たつみ演劇BOXお芝居「ダイヤ色・河内十人斬り」(小泉ダイヤ座長誕生日公演)

2015.3.4 夜の部@三吉演芸場

「普通兄弟分ちゅうのは、兄貴のほうが強いもんやろ。わしらは逆やないか。お前が弱いからな!」
ずけずけと、兄貴分たる熊太郎(小泉たつみ座長)に言ってのけて。
「ま、だから強い弟分がついとるんや」
弥五郎(小泉ダイヤ座長)は、当たり前のように。
熊太郎のために命を捨てる。

小泉ダイヤ座長(当日個人舞踊「酒供養」より)

↑芝居で血まみれで「何さらすんじゃあ!!」とか言ってた方が、ショーになるとこの愛らしさ…。
31歳おめでとうございます!

小泉たつみ座長(当日個人舞踊「男酔い」より)


弟座長の誕生日公演の演目は『河内十人斬り』…意外も意外な選択だった。
品よく綺麗なたつみ演劇BOXが、恨みと血で塗り固めたようなあの話を…?

というのは、私にとっての『河内十人斬り』は、合同時代の剣劇はる駒座で観た至高の芝居だったから。
勝小虎さんの熊太郎の生々しい憤怒、津川竜さんの弥五郎の切れるような覚悟。
舞台には、飢餓にも似た寒々しい景色が広がっていた。

だけど、たつみ演劇BOXの『河内十人斬り』は。
もっと軽妙で、人物の表情も柔らかくて。
手に取って眺めまわしてもケガしなさそうな優しさがあった。

たとえば冒頭には、物語への案内役が登場する。
袴姿のダイヤさんが、村の人間関係を解説してくれるのだ。
たとえば、松永伝次郎(宝良典さん)が、子分(大蔵祥さん・小泉ライトさん・辰巳花さん)を引き連れて歩いてくると。
「はい、ちょっとストップ!」
ダイヤさんの声で、宝さん以下三人、ぴたりと時間が凍りつく。
マネキンのように動かない宝さんを扇子で指して、ダイヤさんが客席に教える。
「こいつ、悪そうな顔してるやろ。松永伝次郎っちゅうて、実際悪いやつですわ」
また、おぬい(葉山京香さん)が待ち合わせに立っているところを指して、
「今の言葉で言えばデート、昔の言葉で言えば逢引きっちゅうことやな」
待ち人である寅次郎(愛飢男さん)が来た途端、ダイヤさんの突っ込みが冴える。
「って、色男やないやん!愛飢男やん!こういう相手は色男って決まっとるのに、あいつ待っとったんかいな!誰や、こんな配役にしたの(台本をめくる)…辰巳小龍かいな!」
この楽しい案内役のおかげで、物語にスッと入っていきやすかった。

それから、考えてみれば主役の弥五郎の登場場面は遅いので。
案内役を用意したのは、ダイヤさんが出てくるのはまだかまだかと、誕生日に集まったファンをやきもきさせないためかとも思ったり。

序盤はひたすら、たつみさんの熊太郎が、屈辱を味わうシーンだ。
「甲斐性なし」「金も家に入れない」「この博打狂い」…
熊太郎を囲んで足蹴にするのは、義母のおかく(辰巳小龍さん)、女房のおぬい、おぬいの間男である寅次郎、松永一家。
散々罵られ、貸した金の証文も破られて、挙句の果てに血まみれになるまで蹴られる。

熊太郎が痛みと悔しさで伏しているところに、流れてくる浪曲。
―熊太郎ためには 弟分で 鬼と言われた 谷弥五郎―
舞台の奥に座っている背中。
満を持して、ダイヤさん=弥五郎が煙管をくわえて振り返る。

「弥五、弥五」
と必死に呼びかける瀕死の熊太郎に、最初は「誰や、なんでわしの名前知っとるんじゃ」なんて言っていたくせに。
熊太郎だと気付いた途端、
「兄貴!兄貴やないか!わしや、弥五郎や!兄貴が気づかんでもわしはわかったで!」
と、マイペース。

ダイヤさんの弥五郎は、あんまり熊太郎を兄として立てたり、敬ったりはしないみたいだ。
ボロボロの熊太郎に、「情けないなぁ~」と遠慮なく言い放つし。
数日遊んで女でも買って来い、と熊太郎に言われて外出したときは、
「かわいそうに、弟分のわしにまで気ぃつかって」
と同情した顔で熊太郎の家の方を見やる。

でも、その情けない兄貴のために、もう腹をくくっているのだ。
自分の命を捨てようと、とっくに決めているのだ。
“借りは必ず二人で返す!”
博打場で思いがけず捕まってしまった弥五郎は、獄中から熊太郎に便りを出す。
「お前には何の関係もないのに、一緒に恨みを果たしてくれるんか…」
一人残された熊太郎は、弥五郎の便りを握りしめ、顔をくしゃくしゃにして泣く。
(たつみさんが綺麗な顔をあんなに崩して泣く芝居は初めて観た)

始終、もろに喜怒哀楽を出すのは熊太郎のほうで、弥五郎の明朗さは肝が据わりきっている感じ。
でも、ラストシーンは違った。

警官に囲まれた兄弟は死を決意する。
先に熊太郎が刀で絶命した後。
「一人では行かせんで…!」
兄の亡骸を自分の体とひとつにするように抱いて、目を開いたまま弥五郎は死ぬ。
ダイヤさんの宙をにらむ目に、悔しさ、無念さが渦巻く。
劇中、一貫して、熊太郎のために走り抜いてきた弥五郎が、その兄貴を喪ったとき。
内に秘めた兄思いが、とめどなく溢れ出してきた。

あと個人的には、『河内十人斬り』で一番好きなセリフ、「われ、われ、九州も知らんのかい」がたっぷり演じられていたので幸せ。
弥五郎と、妹のおやな(辰巳満月さん)の別れの場面。
まさか死にに行くとは言えず、九州へ行くと嘘をつく弥五郎に。
「九州ってどこなん、東京の向こうか?」
とあどけなく問うおやな。
妹の無知さ幼さに声を詰まらせて、「われや――」と絞り出した後。
ダイヤさんはああ、と言いたげに横を向き、間を置いて、再度おやなの顔を見て、
「九州も――知らんのかい…!」
はー…(感嘆のため息)。

見やすく、とっつきやすく、理解しやすく。
古いものに忠実で、かつ誰にもちゃんとわかる(それがすごい)。
“綺麗に品よく”をモットーにするこの劇団さんが、作っていこうとしている舞台の形を改めて感じた。

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