恋川純座長 個人舞踊「翼をください」(座長襲名記念公演)

2015.4.20 夜の部@篠原演芸場

「好きな役者さんはいっぱいいるけど、本命は恋川純さん!」
知人でも、客席でたまたま話した人でも、このパターンの多いこと。
理由を尋ねると、「とにかく一生懸命にやってる」「上手くなろうっていう向上心がすごい」などなど。

関東公演のたびに、大量の新作芝居を用意してこられているそう。
私もその熱意に引っ張られて、関東に来てくれると必ず何度かは行っている。
これまで熱血青年のイメージばかりがあったけれど。
最近ふと感じたのは、むしろ彼の冷静さ。

24歳とは信じがたい、どっしりとした落ちつきのせいなのか?
(友人に聞いたところ、芝居で「俺は42歳じゃなくて24歳だ!」とウケを取っていたらしい。貫禄だけは42歳でもおかしくないと思う)
または、「あーっはっはー!」という、どこの横綱だと言わんばかりの太い笑い方のせいなのか?
(4月の篠原公演の口上で、「兄貴に振り回されっぱなしの人生ですよ、あっはっはっはー!」というのを聞いたときは、この人すごいや…と心底思った)

舞踊もそう思って観れば、クールな表情が閃く。
歌の中の人物に入りこみ、時には涙しながらも、決して演じている人物の感情に溺れない。
だから、弱々しいウェットやセンチメンタルからはかけ離れている。
「わい、今日から命がけや~!」(『王将一代・小春しぐれ(浪曲歌謡編)』)
と、顔をくしゃくしゃにして叫ぶ坂田三吉の一枚向こうで、自分自身をしっかり見つめていそうだ。

純さんの舞踊で、私が一番感動したのは2年前に観た『翼をください』。
―いま私の願いごとが かなうならば 翼がほしい―
若き二代目は腕を大きく広げ、ひたすら上を見つめていた。
当時のブログではこんな風に振り返っている。
“もっと前へ。もっと上へ。”
“芸の高みを見つめて。
強い強い眼力が、空に昇って行く。”
上昇しようとする純さんの志と、曲がぴったり重なって、ただ胸打たれた。

2015/4/20(月)、座長襲名記念公演@篠原演芸場。
『翼をください』との再会だった。

恋川純座長(4/20個人舞踊『翼をください』)


お客さんから、舞台に花束が贈られた。
純さんは花束を抱え、赤い扇子を抱え。
じっと満員の客席を眺める。
祝福を抱え、継承を抱え。
座長は、行くべき先に目をこらす。

体を斜めに傾け、踏ん張った片足だけで、回転し始める。
ぜんまい仕掛けの人形のように、純さんの斜めになった全身がおもむろに一回転すると、大きな拍手が沸いた。

―この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ―
歌詞に当てはめて、なかば睨むように上を見つめる。
芸の力、若き力、その目の力。
舞踊は客席の期待に呼応して、隙なく一つの像をつくる。
“ぐんぐん伸びていく二代目・恋川純”を、見事に叶える。

この舞踊を襲名記念公演に持ってきたということは、自分のキャラをすごく冷静に見ているのだろう。
何が今の自分の強みか、知り抜いているのだろうな。

座長襲名公演のゲストは、お兄さんの恋川純弥さんだった。
純さんの襲名記念なので控えめにされたのか、個人舞踊『無縁坂』はサラッとしていた。
軽く踊っているのに、なおうっすら残る情があった。

私が好きなお父さん(初代・恋川純さん)の舞踊もあった。
『傘ん中』は全体に飄々としていたのに、初代の掲げる傘に寂しさがまつわって、やんわりと心の根っこをつかまれた。

より長い経験と、よりしめやかな技巧。
24歳の座長のすぐ隣にあるもの。

けれど父と兄から継ぎ、今、座を背負うのは彼。
これから全てをつかんでいこうとする彼。
だからこそ『翼をください』は、見事な“恋川純”像である一方で。
像を割って、一人の人間が心身から発する叫びたりえるのかと思う。

―子供のとき 夢見たこと
今も同じ 夢に見ている―


夢、というところで、純さんは自分の胸を叩いていた。
もっと上へ、もっとすごいことを。
もっと、もっと、いくらでもこれから。
ふと演出を超えて、剥き出しの踊り手の熱が現れる。
同時に、道の先の先まで見つめきっていこうとする静かな構えが透ける。



「とにかく一生懸命」「向上心がすごい」
純さんを長年観ているファンの方は、きっとそこを感じ取ってきたんだろうな。
彼は既にとんでもない巧さだけど、どんな巧みな芸よりも。
“これから”を志す力が人を惹く。

厳しく挑むように踊っていた純さんが、終盤、片足立ちしながら。
大きく口を開けて笑った。
いつもの大笑いすら聞こえてきそうだった。
あっはっは、という底抜けに力強い笑いが。

にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)