桐龍座恋川劇団お芝居「生きた幽霊」

2015.4.25 昼の部@篠原演芸場

しょだーい!
待ってましたっ!(心のハンチョウ)

『生きた幽霊』は初代・恋川純太夫元、大活躍のお芝居。
笑い皺をいっぱいに集めて、くしゃーっとなる丸い顔。
あまりにも滑らかなセリフ回しに、いっそクラクラきました。

初代・恋川純太夫元 当日個人舞踊『二度惚れ酒』より


恋川劇団では、初めて観たときから初代さんが最愛です。
初・恋川観劇の、2012年10月。
お芝居は『祭りの夜』だった。
初代演じる老いた父親が、江戸に嫁いだ娘を訪ねてくる話。
他人に娘が「あの奥さんは立派だねえ、きっと奥さんの親が良いんだ!」と褒められるたんび。
「はーい、はーい、私!その親は私!」
両手をぶんぶん振り回して、喜びを表現する初代の可愛らしさに撃ち抜かれてしまってから…。

こんな言い方は、生意気極まりないかも。
が、初代さんは大変に可愛い。
そして、動作・セリフの一つ一つがおかしい。
その親しみの下に編み込まれた、精緻な芸のひとすじが、『生きた幽霊』では見えた。

三浦屋の若旦那(二代目・恋川純座長)は、芸者の清香(鈴川桃子さん)に夢中。
今日も楽しくお座敷で遊んでいると、突然、三浦屋の一番番頭 (初代さん)が現れる。
「若旦那に大事なお話がありますのや。どうか人払いを」

初代と純さんが密談する場面の掛け合いがすごい。
両者ともに、まあるい体を寄せ合って、ポンポン言葉をぶつけあう。
「若旦那、今日の私は番頭ではなく、旦那様の名代として参りました。ですからお父はんの話を聞くつもりでお聞きください」
「お父はんがホンマのお父はんか…」(←まずこれに笑わされた)
「そうです、三浦屋にとっての大事な話。すなわち若旦那、あなたにとっての大事な話、よう聞きなはれ」

いかめしい顔の番頭は、テンポよく説明を始める。
「芸者というのは恐いもの。いくら口では好きと言うても、口と心の中は別物や」
「清香はそんな女やない!」
「いえいえ、そもそも“なんとか者”と付くのにロクなものはおりまへん。まず、“役者”」
(このセリフは初代の大真面目な顔がポイント(笑))

「本当にその清香という芸者が若旦那のことを好きかどうか、確かめてみるんです。一つ芝居をしましょ」
番頭の提案は、若旦那が清香に“三浦屋が倒産した”と嘘をつくというもの。
自分には一人で食べていく力もない、死ぬしかない、と清香の前で泣いて見せろと言う。

「そこで清香が、“うちも若旦那と一緒に死にます”と言ってきても、一度目は断るんや。断られても、なおかつ“うちは若旦那と死にたいんです”と言うてきたら、その心は本物ですわ。ええですか、二度目で合格です」
――ええですか、若旦那。
ひたすらに滑らかな、剣さばきならぬ舌さばき。
時々膝を叩き、畳をトントン叩きながら。
初代の体から、膨大なセリフがすべて息吹いて出てくる。

初代がポン!と膝を打って、純さんに向き直る。
「芝居がうまくいけば清香の本心がわかる、すぐに祝言や。若旦那、あんたの人生、一世一代の大芝居でっせ!」

年輪に縫いこまれた、芝居、芝居、芝居。
芸が服を着て、目の前に座っているようだった。

番頭は若旦那に、舶来物の毒薬(実はただの頭痛薬)を渡す。
薬について説明する場面は、客席全体が抱腹絶倒だったと思う。
「薬の名前を決めときましょ」
にまーっと初代独特の笑みが浮かび。
客席に向けて、どんぶらこと櫂を動かすような動作をする。
「舟を漕いで~♪」
「七つの海を越えてきた♪」
「あちらの国から♪こちらへちょっと来た♪」
「名前は長いが効き目は速い♪」
意味不明な歌(笑)
初代が実に楽しそうに歌いあげるものだから、もう笑えてきて仕方がない。

くしゃくしゃと笑み崩れる、笑い皺の中に。
ひらひら透けるのは芸の重層。
層の一枚一枚が、今も鋭く切れ上がっている。
初代が恋川劇団を旗揚げされてから、30年近くになるらしい。
ひたすら芝居して、芝居して、芝居してきた。

若い頃、もっとイキイキと体が動いたであろう頃。
初代の心身に熱量がほとばしっていた頃を、想像してみる。
きっと今の純さんみたいな?

でも、今も。
初代が舞台に姿を現すと、お客さんがワッと沸くのを肌で感じる。
贔屓目抜きで、何かこう、嬉しがっているような空気に包まれるのだ。
何十年越しの客席にたっぷり愛されて、今日も笑う。
今日も芝居。
今日も舞台。

『生きた幽霊』をはじめ、『まぬけな泥棒』とか『お家はんと坊っち』とか。
“サブタイトル=初代の大暴走”みたいな恋川劇団の芝居が大好きです。

ひょっこりと登場して。
息子を見て、若い座員さんたちを見て、客席を見る。
そして、顔全部で、体全部で笑う。
“舞台に在る”ということが何十年経っても確かに歓びであるのかと、胸を衝かれる。

しょだーい!
待ってました!

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