劇団KAZUMAお芝居「兄弟仁義 男の詩」

2015.9.20 昼の部@東海健康センター「平針座」

病みつくような禍禍しさの大島(千咲大介座長)。
ひたむきで、誠実な芯を持つ直次郎(柚姫将座長)。
胸のうちに火が散るような辰二(冴刃竜也座長)。
お三方それぞれの今の持ち味が、骨太な物語の中を走っていった。

2年前に篠原演芸場で震えたノワールのような芝居と、東海健康センターで再会できるとは!
しかも、2年前にメインだった一馬座長・美影愛さんはどちらもいなくて。
全員33歳の若い座長さん3人で観るこのお芝居は、まったくフレッシュな力に満ちていた。

前日の口上で将さんが「とても男らしいお芝居です」と紹介していた通り。
男!って感じの陰影が全編に張りつめている。
軸は、田之重(字は不明…)一家と大島一家の抗争だ。
田之重一家の親分(龍美佑馬さん)が、旅に出ていた大島の手の者(藤美真の助さん)に闇討ちされる。
二代目を継ぐことになったのは、竜也さん演じる辰二。
将さん演じる直次郎は辰二の叔父で、後見人のような存在だ。

間違いなく大島が親分を殺させたんだろうと思ってはいても、証拠はない。
なので直次郎がわざわざ大島一家を訪れて、「辰二が二代目を継ぐことになりましたので」と挨拶するシーンがある。
部屋の右側では、大島=大介さんがつまらなそうに話を聞いている。
なーんの温情もない、冷めた目が実に“色悪”って感じで良い!
左側では直次郎=将さんが、大島をじっと見据えながら。
「どうぞ、二代目を宜しくお願いいたします」
と、丁寧に頭を下げる。

大島と、直次郎。
どちらも男として大きな器を持ちながら、片や、ためらいなく悪の道を進む。
片や、忠義の道を静かに歩む。
お芝居の核になるのは二人の関係性であり対比なんだなと、思わせるシーンだ。

千咲大介座長(2015/9/20舞踊ショーより)


柚姫将座長(2015/9/20舞踊ショーより)


けど、直次郎には大島に対抗してバリバリ闘っていく…という気概は見えない。
むしろ、将さんの風情には、人が闘いから降りるときの諦念が漂う。
病持ちだからだ。
「もう俺の体は永いことねえようなんでな」
ある日、直次郎は辰二に打ち明ける。
ふと侘びしくつぶやく。
「人の体とはいえ、こんなに脆いとはおかしなもんだな…」
こういうセリフ一つにも寂しい色が出る。はー耳が幸せ…。

いま一人、田之重一家には政吉(KEITAさん)という子分がいるのだけど。
政吉は、大島の子分たちに散々なぶられた挙句、死んでしまう。
殴られ蹴られ、刺されても自分は手を出さなかった。
“決して喧嘩はするな”と言い遺した親分に従って。
そして親分の言い付けを守れ、という辰二との約束を守って。
「俺との約束なんか守らなくても良かったのに、バカな俺のせいで!」
辰二の悲痛な叫びが胸を打つ。
竜也さんの辰二は、感情のままに生きている感じがとっても素敵だった。
政吉を抱く目に、怒りの炎がパッと散るのだ。

冴刃竜也座長(2015/9/20舞踊ショーより)
CIMG1530.jpg

が、ここをさらに荒らしに来る大島一家。
「お前の所の若いの、うちの若いもんにケガをさせたんでな、出せ」
「政吉だったら、たった今息を引き取りました」
怒りをこらえて言う辰二に、大島は平然と嗤う。
「ああ、それでいいわ。出せよ。亡骸を山にやって、獣の餌にしようか。それとも海にやって魚の餌にしようか…」

…このブログをいつも見てくださっている方にも、大介さんファンがいらっしゃいます。
再演があれば、僭越ながら心からオススメいたします。
凍りつくようなことを平然と言う、残忍なカッコよさに痺れます。
結局一対一の勝負で辰二を倒し、その体を踏みつけて、大島の捨てゼリフ。
「――二代目襲名、おめでとうさん」
ひい、怖い!酷い!だがカッコいい…!

そして、最後はやはり物語の核たる、直次郎・大島の対決になる。
二人が対峙する、たった2秒くらいの場面。
それを目にしたとき、今回名古屋まで足を運んだ甲斐があったと思った。

舞台右の大島は、刀を右手に持ち、左手の甲を噛んで不機嫌そうにペッと唾を吐く。
舞台左の直次郎は、刀を右手にまっすぐ構えて、じっと大島を見据えている。
舞台右では、大介さんの伏せた目線に、悪の色気が黒く滴る。
舞台左では、毅然とした将さんの姿勢に、白い刀身が映える。

黒と白。
悪と誠。
物語全体が持っているコントラストが一瞬、ホントに一瞬なんだけども、舞台の左右にくっきりと浮き出る。
この一枚の絵を観たときの、私の鳥肌具合をお察しいただきたい…!
ああ、芝居だ、芝居だ…!

そして直次郎が勝った…ものの。
瀕死の辰二を抱き起こす直次郎の表情は険しいまま。
悪い奴を倒して仲間を助けて、晴れまがしく笑顔、拍手、幕!みたいなラストでもいいところを。
この日のラストの演出はそうじゃなかった。

「これから先は――」
一瞬うつむく直次郎。
将さんの表情が醸すのは、不安。
生きてるとも死んでるともつかない辰二の顔を食い入るように見つめて、絞り出す一言。
「俺と一緒に帰ぇろうな…!」

考えてみれば、このエンドは全然晴れまがしい状況じゃないのだ。
辰二の生死は不明だし(そこはお客さんそれぞれの想像次第とのこと)。
代わりに直次郎が継ぐにしても、病で永くないのだし。
もう親分も政吉も死んで、一家の先行きはかなり暗いのだ。
先行きのない道を、それでも歩んで行かなければならない…。
ざわつく悲哀を引きずって、幕は閉じていった。

この芝居のために、前日のお稽古は本当に大変だったようだ。
何百本の芝居を観ても。
何十回遠征しても。
結局根本にあるのは一番始まりの喜びなんだなぁと、幕間にお茶を啜りながら噛みしめていた。
劇団KAZUMAの良いお芝居を観る、喜び。

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