白い姿。藤美一馬座長。


“君の髪の香りはじけた 浴衣姿がまぶしすぎて”

懐かしいなあ。3年前も同じ曲がかかってたなあ。
2012年8月の東京・篠原演芸場。あの時の高揚の中に、篠原の畳の上に、戻ったような気がした。

「一馬さんが大阪に来るたび観とるんよ。旗揚げしてずっとだから、もう10…何年になるかなあ」
浪速クラブでお隣になったご婦人は、そう語ってくれた。隣を見れば、肩を揺らして手拍子を送っている。
きっと彼女の記憶の中には、私よりずっとたくさんの『夏祭り』が通り過ぎているのだろう。
旗揚げからの年月の中には、良い時期も、そうでない時期もあったのだろう。

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全身で跳ねるように、太鼓を打つ一馬座長。太鼓の周りで、実に楽しそうに踊る座員さんたち。
この光景を見ていると、自然と口元が緩んでしまう。
昔、“なんでこんなに楽しいのかな?”なんて記事も書いたけど、その答えはいまだ見つからない。

関東ファンとして、今年6月の三吉演芸場公演は嬉しかった。何より、芝居を愛する友人たちに劇団KAZUMAを知ってもらえたことが。
一緒に観に行った友人の、
「KAZUMAのお芝居好きだったなー、私」
という言葉を聞き、どこらへんを好きになってくれたの?と食い気味(笑)に聞くと。
「なんかさー、すごくひそやかじゃない?」

ひそやか…
その言葉を胸の中で転がしながら、この浪速クラブ遠征で観た芝居を思い出す。いくつかの光景が、印象深く浮き上がってくる。

11/14(土)の『男の情炎』では。
一馬座長が、釣りの場面で作り物の魚をつまんだ後、手拭いを取り出して“濡れた手”を拭っていたこと。
将さんが、「おめえ、旅人か」とセリフを言う前に、相手の旅のわらじを履いた足を確認していたこと。
竜也さんが、飄々とした旅人の役ながら、「お嬢さんが好きです」と告白する直前だけ口元を少し震わせていたこと。

11/15(日)の『沖のカモメ』では。
佑馬さんが、人を刺してしまったノミを“硬直した手”から引き剥がすとき、イテテテ…と呟いていたこと。
凜笑さんが、「松のお兄ちゃん、どうしたの?」と舌たらずな口調で言い、ああ子どもの設定なんだと理解できたこと。
大介さんが、子どもをさらった男を追って家を飛び出すとき、家の中に一人残る妹を慮って、一瞬だけ「お美代ちゃん…」と振り返ること。

一つ一つは、目立つ仕掛けではないかもしれない。
派手さ奇抜さは、ないかもしれない。
でも――しゅるしゅると糸をほどくように、胸に落ちてくる物語の確かさ。
舞台の端々まで満ちる、息づかいや、目線や、足踏み一つが編んでいくお話の濃さ。

たしかに、ひそやかな。
たしかに、ひめやかな。

その劇団の色を作っているのは、やっぱり一馬座長なんだろう。
「お芝居は“自分の気持ち”ですよね。自分の感情をどうお客さんに出していくか」
先日の【SPICE】インタビューでの発言。それじゃ、相手から予想外のセリフが来ても、切り返しができるようにならないといけないんですね、と感心する私に。
「うちのメンバーはそういうのはうまいんじゃないかなぁと思います。まあ(役者経験が)長いんで、みんな」
さらりと仰った。

将さん・竜也さん・大介さんには、時々舞台を託して。
凜笑さん・KEITAさん・晃太さんを育てつつ。
涼さん・佑馬さん・真の助さんとは、長年の同僚みたいに笑う。
“長いんで、みんな”
藤美一馬座長の培った、今の劇団KAZUMAの光景。

ドンドンっ!とひときわ大きく打ち鳴らして。
ずいっと客席に突きつけられる撥。
「一馬―!」の歓声。

“そーらーにきえてーった打ち上げはーなーびー”…
夏祭りは続いている。
もうずっと、太鼓は鳴っている。
旗揚げから13年。

「一馬さんは若い時もきれいやったけど、立ち役、今の方がカッコええわ」
お隣さんがウキウキした口調で言った。
長い祭り囃子は、これからがいいところ。
これからが聴きどころ。

浪速クラブでの一馬座長はまさに全身全霊の大熱演。
若手の誰よりも高くジャンプしていた。

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いつだって、お楽しみはこれからだ。

劇団KAZUMAの浪速クラブ公演、残り10日余り!

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