劇団花吹雪お芝居「富くじ千両箱」

2013.1.6昼の部@浅草木馬館

写真・桜京之介三代目座長(1/6舞踊ショーより)


「おせんちゃんは間違いなく俺を好いてると思うんだ」
「でもおせんちゃん、どうにも口がうまくねえっていうか素直に言えねえんだよなぁ」
「で、俺も実はおせんちゃんのこと好きなんだけど…」

でれっと眉の下がった弥太郎(桜京之介三代目座長)。
一緒に旅をしてきた「友達」の、おせん(小春あきなさん)について。
もう誰も聞いていないのにも気づかず、やや照れながら一人語り続ける…。

今回のお芝居、私的な白眉はなんと言ってもこの場面ですね。
他にも演劇的な見せ場はたっくさんあったけど。
少女漫画脳的には絶対にこの場面ですね!

ああ可愛い。
はー可愛い。
弥太郎とおせんちゃんの初々しいカップルをずっと見つめていたい!です!

あらすじはこんな感じ。
流れ者の弥太郎と、三味線弾きのおせん。
弥太郎は、
「女と一緒の旅は嫌なんだよー…」
「俺は一人で旅するほうがいいんだよ~」
とか言いつつ、なんだかんだおせんに助けられながら旅をしてきた。

たまたま弥太郎は、千両箱を背負った瀕死の老人 (桜京誉さん)に出くわす。
老人は江戸の出身だが、借金を背負い、大阪に出稼ぎに来ていた。
ところがとんだ幸運で、富くじで千両を当てた。
喜び勇んで息子の待つ江戸へ帰る道中、肩に担いだ千両を狙われ、お尋ね者の侍(春日隆さん)に斬られたのだった。
「私に代わって、江戸のせがれに、この千両を届けてくだされ」
老人の遺言により、弥太郎は千両を背負って江戸へ向かうのだった。

お芝居の本筋はこの千両を巡るいざこざ。
老人の息子(桜梁太郎さん)・借金取り(寿美英二さん)・十手持ちの与吉(桜愛之介さん)…
登場人物が多いにも関わらず、とことんスピーディーに話が進むので、最後までどうなるのかワクワクする作り。

でも、このお芝居にはもう一つ筋があって。
それが、弥太郎とおせんちゃんのほのかなロマンス。

序盤、弥太郎はおせんちゃんに対してちょっと冷たい。
鬱陶しそうに、
「また俺についてくる気かよ…」
とかぼやいていて。

でも、千両を狙ったお尋ね者の侍に、足を撃たれて大怪我を負った後。
寝ていることしかできない状況で、おせんちゃんが宿に帰ってくる。
すると弥太郎、そらもう嬉しそうに、
「おせんちゃんお帰り~」
「足が治ったら、また一緒に旅しような」

弥太郎が、その実おせんちゃん大好きなのが伝わってくるわけです。
そして冒頭で取り上げた、「おせんちゃんは絶対俺のこと好いてるし実は俺も好きなんだけど云々」の場面に繋がる。

…客席で内心悶えまくり。
好き合っているのに素直になれない、とかピュアな少女漫画の定石じゃないですか!
しかも双方が!
ピュアの二乗!

そもそも、この弥太郎というキャラクター造形のなんと楽しいこと!
元気で、やんちゃで、ちょっと向こう見ずなまでの若さに溢れている。
でもヤクザ者らしく意外とドライ。
千両箱を託した老人が、せがれの名前を途中まで言ったところで息絶えたもんだから、
「うん、多分、(息子を見つけるのは)無理だな」
と腕組みしてサラっと言うくらいにはドライ。

で、調子もいい。
愛之介さん演じる与吉が「堅気の仕事を斡旋してやる」と言うと、
「字は読めねえ」
「力仕事は嫌だな」
「週一、月曜に休みたいなー」
と笑顔でリクエストするくらいには調子いい。

でも見ず知らずの老人の遺言に従って、やたらめったら重い千両箱をひいひい言いながら担いで。
そのいざこざに巻き込まれて大怪我までしても。
決して見返りを要求したりしない、いやそんなこと思いつきすらしない。
義理人情を守る男前な心を持っているのです。

実際に若さ弾けてる京之介さんの弥太郎役は、もうぴたりと「そのもの」。
底に素の明るさが透けて、カラっと爽やか、ハマり役…
と、書こうとして気づく。

京之介さんってハマり役だと思わせること多いなぁ。
以前観た「太助と家光」の竹千代も、優しい面差しがぴったりだと思ったし。
京之介さんの芸の広さの証なのかもしれないな。

さて話を戻そう。
物語後半、おせんちゃんは弥太郎の足の怪我を治さんがため、借金をします。
その代償として、板橋を支配する政五郎親分(桜春之丞座長)の嫁になることに。
弥太郎は婚礼の儀直前に飛び込み、おせんちゃんを救います。
弥太郎とおせんちゃんは気持ちを告げ合い、政五郎親分もなんとか許してくれて、めでたしめでたし。

私は手を取り合う弥太郎とおせんちゃんを見て、唇の端が上がりっぱなし。
可愛いなぁもう(何回可愛い言うんだ)。

大衆演劇の男女の愛は、辛苦を共にした「夫婦」が多い気がするので。
(それももちろん味わい深いんだけど)
たまに初々しい若草のようなカップルに出逢うと、こちらの心まで小春日和。
小さな花が咲くような心持ちがいたします。

木馬館新春公演、一足早い春の花。
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