劇団花吹雪お芝居「道中夢枕」

2013.1.13昼の部@浅草木馬館

道中夢枕、ってなんて良いお外題だろう!
題をもって夢オチを予告していいのだろうか…とか最初思ったけど(笑)

夢の中は心の中。
誰にも触らせない秘密の中。
物語が進むにつれ、照明を落としたままの薄暗い舞台で展開されるのは、
主人公・勘太郎(桜春之丞座長)が心の奥に隠し持った物語。

写真・桜春之丞座長(1/13舞踊ショーより)


もう春之丞さんが舞台に現れると、何かすごいものが観れるんだろうなーと毎回期待している自分がいる。
そして幕が閉じると、「またすごいものを観てしまった…」と毎回息をつく自分がいる。

そんな春之丞座長演じる勘太郎は、旅の三味線弾き。
立ち寄った町に国定忠治が入り込んだらしく、町の空気は戦々恐々。
勘太郎は忠治の人相書きの立て札を見て、
「お吉、六三郎、お前たちだけは絶対俺が守ってやるから…」
と言うんだけども。
あれ?
視線の先には…誰もいませんよ?

道中、勘太郎は荒れ寺で一休み。
寺の住職(桜愛之介さん)によれば、かつてこの寺で心中した若い男女がいたらしい。
手に手をとって逃げてきた二人、一晩の宿を頼み、翌朝寺の二階で首をくくっていたそうな。

――この心中譚が夢枕の伏線。
舞台の上、むくむくと勘太郎の夢が入り口を広げる。

ふと住職が、勘太郎の荷に入っていた女物の着物に触ろうとした瞬間。
酔っていた勘太郎がいきなり大声真顔、跳ね起きるように、

「触らねえでおくんなせえな!」

いや、客席でびっくりしました。
春之丞さんの通りまくる声が、急に真剣なトーンで声量最大!
勘太郎は着物を抱きかかえて、
「俺の宝なんですから…」
と、再び小出しにされる秘密。

酔いにまかせて寝入ってしまった勘太郎は、誰かに踏みつけられて起きる。
それが、説教芝居の人形遣い・又之丞(桜京之介座長)と、おさい(小春かおりさん)だった。
どうやら二人は誰かから逃げているらしい。
まだ酔ってる勘太郎、若い二人にさんざ絡む。

「当ててみせようか、あんたたちのいきさつ」
「女のほうが旦那と一緒に、こいつの芝居を観に行って!そんで人形の後ろのこいつが目に入るだろ?!」
「段々女一人で行くようになるだろ。一人で行きゃあ、周囲のお客さんがあの役者さんはどうだこうだと教えるようになるだろ?」

あれ、なんか話が脱線してきた。

「もっとあの役者さんとじっくり話したい!そしたらそういう時があるだろ!そう!送り出しだよ!」
どかーん!と笑いどころもかっさらって行く(笑)。

まぁそんないきさつで恋に落ち、おさいの旦那から逃げてきたらしい。
おや、この二人もまた、手に手を取って逃げる若い男女だ。
そう、先ほどの幽霊譚をなぞるように。

夢はまだ奥へ進む。
二人が立ち去れば、勘太郎は再び地面にごろん。
女物の着物を抱きしめて転がって、恋しそうに呼ぶ。
「お吉~……」
夢はまだ暗い底へ。

そこに現れるのが国定忠治(桜京誉さん)とその一派。
忠治に捕まえられる又之丞とおさい。
実はおさいは忠治の妻だったのだ。
駆け落ちした二人に、当然ながら大ヤクザは怒り心頭。

「これじゃ俺の男が立たねえ…」
男のほうは斬る、ときっぱり。

が、その緊迫したシーンに割って入るのが勘太郎。
「ここで女だけ生かすんですかい。女に良いように誤魔化されますよ」
「女は男を騙す生き物なんだ!」
「斬るんなら二人とも斬る、見逃すなら二人とも見逃す!どっちかにしておくんな!」

そしてついに叫ばれる勘太郎の秘密。

「俺は、女房に逃げられた!」

お吉、繰り返されるその名前は逃げた女房。
六三郎、冒頭で口にしたその名前はお吉と一緒になった弟分。

お吉と六三郎を追って、勘太郎は旅をしてきた。
だから勘太郎の夢枕の物語は、「手に手をとって逃げる男女」の形を繰り返す。
夢はそこで行き止まる。
心の奥へ行き止まる。

でも夢の終わり、自らの心の最果てで。
「勘太郎さん……あなたの三味線を、もっと聴いていたかった」
勘太郎は、ずっと会いたかったお吉の声を聞く。
「どうか、もう私を追わないで」
未練を断ち切るための言葉を聞く。

やがて勘太郎が目覚めれば、元の荒れ寺の前。
又之丞もおさいも忠治も、全ては夢の中の出来事。
「夢か…」
その瞬間の、春之丞座長の表情といったら!
泣き笑いのような、噛みしめるような。

ずっと薄暗かった舞台に、陽が昇るように明るい照明がついて。
暗い夢から覚めて、明るい方へ。
戻って来た住職に対し、勘太郎の笑顔は晴れやか。

「俺は、江戸へ帰ります。江戸へ帰って、芸の道に精進します」
「和尚さんには世話になったから…せめて、これをもらってくだせえ」

宝だったはずの女物の着物をあげて。
お吉の呪縛から解き放たれ、旅立つ。

幕が閉じ切るときまで、力いっぱい、拍手した。
勘太郎の秘密を求めて、夢枕の奥へ、心の奥へ。
観客がもぐりこんで行くような構造のお芝居に、長時間すっかり浸っていた。

そこに春之丞座長の大熱演が加われば、もう、ね。
やっぱり興奮気味に呟いてしまう、
「すごいものを観てしまった…」
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