春告げる声―劇団花吹雪・桜春之丞座長―

写真・桜春之丞座長(1/13舞踊ショーより)


あの、声!

春之丞座長について一番印象深いことといったら、
とんでもなく通りの良い、そして変幻自在の声である。

もちろん花のかんばせも目を奪うけれど。
舞台でのあの圧倒的な存在感は、声によるところが大きいのじゃないかなぁ、なんて思ってみたり。

「なあ兄さん、こんな話もある!」

声量がそもそも大きい上に、音に少しも濁りがない。
だから客席の奥のほうに居ても、春之丞さんの声はすとーん!と耳に届く。
見得でも切ろうものなら、どーん!と客席一体を飲み込んで響く。

そして、不思議なことに。
役によって声の調子がくるくる変わるのだ。
あるときは温かく、聴いてるだけで心がほんわりするような。
けれどあるときは切れるように冷たく、心に突き刺すような。

「馬の足玉三郎」で生真面目な弟役として、兄役の京之介さんに真摯に呼びかけていた、
「兄さん、もう行くのかい」

「昭和枯れすすき」で本気で震えが来た悪役の冷徹な一言、
「なかなか骨のあるやっちゃ」

最初に観た「兄の真心」では、心清らかな医者のセリフ、
「私は本心から直江さんと一緒になりたいのです」

「道中夢枕」で通りかかった男女を幽霊だと勘違いしたときの恐怖に裏返った、
「出たぁ~~~~~っ!!」

思い出すだけで次々引き出しが開く。
玉手箱のように、色んな声音がぽこぽこと。

とはいえ私、まだ6本しか花吹雪のお芝居観ていないので。
まだまだ箱の中身は増える予感。

さて、口上挨拶のときとか素のお声を聴くと、すっごくカラっとした気持ちの良いお声だったりする。
「僕たちも日々努力してますから、ここはお客様にも、ひとつ努力をしていただいて!もっとたくさん通っていただきたいですね!」
なんて言って座をどっと沸かせる。
春之丞さんが喋っている間は、なんとなしに場が明るく照らされるような。

そう、あの力強い声は否応なしに明るさを連れてくる。
厳寒だというのに、眩しい陽射しがぐいぐいと劇場に引っ張り込まれる。

そのパワーに、気づけば口をほけっと開けて聴き入っている自分がいる。
「役者としては、一人でも多くのお客様に笑顔になっていただきたいですね!」
口上の最後に艶然とした微笑みまで付けられれば、ふぉお。うわぁ。
ここだけ、春。

豪奢な花吹雪の先頭に吹く、大きな大きな春風。
風の音に誘われて、またも休日の行き先は夢桟敷になるのだろうなぁ。
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コメント

春ノ丞冷たい

東京から関西まで観に行ったので、《東京から観に来ました》と言ったら《あっそう》で終わってしまいました。京之介さんは《有難うございました》と言ってくれました。
この差は何でしょう。

Re: 春ノ丞冷たい

> ユミリン様
いらっしゃいませ。
残念な思いをされたのですね…
ごめんなさい、私は舞台姿の印象だけ書いていて、役者さんの人柄は知らないので何も言えないのです。

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